子どもの食物アレルギーは、ある日突然始まる
null今回は、実際に食物アレルギーの子どもを持つ親ならではの視点で、いざという時に知っておくと役立つ情報について解説してもらいました。まずは、ご自身の体験を話してくれた正親さん。子どもの食物アレルギーは、ある日突然始まったのです。
「私には2人子どもがおり、上の子は牛乳と卵、下の子は卵の食物アレルギーがありました。上の子は生後3カ月頃まで母乳と育児用ミルク(以下、ミルク)の混合で育ったので、産まれた時からミルクは飲んでいたんです。途中で母乳が軌道にのってきたので、母乳メインで育てていた時期が1〜2カ月ありました。
生後6カ月から保育園に入園する予定だったので、ミルクにまた慣れておいたほうがいいなと思い、久しぶりにミルクを飲ませたところ、ひと口でバーッと蕁麻疹が出て、全身が真っ赤になってしまい……。幸いなことに呼吸に関わるほど症状は出なかったのですが、夜にミルクを飲ませてしまったので、“小児科はもうやっていないし、どうしよう!? これは救急車を呼んだ方がいいの!?”と、私はパニック状態に。それが生後5カ月の頃でした。
翌月から保育園は始まるのに、もうどうしたらいいのだろう……と不安でいっぱいでした。搾乳も考えましたが、医師からアレルギー用のミルクがあることを聞いていろいろ試したり。でも、なかなか飲んでくれなくて……保育園の先生と試行錯誤の日々でしたね」(以下「」内、正親さん)
生後から3カ月ほどはミルクを飲めていたので油断していたという正親さん。大丈夫だと思っていた矢先に起きてしまった夜のアレルギー反応。さぞ、怖かったことと思います。それからは医師と二人三脚の日々が続きました。
「乳製品は完全除去したうえで、病院で食べる試験を受けながら、医師の指導のもと少しずつ様子を見ていきました。2才頃から段々と食べられる量が分かってきて、牛乳が飲めるようになって、卵も食べられるようになって、上の子が良くなってきた頃に、今度は下の子の卵アレルギーが発覚!
卵の白身で蕁麻疹が出てしまったんです。アナフィラキシーショックまでは起こしませんでしたが、それでも微量の白身で症状が出てしまったので、食べられる量は少しだけ。上の子の時と同様に、最初は完全除去したうえで、病院で食べる試験を受けながら、医師の指導のもと食べられる量を増やしていきました」
食物アレルギーの反応は個人差があり、どれくらいの量を食べるとどのような反応が出るのかは、実際に食べてみないと分かりません。そのため、一概に判断できないのが難しいところ。昔はアレルギー反応が出た食材は完全除去する方針でしたが、最近は病院で「食べてみる」試験を受け、食べられる量を医師が判断して、少しずつ食べられる範囲を広げていくのが主流になっているとのこと。
筆者の娘もある日、卵を食べてアレルギー反応が出たのですが、1才で全卵はクリアしていたのになぜ?と思ったら、卵の加熱が甘いと蕁麻疹が出てしまうタイプでした。よく焼いた薄焼き卵ならOKなのに、ゆるくまとめたスクランブルエッグはNGと、加熱時間や調理法の違いで反応していたのです。うーん、本当に個人差がありますよね。
食物アレルギーの子を持つ親が教える「知っておくべき5カ条」
null2児の子育てを通じて、正親さんが感じたのは、食物アレルギーは突然やってくるということ。いざという時に慌てず行動するためにも、事前に知っておくべきポイントを5つ教えてもらいました。
1:気になった時点で病院に行くべし!
「下の子が卵黄を食べ進めていた時、肌が少しカサカサしているかなと感じたのですが、アレルギーというほど反応は出ていなかったんですね。冬だし乾燥しているのかもと思って、次の日も食べさせたら、バーッと蕁麻疹が出てしまい、気になった時点で病院に行けば良かったと反省しました。
子どもの病気って、これくらいで病院に行ってもいいのかなって、親は悩みがちですよね。“口元がちょっと赤いけど、これくらいだったらよくあるかぶれかも? 大袈裟かしら?”なんて思っていると、突然ワーッと出ちゃったり。なので、本当に自己判断はしないほうがいい。病院に連れて行く決断は自分しかできないので、これくらいで行っていいのかなと思わずに、気になったら躊躇せず病院へ行きましょう」
2:症状が出た時に写真を撮っておく
「子どもの食物アレルギー反応って、突然バーッと出たのに、少し時間を置くとスッと引いてしまうことも多く、病院に着いた頃には治って見えることもあります。なので、反応が出た時に、写真を撮っておくと医師に症状を伝えやすい。自分もパニックに陥りやすいので、どこか頭の片隅に“写真を撮っておかなきゃ”と覚えておいていただけたら!」
3:何でも相談できるかかりつけ医を見つけよう
「食物アレルギーの診療は、個人差が大きいため、誰にでも当てはまる決まったやり方がなく、医師がそれぞれの患者さんの状況を踏まえて進めていくので、自分が長いおつきあいができると思える病院を見つけておくといいですね。
食物アレルギーは何度も病院に通う必要があるので、医師とコミュニケーションがとりやすいかどうかも重要です」
4:遠慮せず、医師にどんどん質問しよう
「小児科っていつも混んでいて、“忙しそうなのにこんなに聞いたら悪いかな? あれこれ相談していいのかな?”と思いがちですが、大切な子どもの命に関わることだから、遠慮なんてしちゃいけない。お医者さんには少しでも気になることがあったら何でも聞いたほうがいいので、どんどん質問しましょう。
お医者さんとお話をする中でも、“医師側も遠慮なく聞いてもらった方がいいですし、それで何かあった方が大変だから、親御さんとのコミュニケーションはしっかりとっておきたい”、というコメントがありました」
5:周りの人にもちゃんと伝えておこう
「お盆に親戚が集まった時に、“この子、卵アレルギーがあるんです”と、周りの人にしっかり伝えていました。“このお菓子食べる?”と勧められて、アレルギー食材が入ったものを子どもが食べてしまったら大変なことになるので、事前に周囲に伝えておくことは大切です。
公園で同じ保育園のお友達にばったり会った時に、何気なくその子が持っていたお菓子をもらってしまったり、そんなシチュエーションもよくあると思うので、ママ友にも伝えておくといいですね」
他にも重要なポイントはたくさんあるので、『すくすくアレルギーのーと』をぜひチェックしてみてください。特に反響が大きかったのは、「小児科受診のポイント」や「アレルギー表示の見方」の投稿だったそう。すぐに使える日常に寄り添ったテーマをもとに、専門家監修の信頼できる情報を詳しく紹介しているので、いざという時にきっと役に立つはずです!
同じ悩みを持つ親同士、SNSを通じて繋がる想い
null育児は時に孤独なもの。正親さんは、『すくすくアレルギーのーと』を、同じ悩みを持つママパパが集うプラットホームのような場所に育てていきたいと語ります。
「私の周りも含め、子育て世代の情報収集源としてのSNSの存在はとても大きく感じます。コミュニケーションをとりやすい媒体なので、コメントをいただくと、私自身もすごく励みになっているんです。
卵が意外な食品に入っているという投稿では、“実はこれにも入っていますよ”って、プロセスチーズに卵が入っている場合があることをフォロワーさんから教えてもらいました。そのように、同じ悩みを持つ人たちと気軽に情報交換できるって嬉しいですよね。
私自身、初めての育児で慣れない中、子どもの食物アレルギーが発覚した時は目の前が真っ暗になるような思いでした。これから先どうなるのか、何をすればいいのかという不安や、日常生活での不便さをずっと感じていたことが、この取り組みを始めるきっかけとなっています。
同じように子どもの食物アレルギーに悩むママパパの悩みに寄り添い、頼りにしてもらえる存在になりたいと思っています」
ご自身が経験したからこそ、正親さんの言葉は心に響きます。いざという時、『すくすくアレルギーのーと』は、心強いお守り代わりになってくれるはずです。
クラウドファンディングでアレルギー対応の幼児食を開発
nullさらに正親さんは、新たな企画に挑戦中。それはなんと、「食物アレルギー対応の幼児食」の開発です!
食物アレルギーに対応した離乳食(生後5〜18カ月頃まで)のレトルト商品は結構あるのですが、離乳食を完了した後の幼児食(離乳食完了後の食事)は、実はあまり販売されていないことに着目し、食物アレルギーが出やすい食物とされる特定原材料8品目(卵・乳・小麦・えび・かに・落花生・そば・くるみ)を除いた、2才頃から食べられる幼児食を開発中です。まず、クラウドファンディングで協力いただいたかたにお届けし、その結果次第では販売に至る可能性も。
筆者はひと足お先に味見をさせてもらったのですが、大人でも十分おいしい味付けでビックリ! 具沢山で野菜やお肉がゴロゴロ。これ1つで満腹になる、正親さんの親心が詰まった一品です。
味は子どもたちの大好きなチキンライス、とり五目ごはん、カレーごはんの3種類。年齢や食べる量に合わせて選べるように、2種類のサイズも用意しているそう。
気になるかたは、ぜひこのチャレンジに参加してみてくださいね!
【取材協力】
キリンホールディングス
キリンホールディングス株式会社が運営する、子どもの食物アレルギーに役立つ情報を配信する公式アカウント。医師や管理栄養士監修のもと、信頼できる情報を発信し、すぐに使える日々の暮らしに寄り添ったテーマが支持を得ている。
【お話を伺った人】
キリンホールディングス株式会社
ヘルスサイエンス事業本部
正親美菜子さん
免疫やアレルギー領域の医薬品を開発する研究者として勤務する傍ら、『キリンビジネスチャレンジ』で自身の企画が採用され、2021年より食物アレルギーに関する新規事業の検討を行い、2024年に『すくすくアレルギーのーと』を立ち上げた。2児のママ。
ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。