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大河ドラマ「どうする家康」はクセ者キャラの宝庫!どうする?誰推す?

現代的な解釈や表現が話題を呼んでいる大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。放送開始からもうすぐ4カ月が経とうとしています。独自視点のTV番組評とオリジナルイラストが人気のコラムニスト・吉田潮さんに、その見どころを教えていただきました。

クセ者キャラを通してドラマを楽しもう

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誰もが知っている天下人・徳川家康をどう描くか。タイトル通り、「どうする?」の局面に戸惑いっぱなしの家康を松本潤が軽妙に演じている。

重厚感を求める大河ファンからは軽薄という声も聞こえるが、私は結構楽しんでいる。主人公の強さ・賢さ・優しさに胸躍らせたい気持ちもわかるが、頼りなくて右往左往しているほうがみっともなくて、人間くさくて、いい。そんでもって、家臣や家族も結構クセあり。気になるキャラクターを中心に『どうする家康』の今後の見どころ(個人的趣味で)をまとめておこう。

若手家臣の凸凹コンビの成長を愛でる

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徳川家臣で武闘派、黒の面具(顔の鎧)がいかにも好戦的に見える平八郎こと本多忠勝。演じるのは目力強めの山田裕貴だ。主君に意見するのも厭わず、血の気がとにかく多いのよ。ただし、女には弱いという定番のギャップも。

そして、家康に憧れて志願してきた貧乏武家の次男坊・小平太こと榊原康政。演じるのは一見ひ弱そうな杉野遥亮。武功をたてたいと鼻息荒く、拾った防具をつなぎ合わせた「ちぎれ具足」を身に着けている。貧乏くさいけど、なんか可愛い。

小平太の上昇志向と飄々のハイブリッドは家康もお気に入り。この凸凹コンビが互いをライバル視しながらも、家康の側近(四天王または三傑と呼ばれる)へと上り詰めるわけだ。

もちろん、他の家臣も適材適所で、基本的には庶民的。明るくて宴会好きな三河の衆として家康を支えていく。大森南朋が演じる酒井忠次も重臣のひとりだが、やたらと「えびすくい」を踊りたがる陽気なおじさんだ。頼りない主君にのんきな家臣。「大丈夫?」と思うが、さらに強烈なダメっ子キャラがいることに触れておきたい。

史上最弱の服部半蔵がトリッキー

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時代劇に登場する忍者は、武術だけでなく諜報活動に長け、主君を陰ながら支える隠密だ。服部半蔵と聞けば、誰もが伊賀忍者の勇ましい暗躍を思い浮かべるのだが……。ここに登場する半蔵はちょっと違う。ちょっとどころか、まったく異なる、トリッキーな存在だ。演じるのは、真顔の表現力が芸能界随一の山田孝之。

武家に生まれた半蔵は、父親が伊賀出身というだけで忍者とされることにどうやら不服な様子。武士としてのプライドは高いが、実は弱い。からっきし弱い。飛び道具を投げても明後日の方向に飛ばしちゃう。家康の妻子奪還作戦や、鵜殿長照の息子生け捕り作戦を請け負うも、正直、半蔵は何もしていない。手練れの忍びを集めただけで、戦力にもなっていない。そのくせ、忍びの衆を野卑と思っている。

もうなんかね、ねじけた男なのだよ。今のところ手柄は何ひとつない。家康も家康だが、半蔵も半蔵である。だからこそ、面白い。先入観をぶち壊し、期待をことごとく裏切る存在の半蔵が、この物語の中でどう生き延びていくのかを楽しみにしている。

大嘘つきの裏切り者として追放された軍師

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もうひとり、魅力的な男が。難題を突破する奇策を思いつくアイディアマンだが、「嘘つきで無責任」と徳川家臣たちから嫌われていた本多正信である。過去、徳川家康を描く作品でも必ず傍らに登場する、不可欠な存在。演じるのは、大河で主役も務めたことのある松山ケンイチだ。

9話、家康を悩ませた三河一向一揆が収束。裏切り者として捕らえられた正信だが、命乞いするでもなく、家康に思いをぶつけたシーンが印象深い。「過ちをおかしたのも悔いるべきも家康」と主張。食うに食えない貧しき民が仏にすがる、その心情を察せない殿が間違っていると。民の心に寄り添うことが上に立つ者の矜持、と諭したようにも見えた。家康も武力行使した後悔を吐露し、より大きな目標を心に刻んだわけで。家康と正信の信頼関係の土台が築かれた瞬間でもあった。この後、正信が戻ってくるのを心待ちにしている。

側室オーディションで見せた瀬名の嫉妬と苦悩

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女性陣にも触れねば。家康の正室・瀬名を演じるのは有村架純。家康に瀬名をとられた今川氏真(溝端淳平)から意趣返しでひどい仕打ちを受けたものの、無事に生還。家康もベタ惚れ、家臣からも尊敬されているという設定だが、内に秘める感情は意外とどす黒いものも。

10話の“家康側室オーディション”ではその黒さがちらりと見えた気もする。実際、瀬名には“めっちゃ嫉妬深い悪女説”がある。ほわわんとした有村が演じるからこそ、瞬間に見えるどす黒さが際立つ。その計算があるとしたら、今後の瀬名の心模様は着目したいところだ。

そうそう、こうるさい姑も忘れちゃいけない。家康の母・於大の方がいい感じでね。肝っ玉母ちゃんというか、機を見るに敏というか。戦国の世で女が生き延びる術を心得ている、たくましい女である。演じるのは松嶋菜々子。あれこれ口を出すし、家康の尻を叩きまくるし、嫁に面と向かって「女としては御用済み」と言っちゃうし。でも、いやな印象はない。嫌味や皮肉ではなく、ダイレクトだからかな。爽やかに面罵するのは松嶋の持ち味。

他にも気になる人物はいるが(足利義昭役の古田新太には大笑いしたし、明智光秀役の酒向芳も適役だと思うし、歌うような口調のムロツヨシが演じる豊臣秀吉もイラッとさせるし)、前半はこのぐらいにしておこう。先週の第14話では家康もようやっと気骨を見せた。誰もが恐れる織田信長(岡田准一)に諫言し、勢いで「あほたわけ!」とまで言い放ったのだ。さあ、これからどんな仁と義と策を見せてくれるか、家康。

『どうする家康』
NHK毎週日曜夜20時00分~
脚本:古沢良太 制作統括:磯智明 音楽:稲本響 語り:寺島しのぶ
出演:松本潤、有村架純、大森南朋、山田裕貴、板垣季光人、岡田准一、北川景子、田辺誠一 、古川琴音、ムロツヨシ、松重豊ほか

吉田 潮

イラストレーター、コラムニスト。1972年生まれ。B型。千葉県船橋市出身。
法政大学法学部政治学科卒業。編集プロダクションで健康雑誌、美容雑誌の編集を経て、
2001年よりフリーランスに。テレビドラマ評を中心に、『週刊新潮』『東京新聞』で連載中。
『週刊女性PRIME』、『プレジデントオンライン』などに不定期寄稿。
ドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』(NHK)の「読む72時間」(Twitter)、「聴く72時間」(Spotify)を担当。『週刊フジテレビ批評』(フジ)コメンテーターも務める。
著書『産まないことは「逃げ」ですか?』『くさらないイケメン図鑑』『親の介護をしないとダメですか?』など。

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