その愛情、本当に子どものためになっていますか?
nullまずはじめに、俗に言われる“毒親”とは?
「過干渉で、それが子どものためになっていない場合、“毒親”になっていると言っていいでしょう。ほとんどの親が、毒親になりたいと思ってなっているわけではないと思います。子どもに対する愛情はあるけれど、それが空回りしている人がとても多いんです」と親野さん。
子どもに過干渉になってしまう親の気持ちとして例に挙げてくれたのは、
・片付けができる子にしてあげないと
・だらしないのを直さなくちゃ
・勉強を進んでやれるような子にならないと
・友達と仲良く、きょうだいにも優しい子になってほしい
・周りに迷惑をかけない子にしよう
といった、しつけにまつわるもの。
「こういう気持ちを強く持ちすぎると注意が必要です。親の“願い”といえば聞こえはいいですが、根底には親の“欲”もあるんです。
自分はしっかり子育てできる親だと思いたいし、世間にもそう思われたいという気持ちもあるのかもしれません。子どもの人生は子どものものなのに、子どものためと言いながら実は自分の欲を押し付けていることに気がつかないと、知らないうちに毒親になってしまう可能性がとても高い」(以下、「」内は親野さん)
しつけは子どもが小さいうちに!の呪縛
null「『鉄は熱いうちに打て』ということわざのように、子どもが小さければ小さい時ほど、しつけはうまくいくし、直したいところは直せると思っていませんか?
そのような考え方が主流の時代もありましたが、私のこれまでの経験や、最新の発達心理学や遺伝子の研究も踏まえると、“それは嘘です!”と言っていいくらい時代遅れです。
子どもは、遺伝子レベルでプログラミングされた資質を持って生まれてきて、小さければ小さいほど、その資質のまま生きています。大人の目には、やるべきことはやらないで、やりたいことしかやっていないように映るかもしれませんが、それはもともとの資質のままでいるので、当たり前のこと。
だから、あなたのお子さんが、整理整頓ができなくてもだらしなくても、“私のしつけのせいだ!”と思わなくて大丈夫! 責任感の強い親ほど、自分のせいだと思い込んでしまい、どうしても叱る回数が多くなってしまいます」
叱り続けることで、子どもの自己肯定感がボロボロに…
nullこうして、「子どものために」と叱る場面が増えていくことで、親の希望とは逆の結果を生むことにもなりかねないといいます。
「親として気になるところがあっても、子どものうちではなく、成長してからの方が直る可能性が高いんですよ。例えば、仕事や家庭を持つようになって、大事な会議に遅れたり書類を忘れる失敗をしたときこそ、“時間にルーズなところを直したい!” “整理整頓ができるようになりたい!”という自己改造のモチベーションのスイッチがはいる。
子どものころに散々叱られて自己肯定感がボロボロになっていると、“自分にはどうせムリだ”と思って、そのスイッチが押せないという事態に陥ってしまいます」
しつけのつもりで叱り続けていたら、子どもの自己肯定感を低くしてしまうなんて……!
「育児をされている方は、次から次へとやることが湧いてくる中でその対応をして、それだけで本当にがんばっていると思います。子どももまた、自分のペースで本人なりにがんばっているということも認めてあげる必要があります」
自分は子どもを叱りすぎてしまうと思ったら、生まれ持った資質は小さいうちは変えにくいと割り切ってしまうほうがよさそう。親としての肩の荷も少しは軽くなるかもしれません。
次回は、子どもの心を深く傷つける言葉から日常的に使いがちな言葉まで、“毒になる言葉”についてお伝えします。
【取材協力】
親野智可等(おやのちから)
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガ、各種メディアの連載などで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。詳細については「親力」で検索してHPから。
大学卒業後は銀行に就職するも、大好きな雑誌の世界に飛び込む。