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「縁を切りたいきょうだい」。ニート、宗教、暴言、金の無心…悩む人の現実と対応策

家族との仲は友人関係とは異なり、縁を切ろうと思っても、そう簡単には離れられないもの。しかし、現実に「きょうだいと距離を置きたい」、と悩んでいる人も少なくありません。

「ふがいないきょうだい」に悩む人は多い

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近頃は一人っ子も多いですが、昭和世代にとってはきょうだいは2~3人いるという方も多いのではないでしょうか。きょうだい仲が良ければいいですが、仲良くできない状況もあるようです。

先日『ふがいないきょうだいに困ってる』を上梓した、吉田潮さんにお話を伺いました。著書の中では、

  • 実家から離れない
  • 金の無心をする
  • 暴言を吐く
  • 宗教にハマる

この4つのケースのきょうだい関係に困っている人たちのエピソードを紹介し、その解決に向けての弁護士、専門家、精神科医、カウンセラーのコメントも掲載されています。どれも大変ではありますが、吉田さんはどのケースが一番難しいと思われましたか?

「タチが悪いというか、断ち切りがたいのは“金の無心”をするきょうだいかもしれません。みなさん逡巡がありました。よそ様に迷惑をかけるくらいなら、と払ってしまう人が多かったので。縁を切ってもいいと思ったのは性加害のきょうだいです。これが最もタチが悪い。潜在数は結構多いと思います」(以下「」内、吉田潮さん)

男きょうだいの陥る落とし穴

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いろいろな人を取材する中、一番多かったケースは「ふがいない兄とそれをかばう母」だったと語る吉田さん。

「男子と女子で、接し方や教育の機会に差をつける母親がいると、出来の悪い息子はふがいなくなる。すべてを母親のせいにしてはいけないと思うのですが(その背景に子育てを母親に任せっぱなしにした父親がいるので)、“これ、前にも聞いたなぁ……”と思うことが多かったです。息子は息子でプレッシャーがあったのかもしれませんが、“男だから”“女だから”で差をつけることの罪深さは感じました」

ちなみに、今回吉田さんが取材できたのは女性ばかり。男性はなかなか口を開かないようで、そういったところも興味深いものです。

母親による息子の溺愛は、よく聞く話です。

悩ましい義理の関係

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書籍の中では実のきょうだい関係がほとんどでしたが、結婚していると夫のきょうだいなど義理の関係に悩まされることもあります。そんなときは、どう対応するのがいいのでしょうか? 義理の関係は悩ましいところがあります。

「まず“頼りがいのない”人間になることです。親戚も義理の家族も含めて、“しっかり者”とか“できるお嫁さん”“面倒見がいい人”みたいな立ち位置にならないよう、自分自身が“ふがいない人”になったほうが楽です。親戚の中でも“ああ、あの人はちょっとほら、アレだから”くらいが頼み事も無心も相談事もきません笑。いい嫁や良き妻を目指してはいけません。

が、そもそも夫の家族の問題事は夫の家族内で、妻の家族の問題事は妻の家族内で、と境界線をしっかり引いたほうがいいです。親の介護とか不動産処理とか相続とかも含めて。問題の中身にもよりますが、“そっちはそっちで解決して。こっちはこっちでなんとかするから”をきっちりハッキリ表明しておくといいかもです」

お互いの家のことは、それぞれで対処すると約束しておくのもいい。

距離を置く、踏ん切りをつける決意を

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書籍には具体例と解決策が掲載されてはいるものの、「正直、すっきりする解決策はわかりません。パターンに分類はしましたが、複合している要素もあり、それぞれの家庭の事情も異なっていて……」と語る吉田さん。それでも、解決のヒントにつながる行動を教えていただきました。

「金銭問題に関しては、余裕がある人や、経済観念がしっかりしている人がたかられてしまう傾向。貸してモヤモヤするくらいなら“今後一切出さない・貸さない”を貫いたほうが健全だと思いました。返してほしいならば、内容証明や法的手段もあります。

心の病を抱えるきょうだいには専門の医療を。素人にできることはなくて、こじらせる可能性もある。医療や公的なサポートを受けられる入口だけお手伝いすればいいと教わりました。精神保健福祉士に相談するという手もあります。

言動や性格に問題がある場合は、そう簡単に直るとは思えない。直そう・直ってほしいと思うほうが実はおこがましいのかもしれないと思うようになりました。

宗教に関しては、金銭が絡まないのであれば個人の自由かと。

なので、ふがいないきょうだいをどうにかしようと思う前に、ふがいないと思う側が“一歩引く”“距離をおく”“かかわらない”という踏ん切りをつけるのが大切かなと。意識を変えるのは、ふがいないと思っている側なのかもしれません。

本文、高千穂大学の吉原千賀教授を取材した箇所にもありますが、“きょうだいだから助け合わなきゃ”“きょうだいだから理解しあえるはず”という幻想を捨てることから始まるのかも」

“縁を切っていい”と書籍の中では書かれていますが、優しい人ほどなかなか踏ん切りがつかないこともあります。そんな人に、アドバイスをいただけませんか?

「優しいと思われたい自分の弱さを客観視することです。困ったふるまいをするきょうだいには“連絡が取れない人”“音信不通の人”になるのも手です」

意思の強さが求められそうです。


 

吉田 潮

イラストレーター、コラムニスト。1972年生まれ。B型。千葉県船橋市出身。
法政大学法学部政治学科卒業。編集プロダクションで健康雑誌、美容雑誌の編集を経て、2001年よりフリーランスに。テレビドラマ評を中心に、『週刊新潮』『東京新聞』で連載中。『週刊女性PRIME』、『プレジデントオンライン』などに不定期寄稿。
ドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』(NHK)の「読む72時間」(Twitter)、「聴く72時間」(Spotify)を担当。『週刊フジテレビ批評』(フジ)コメンテーターも務める。
著書『産まないことは「逃げ」ですか?』『くさらないイケメン図鑑』『親の介護をしないとダメですか?』など。

『ふがいないきょうだいに困ってる』

吉田潮著 光文社 1870円(税込)

団塊ジュニア世代に多い、ふがいないきょうだいに悩まされる人々の現実とその解決策の糸口を紹介。吉田さんはこの取材の末に「金を出さない。きょうだいでも親戚でも友達でも、金を貸したらろくなことがない」と強く思ったそう。

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