『子育てブレスト』で心にゆとりが生まれた
null4才と12才、2人の息子さんを育てる佐藤家も、12年間さまざまな困りごとに直面してきたといいます。そこから生まれたアイディアは、Twitterを中心にバズり、一冊の本にまとまるまでに。
子育てのさまざまな「困った」や「どうすればいい?」をポジティブにとらえる方法について、お二人に聞きました。
クライアントの課題を解決する、プランナーでありクリエイティブディレクターの佐藤ねじさん。そして、子どもたちを楽しませる手作りおもちゃ作家の佐藤 蕗さん。お二人の第一子が誕生したのは、2011年5月。
引越し、蕗さんの産休育休やフリーランスとしての独立、実家が遠方、夫婦二人きりの子育て、そして寝不足……。「知ってはいたし覚悟もしていたけど、いわゆる産後の変化が一気に起こりました」と蕗さんは当時を振り返ります。
いわゆる“子育ての大変さ”に直面し、「親が倒れないよういかに負担を減らすか?」「困りごとを、親も子も楽しく解決するには!?」など、日々試行錯誤する中で、『子育てブレスト』にまとめたアイディアが生まれていったそうです。
「僕たちは専門家ではないので、多くの方と同じように、試した方法の95%は失敗しています(笑)。イヤイヤ期もふつうに『うるさいっ!』ってキレていましたし。でも、たま〜に困りごとを攻略できる違う方法が見つかるんですよね。どれも変化球ばかりだけど、その一手があることで心にゆとりが生まれています」(ねじさん)
子育てに一つとして同じものはなく、正解もありません。でも、心にゆとりが生まれるかもしれないなら『子育てブレスト』を試してみたい!ここからは、その基本的な考え方とポイントを教えていただきました。
子育てでブレストすると「新しい視点」が見つかる
null子育てでブレストするメリットは、“新しい視点”が見つかって、大人も子どもも楽しく困りごとが解決する場合が多いこと。
たとえば、イヤイヤ期の小さな子どもがお風呂に入りたがらず愚図る……。大人は「お風呂に入りなさい」、子どもは「お風呂に入りたくない」という2つの選択肢の押し問答で、非常につかれますよね。
ここでブレストの出番! “新しい視点”である第3の選択肢を考え、実践することで、結果としてお風呂に入ることができます。
それは、こんなふうに。
「子どもはちょっとおかしなルールやゲームが好き。それをいかして『あと10秒でお風呂のドアが開かなくなってしまう』というゲームを発動。『おもしろい!』とハマると、子どもが率先してお風呂に入りたがるようなことが起こります。そもそも、心からお風呂に入りたくないわけではなく、何かほかの理由がある場合も多い。だから、お風呂に楽しいことを設置すれば入ってくれるんですよね。もちろん、ハマらなければだめなんですが(苦笑)」(ねじさん)
「新たな視点」を見つける5つのポイント
nullここからは“新たな視点”を見つけるために、大事にしたいポイントをご紹介します。ブレストは必ずしも複数人で行う必要はなく、一人で行ってもOK。また、お子さんを含めた家族で考えてみるのもおもしろいとのこと。お子さんの気分や性格によるところもあると思うので、いろいろ楽しみながら試してみましょう。
ポイント1:親と子ども、それぞれがハッピーな“交差点”を探す
「『子どものために尽くす』というよりも、『自分が楽しい』と思う選択肢の中で、子どもにとっても楽しいところを探す。Win-Winになるかどうかを考えると“新しい視点”が生まれやすくなります」(ねじさん)
子どもの幸せは親の幸せという考えもありますが、子どもだけがハッピーでは、ともすると親の負担になりかねません。
「育児は一日で終わらないからこそ、サスティナブルであることも大事です」(ねじさん)
ポイント2:クリア可能なゴールを設定する
達成できないゴールに向けて頑張るのではなく、まずは小さくてもクリア可能なゴールを設定するのも大事です。
「たとえば『保育園に行きたがらない』という困りごとの場合、何が障壁になって保育園に行けないのか、分解して考えます。もし、玄関から外に出られないことが障壁なら、まずは玄関から外に出ることをゴールにしてみるとよいでしょう」(ねじさん)
ポイント3:ゴールする方法はたくさんある
ゴールする方法は、一つにこだわりません。いろいろな選択肢があると知っておくだけでも、気持ちがラクになるといいます。
「イヤイヤ期はとくに、AとBで揉めてもなかなか解決しませんよね。そこに全く関係のないCやDを持ってくると、わが家はうまくいくことが多かったです。たとえば長男が、夜中にワ〜ッとパニックになったことがありました。そのとき遠くで犬が鳴いたので、僕が『あ、犬が鳴いている』と全く関係のない話をしたら、スッとご機嫌が直ったんです」(ねじさん)
ポイント4:うまくいったパターンは言語化しておく
お風呂に入る、入らないの押し問答がゲーム化で解決したこと。深夜のパニックが関係ない話でやんだことなど、うまくいったパターンは言語化しておくのも、心のゆとりにつながるそうです。
「手段はいっぱいあるほうが、困りごとが起こったときにも、何とかなる!という広い心でいられます」(ねじさん)
ポイント5:子どもをよく観察する
困りごとを、子どもが楽しいおもちゃで解決する蕗さんは「目の前の子どもを観察することも大事」とも。
「育児書には専門家によるいろいろな解決パターンが書いてありますが、目の前のわが子に当てはまらないこともあります。私自身、それにモヤモヤすることも。子どもの行動を観察しているうちに、こういうのはどうだろう?という“新しい視点”が見つかって、いろいろなアイディアが浮かびました」(蕗さん)
「こんなはずじゃなかった」と言わなくてよい選択をする
null蕗さんが子育てをするうえで指針にしているのは、ねじさんの一言です。
「私は出産前からたくさんの育児本を読んでいたので、産む前から大変なことは知っていたし、不安に思っているほうだったと思います。でも、出産前に夫が『出産したことを“こんなはずじゃなかった”と言わなくてよい選択をしていこう』と言ってくれたことが、気持ちの支えになりました」(蕗さん)
「こんなはずじゃなかった」と言わなくてよいよう自戒するのではなく、言わないような選択をしてゆく。子どもが生まれたからといって自分だけ変わる必要はなく、無理をしすぎる必要もない。蕗さんのネガティブをポジティブに転換してくれたその言葉は『子育てブレスト』のアイディアにもあふれています。
これさえ実践すれば100点!というものはないからこそ、難しくも楽しい子どもとの時間。まずは目の前の子どもとじっくり向き合って、ブレストしてみませんか?
【取材協力】
佐藤ねじさん
プランナー/クリエイティブディレクター。面白法人カヤックを独立後、2016年『ブルーパドル』を設立。WEB・アプリ・商品やお店などの企画とデザインを行う。
佐藤 蕗さん
手作りおもちゃ作家。建築設計事務所勤務を経て、第一子の出産を機にフリーランスに。著書に『ひらめいた!遊びのレシピ ふきさんのアイデアおもちゃ大百科』(偕成社)など。
『子育てブレスト その手があったか!67のなるほど育児アイデア集』
2023年8月2日発売/小学館刊/1,650円(税込)
SNSで話題! 育児の悩みの“意外な解決策”。クリエイティブディレクターの佐藤ねじ、手づくりおもちゃ作家の佐藤蕗夫妻が実践してきた子育てアイデア集。
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote