運動系の習い事をしてほしいのに、子どもは関心ゼロ。どうすれば?
null今回は、こんなお悩みを取り上げます。
「期待していた進路や習い事を子どもが選ばなくて、ガッカリ、イライラ……。ダメだと分かっていても気持ちを抑えられない!」
難しい問題です。もちろん、子どもの人生は子どものものだと分かってはいる。それでも「できれば運動系の習い事や、クラブ活動をしてほしい」「理系に進んでほしい」などと、親なりの期待を抱いてしまう人も、実は多いのではないでしょうか。
子どもに少しでも興味を持ってもらおうと、体験会や塾などに連れていくも、ちっとも関心を示してくれなくてガッカリ。思い通りにならないわが子に、内心イライラしてしまう……。
また「男の子なのに運動ができないと、仲間はずれにされるのでは?」「最近理系のほうが就職先はあると聞くのに、文系に進んで、本当に就職できるのだろうか?」などと、子どもの将来に対する心配が行き過ぎてしまうという声も。
中には子どもに対してではなく、思い通りに育てられていない自分に対して、腹が立ってしまうケースもあるようです。こんな気持ちになってしまったら、一体どう対処すればいいのでしょう?
将来、何かあるたびに「親のせいで」と言われるのはつらい!
nullこれまで、多くの悩める親御さんたちの相談に乗ってきた戸田先生は、「親の望みに合わせて、子どもの進路を無理やり変えてしまう親御さんも、実際にはいます」と話します。極端なケースですが「子どもの就職先を私が選んであげたい!」と、就職活動にまで介入してしまう親御さんにも出会ったことがあるそうです。
「短期的に見れば、子どもが親の期待する進路を選んでくれたら一安心、と思えるかもしれません。でも、もっと長いスパンで考えたらどうでしょう?
もし将来、子どもがつまずくことがあったら、そのたびに“お父さんやお母さんの言う通りにしたのに、うまくいかなかった”と親を恨むことになるかもしれないですよね。もしわが子からそんなことを言われたら、親のほうも悲しくなるのではないでしょうか」(以下「」内 戸田先生)
確かに、何かあるたびに「親のせいで」と言われてしまうのはつらいもの。それに子ども自身も、自分で決断したことのほうが、責任を持って自分の力で乗り越えようと頑張ることができそうです。
あらためて「怒りはどんなときにわいてくるか、考えてみてほしい」と戸田先生。
「怒りは“こうあってほしい”という自分の思いが叶わないとき、思い通りにならないときにわいてくるもの。子どもが期待通りの進路を選ばなくて怒りがむくむくとわき上がってくるということは、進路や部活、友人関係など、子どもにまつわるさまざまな面について、自分の思い通りになってほしいと思っているのではないか? そんなふうに自分に問いかけてみてください。
そして、“わが子であっても、意志を持つひとりの人間である”という意識を持つことが大切だと、私は思います」
“例外探し”で思い込みのフィルターを外す
nullさらに、イライラしてしまう背景には「思い込みから生じる不安」があるのではと、戸田先生は指摘します。
“男の子で運動ができないと、仲間はずれにされる”、“理系のほうが就職は有利”。果たしてこれらは本当でしょうか?
「私たちは自分の思い込みや周囲の環境などの要因により、非合理的な判断をしてしまうことがあります。これを心理学では『認知バイアス』と呼びますが、これは日常生活の中でもたびたび生じていることを、意識しておくといいでしょう。
たとえば認知バイアスの中には、自分にとって都合のいい情報ばかりが目に入り、都合の悪い情報が目に入りにくくなるといった現象もあります。“子どもには理系に進んでほしい”という自分の願いや思い込みによって“理系出身で活躍している人”や“理系を募集している就職情報”ばかり目に入ってきてしまうのです」
こうした認知バイアスの存在を意識して、“例外探し”をすることが、視野を広げることにつながるといいます。
「例外探しとは、たとえば“運動ができなくても、仲間にたくさん囲まれて活躍している人はいるか?”や、“理系出身でなくても成功している人は?”など、自分が“こうじゃなきゃダメだ”と思っていることの例外のケースがないか、あえて探してみることです。この問いかけを見て“そんなの、たくさんいる!”と思った人がほとんどではないでしょうか?
私たちはつい、同じ学校の人や近所の人などの狭い世界の中で生まれた、偏った考え方を取り入れてしまいがちです。そして“この道から外れたら、わが子が将来苦しむかもしれない”、”こっちの進路を選んでおいたほうが、あとで楽をできるのでは”などと決めつけてしまう。
ですが、もう少し視野を広げてみたら、それがただの思い込みだと納得できるはず。半径2メートルくらいの世界で判断せず、もっと広く世界を見よう、と自分に言ってあげてください」
最近では社会の変化も早く、今世間で「この就職先がいい」「この業界がいい」と言われているものが、10年経つと正反対の評価に変わってしまうということがよくあります。親が「これがいい」と思うものも、年を経て廃れていくかもしれません。そんな視点も持ちながら、子どもの決断を尊重できるといいですね。
次回は、番外編! 子ども自身にアンガーマネジメントの考え方を身につけてもらう方法をお伝えします。
取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono
アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。
豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。