何度目かのトイレの失敗…つい「なんでできないの!?」
何度目かのトイレの失敗…つい「なんでできないの!?」今回は、小学校に上がる前の小さな子どもをもつママやパパから寄せられた、こんなお悩みを取り上げます。
「子どもが失敗するたびに、いちいち反応してイラッとするのを何とかしたい!」
たとえばトイレを失敗してしまったり、食べものをこぼしたり、忘れものをしたり……。冷静に考えれば大したことではないのに、その瞬間カッと頭に血が上る。反射的に「なんでトイレでうまくできないの!?」「どうしてこぼすの!」などと、子どもを責めるような言い方をしてしまうことも。
親が「なんで!」と感情的に怒ると、子どもは萎縮してしまいます。本当は怒りたくない、もっと優しい親でいたいのに、とつい自分を責めてしまうママやパパも多いかもしれません。
「罪悪感を抱く必要はありません。怒りが湧くのは悪いことではないんですよ」と、戸田先生。
「親としての責任があるから、子どもに対して“こうしてあげたい”“こうあってほしい”といった気持ちを抱いているのです。そうした願望や理想が思い通りにならなかったときに、“怒り”が生まれます。
怒りは身近な相手ほど、強くなる性質があります。だから、子どもにイライラしてしまうのは仕方がないもの」(以下「」内、戸田先生)
でも、あとで「あんなに怒らなければよかった」と後悔したくない。ついイラッとしてしまったときは、どうすればいいのでしょうか?
まずは「6秒やり過ごす」トレーニングを
まずは「6秒やり過ごす」トレーニングを冷静に考えれば、トイレの失敗も、食べものをこぼしてしまうのも、子どもがわざとしていることではありません。年齢を考えると、多少失敗するのは当然のことです。それなのに、失敗した瞬間、衝動で感情を爆発させてしまう。
このとき大事なのは「6秒、怒りをやり過ごす」ことだと戸田先生は言います。
「人は怒りが生じてから6秒も経てば理性が働き、怒りに任せた衝動的な行動をしなくなります。つまり6秒、違うことに意識を向ければいいんです」
そこで怒りを感じた瞬間、意識をいったん外に向けるための3つのトレーニングを教えてもらいました。
その1:今の怒りは10点中何点?怒りを数値化する「スケールテクニック」
まったく怒りを感じていない状態を0、全身が震えるくらいの人生最大の怒りを10として、その怒りに具体的な点数をつけてみます。
「“今のは、まあまあ怒ったから5点かな……”などと、点数をつけることに意識を向けている間は、衝動的な行動はできません。6秒経って冷静になってから、対処法や子どもへの伝え方を考えましょう」
その2:引き算することに集中!数を数える「カウントバック」
頭の中で数を数えます。ポイントは、単純に「1、2、3・・・」と数えていくのではなく、「100から4ずつ引いて、100、96、92・・・」とするなど、少し難しい計算にすることだそう。
「無意識にできないくらいの計算にすると良いです。あらかじめ、怒りを感じたら“何から何を引くか”数字を決めておくといいでしょう」
その3:感情をリセット!その場をいったん離れる「タイムアウト」
他のことに意識を向けることすらできないくらいの怒りなら、その場を離れてしまう方法も。
「ただし急にママやパパがいなくなると、子どもは動揺します。なので“水を飲んでくる”などと言って、すぐに戻ってくることは伝えたほうがいいです。また、その場を離れてから大きな声を出したり、ものに八つ当たりをしたりすると、余計怒りの気持ちが高ぶってしまいます。深呼吸などをして心を落ち着かせましょう」
こうしてまず6秒やり過ごせば、理性が働いて冷静な判断ができるようになるそう。とはいえ、そんなにうまくやり過ごせないかも、と自信がない人もいるはず。
「怒りと上手に付き合うためには“トレーニング”の習慣づけが必要。筋トレの方法を知ってすぐに筋肉がつくわけではないのと同じで、継続して取り組んでいくことが大事です。
すぐに結果が出ないことにイライラしては本末転倒なので、まずは怒りの仕組みを意識しながら、実際に取り組んでみてくださいね」
「具体的にしてほしいこと」で、伝わる話し方に
「具体的にしてほしいこと」で、伝わる話し方にさて、怒りをうまくやり過ごせたとして、この状況ではどんなふうに、子どもに対して自分の気持ちを伝えたらよいのでしょうか。
「まずは、あなたは今“本来こうあってほしい”という思いが裏切られて、どう感じたのか。悲しい、さびしい、不安、困った……など、自分の気持ちに目を向けてみましょう。
その上で、子どもにも分かるような伝え方を選びましょう。たとえば失敗したときに“なんでできないの?”と理由を聞いても、子どもは分からないので困ってしまいます。“もう!”と怒っても、ママやパパが怒っているという記憶だけが残ってしまうでしょう。
なので、自分の気持ちや、次に同じ状況になったらしてほしいことを具体的に伝えてみるのがいいです。たとえばトイレに失敗した場合は“次は、おしっこしたくなったら教えてね”“汚れちゃうからね”などと伝える。
食べものをテーブルの下に落としたり、お皿をひっくり返してしまった場合は“一生懸命つくったから、悲しいな。今度からはひっくり返さないように食べてほしいな”などと、自分の気持ちも伝えてみるのもいいでしょう」
ちょっとした言い方の違いですが、感情的に怒るよりママやパパの気持ちが伝わりそう。この伝え方なら、八つ当たりするのと違って、罪悪感を感じることもないはずです。まずは6秒やり過ごすトレーニングをして、怒りの衝動に振り回されることから脱出しましょう!
次回は、小さな子どもを持つ親御さんが悩みがちな「食事の理想と現実」について取り上げます。
取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono
アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。
豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。