『kufura』のアンケートでも親子喧嘩の原因No.1になった子どものゲーム。教育評論家の親野智可等さんは、喧嘩のきっかけになりやすいからこそ、子どもと共感的に関わるチャンスだと言います。連載【もしかして、毒親!?】7回目の今回は、親子関係にひびが入りかねないピンチをチャンスに変える関わり方について、3つのステップで教わります。
STEP1:「ゲーム=悪いもの」という親の認識を変える
null「子どもはゲームを楽しみながら、自ら設定した目標に向かって研究や努力を重ねて、実はとても頑張っています。
この頑張りだって大事なものなのに、親が全く理解を示さず“勉強しなきゃだめ!” “ゲーム捨てちゃうよ!”と否定的な関わり方ばかりしていると、“どうしてわかってくれないんだ”と信頼関係が損なわれ孤独を感じるようになってしまいます。
アルコールやギャンブルもそうですが、孤独の中にいることで中毒や依存症になるリスクが高まるので、一方的に叱りすぎるのは逆効果。
ゲームには、目標達成→リトルサクセスを体感→自己肯定感UPというメリットもあります。悪いものだと決めつけてゲームをしている姿を見てすぐ叱るのではなく、まずは、“面白そうだね” “楽しんでるね” “どんなゲームやってるの?”と、ゲームに理解をもった歩み寄りをすることが、ゲームを親子喧嘩のきっかけにしない、第一歩です」(以下「」内、親野さん)
小学生男の子ママのリアルな悩みは…
6年生と4年生の男の子がいる我が家では、「ゲームは宿題などやるべきことをやってから30分」と決めているのですが、最近は“いつもいいところで終わっちゃう!”と時間を守らず困っています。ゲームを取り上げたことも数知れず……制限しすぎでしょうか?
「30分では子どもにとっては短いです。ゲーム上での“目標達成”ができていないでしょうね。
親が一方的に決めたルールで縛っていると、約束を破ったり、隠れてやるようになってしまいます。こういう時こそ、ゲームをきっかけに親子で共感的かつ民主的な会話をするチャンスです。次のステップを参考にしてみてください」
STEP2:子どもの本音を共感的に聞く
null「無制限にゲームをさせたくないのなら、ルールが必要ですね。でも、ルール作りをする前に、とにかく子どもに本音を言わせてあげて、それに対して共感してあげてほしい。
“ゲームってすごく面白いんだもん。ぼくの生き甲斐なんだよ” “みんなやってるんだから、やらないと話題についていけないよ”という子どもに対して、
“何言ってんの、ゲームなんて!”と一方的に否定すると、子どもの心のシャッターが降りてしまいます。
子どもの本音に、親として言いたいことはもちろんあるでしょう。そこをぐっとこらえて、“確かに、このゲーム面白そうだよね” “みんながやってたら、やりたくなっちゃうよね”と、まずは共感を最優先。その上で、初めて親の気持ちを話せる番がやってきます。
先に親がたっぷり共感してあげていれば、“そうは言ってもゲームのやりすぎは心配だよ。勉強の時間も減るし、目も悪くなるかもしれないし”という親の気持ちに、子どもも共感できる。
そうしたよい雰囲気ができた上で「ルールを作ろう」と誘ってみましょう。自分のゲームに対する気持ちをよくわかってくれている人が言ってくれてるということになれば、子どもも野放しでいいとは思っていませんので、“確かにそうだな。ルールも必要だな。一緒に考えよう”という素直な気持ちで受け入れてくれる可能性が高まります。」
STEP3:民主的対話でルール作りを
null「子どもがルールの必要性に納得したら、どんな風にルール作りをしますか?
“じゃあ、1日1時間だよ、分かった!? ルールだからね、約束だよ!”
これでは成立しませんよね。どちらかが一方的に上から目線で決めるのではなく、対等の立場で相手をリスペクトし、譲り譲られながら、共感的かつ民主的な対話を目指しましょう。
例えば子どもが1日3時間ゲームをしたいと言ってきたとします。
母:3時間は多すぎるから、1時間半にしようよ。
子:1時間半じゃ絶対足りないよ! 2時間半はやらせて!
母:2時間半もちょっと多いかな。じゃあ、ママは1時間半がいいと思ってるけど、2時間にしよう。その代わり、宿題はやってからゲームしようね。新しいゲームをダウンロードするときは相談してね。
このように、親子でお互いの着地点を探しながらルールを決めていきましょう」
決めたルールがうまくいかなくても…
無事にルール作りができても、上手くいかないことが出てきたときは?
「例えば子どもがルールを破っても、“ルール決めたでしょ!”と叱って無理強いするのではなく、また話し合いをして調整していく。そのために、書き直しやすいホワイトボードをお勧めしています。
めんどうですか? めんどうで遠回りのように感じるかもしれませんが、親子で共感的かつ民主的な対話を重ねていくと、結果、ルールを守る確率はとても高まります。さらに、うちの親は自分の話を聞いてくれる、わかってくれる、一緒に考えてくれるという信頼感も生まれ、親子関係も良くなりますよ。
今回はゲームを例にしましたが、スマホや動画、習い事やその後の進路や就職についても、子どもと考え方が違った時に、それを親子の対立の原因にするのではなく、それを媒介にして親子のコミュニケーションが深まるように持っていく。
民主的親子であるということは、とても大事なことです。子どもにとって親が本当の心の安全基地になれるし、思春期以降も鉄壁なお守りとして持ち続けることができますよ」
子どものため……と思っても、激しい言い合いに発展してしまうと親だって落ち込むもの。”民主的親子”というお守り、親にとっても持っていたいアイテムですね。
ゲーム以外にも目を向けてほしいから、時間制限していたけれど…
null現代の子どもにとってゲームはコミュニケーションツールのひとつ。否定するつもりはないけれど、他のことにも目を向けてほしくて作った我が家のルールは、その作り方も含めて子どもにとって納得のいかないことだったのかもしれません。
「ゲームの代わりになるものがないと、子どもはどうしてものめりこんでしまいます。ゲームばかりやらせたくない、ゲーム以外に好きなものを見つけてほしいと思うなら、そこは、子どもは情報弱者なので親が一緒に探してあげましょう。
その子に向いているものを色々とお試しでやらせてみて、本当に楽しいものが見つかれば、そっちに時間を割きたくなるので必然的にゲームをする時間は減っていきます。
ただし、強制はしないこと。子どもが気に入っていないのに“半年くらいはやらせないと”と思うと毒親の方向に行ってしまいます。1回しかやらなくても子どもにとっては経験の引き出しが増えるし、幅が広がります。親は負担に思わず、子どもの“自分探し”を一緒に楽しんだらいいと思います」
親子バトルの悩みの種になりがちな、子どものゲーム。見方を変えるきっかけになるお話が盛りだくさんでした。“毒親”というショッキングなワードにひっぱられて、子育ての不安を感じた時の解決策を教わった本連載。
最終回は、子どもに理不尽な行動をしないために、親の力の抜き方を教わります。
【取材協力】
親野智可等(おやのちから)
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガ、各種メディアの連載などで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。詳細については「親力」で検索してHPから。
大学卒業後は銀行に就職するも、大好きな雑誌の世界に飛び込む。