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【もしかして、毒親!?】現代育児のキーワード「子どもの自己肯定感」との付き合い方…教育評論家・親野先生に聞きました#5

「ありのままの自分自身を肯定できる感覚」という意味で使われる『自己肯定感』。“毒”にならないための育児について、教育評論家の親野智可等さんに聞く本連載でも、何度も出てきたキーワードです。大切に育まなければいけない感覚だとわかってはいるものの、育児はすぐに結果が目に見えないので、難しさを感じることも。

長い教師経験で多くの子どもの自己肯定感に触れ、教育評論家としてその重要性を広く伝えてきた親野さんに、将来的な影響や親としての関わり方について聞きました。

自己肯定感が高い、低い、ってどんなこと?

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自己肯定感とは、文字通り、自分を肯定し認める感覚のこと。

親野さんが小学校教師をしていたころ、子どもの自己肯定感の高さ・低さが表れるのはこんな場面だったそうです。

「学校行事や理科の実験をするときに“おもしろそう、早くやりたい!” という子どももいれば、 “難しそう、どうせできないよ”という子どももいます。

前者は自己肯定感が高い子どもの場合が多く、積極的にチャレンジし、たとえ壁があっても“できるはず”という気持ちで乗り越えられる。一方、自己肯定感が低い子は何かと自信が持てずチャレンジしないことが多い。たとえチャレンジしたとしても、ちょっとした壁があると“やっぱりダメだ”となって努力が続かなくなってしまいがちです。

これがすべてではありませんが、親が否定的に叱ってばかりいると、自分に自信が持てなくなってしまい、子どものうちからチャレンジ精神や努力しようという気持ちがしぼんでしまう可能性があります」(以下「」内、親野さん)

自己肯定感の低さは、成長してからの行動に大きな影響を与えることも

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「自分に自信が持てないまま成長すると、思春期後半以降に大きく影響します。

高校や大学受験、資格取得、就職など、目的意識を持って努力を始めたときに、自己肯定感がボロボロだと、自己改造のモチベーションスイッチがはいらないんです。

目標を達成するために、時間にルーズなところを直したい/整理整頓ができるようになりたい/忘れ物をしたくない……自分を変えたいと思っても、“自分にはどうせ無理だ”と思って頑張れない。失敗しても、反省して乗り越えようとする力が沸いてこない。

子どものうちは、自己改造したいと真剣に考えることはまだできません。内面的モチベーションはまだ持てない時代なので、叱られるのが嫌だからという理由で親の言うことを聞いているだけです。

成長して内面的モチベーションを持ったときこそ、自己肯定感が必要になってくるのです」

我が子のマイナス思考が気になったら?「自己肯定感」という言葉に振り回されないために

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将来的にも大いに影響するならば、なんとかして高めてあげなければと、親が自己肯定感という言葉に振り回されてしまったり、負担に感じてしまうこともあるかもしれません。

気を付けてほしいのは、子どもの自己肯定感が低くて消極的だと感じても、自分の関わり方のせいだと思い込まないこと。親の関わり方が影響するのは確かですが、片付けや整理整頓ができないのと同じで、自己肯定感の高い・低いも、もともとの要素が大きいです。

マイナス思考の人は自己肯定感が低くなりがちなのですが、最近の研究で日本人は不安遺伝子を持ったマイナス思考の人が多いことがわかっています。

マイナス思考が悪いことばかりではなくて、コツコツと長期的に努力できるし、危ない橋を渡らないように準備万端&根回し上手になれる。そうやって危険を回避する能力も高まります。

もし、自分のお子さんがマイナス思考だったとしても、それを変えようとして叱ったり否定すると、ますます自己肯定感が下がってしまいます。まずは、“慎重派でよかったな~”と思うところから始めてください」

我が子の成長について考えるとき、大事にしたい自己肯定感。

親野さんは、自己肯定感は“親子関係”とセットで大切だと言います。次回は、良好な親子関係の築き方についてお届けします。


 

【取材協力】

親野智可等(おやのちから)

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。TwitterInstagramYouTubeBlog、メルマガ、各種メディアの連載などで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。詳細については「親力」で検索してHPから。

駿河真理子
駿河真理子

大学卒業後は銀行に就職するも、大好きな雑誌の世界に飛び込む。『女性セブン』(小学館)で、編集兼ライターとして10年間、エンタメ系の誌面に携わる。第2子出産後、5年ぶりに『kufura』のライターとして復帰。今後は、育児や暮らしにまつわる記事を発信していきたい。

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