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思春期の一挙一動に振り回されてしまう!親にできることは?【子育てのアンガーマネジメント#中学生編1】

急に部屋に閉じこもるようになった。やり場のないイライラを八つ当たりされる。人それぞれ異なる思春期に、親が振り回されないためには? 講師歴29年、これまで22万人を指導してきた戸田久実先生に、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」を使った対処法を教えてもらいました。

大人と子どもの境目。急に心を閉じることも

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一般的に13歳頃から始まるといわれる思春期。個人差も大きく、最近では、からだの発育のスピードが速い子どもは、11歳前後から思春期が始まることもあるようです。

子どもが思春期に入ると「特に何か理由があるわけではないようだが、常にイライラしている」「学校から帰ったら、すぐに自分の部屋に閉じこもってしまう」「一緒に行動することを嫌がるようになった」といった子どもの変化に直面し、戸惑うパパ・ママの声を聞きます。

「思春期は、大人と子どもが入り混じり、せめぎあう時期。体や心の急激な変化に、子ども自身も戸惑っている。そう頭では理解できるものの、実際に子どもの変化を目にしたら、びっくりしてしまうのも当然ですよね」と戸田先生。

親のことをあからさまに無視する一方で「自分のことをわかってくれない」と拗ねる。時には、やり場のないイライラを親に向けてくることも。

そんな子どもの一挙一動に翻弄されて、ついムカムカしてしまったら、どのように対処すればいいでしょうか?

“サナギの殻”を破る前に、自分に意識を向けて

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小学生の反抗期と同じように、誰もが通る道。まずは、「“必ずやってくる時期だからどうしようもない”と受け止めてほしい」と戸田先生。

とはいえ、急に部屋に閉じこもったり、親との会話を避けるようになったりしたら、心配で何かしてあげたいと思ってしまいそうですが……。

「気持ちは分かるのですが、こうした相談を受けたとき、私がよくするお話があります。20年くらい前にある心理学を専門とする先生に伺ったものです。

チョウの幼虫が、羽化するまでの様子をイメージしてみてください。チョウは成長の過程でサナギになります。サナギの間は、中で何が起きているのか見ることはできませんよね。でも、気になるからといってしょっちゅう触っていたら、サナギが破れて、羽化ができなくなってしまう。

思春期の子どもとの関わり方も、これに似ていませんか? 親が“なんで口をきかないの?”“今何を考えているの?”と構いすぎる行為は、子どもが自分で成長しようとするのを妨げているとも考えられます」(以下「」内 戸田先生)

なるほど……。“今はサナギの時期”とイメージしてみると、口や手を出したくなる気持ちが少し落ち着きそうです。

「子どもがこれから生きていく上で大切なことを、考えたり悩んだりしている時期です。親は、意見や助けを求められたら手を貸す、くらいの距離感でいてもいいのかもしれません。

むしろ子どもの心配ではなく、自分自身のイライラ・ムカムカする気持ちにどう対処するか? 怒りを爆発させて後悔しないために、私には何ができる? といったほうに意識を向けられるといいですよね」

腹が立つのは「思春期」にではなく「返事をしないこと」?

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ここで、自分の感情に向き合うときに重要なことを、戸田先生が教えてくれました。

具体的に、子どものどんな行動に対してイライラしてしまうのか、細かく分解しながら捉えていくことが大事です。

“思春期を迎えた子どもにイライラしている”というように漠然と考えるのではなく、“カバンを玄関に叩きつけるような態度にイライラしている”“質問しているのに返事をしないことにイライラしている”などと、細かくイライラの内容を振り返ってみてください」

なぜ具体的に、細かく捉えることが大事なのでしょう?

そうしないと、“怒る・怒らないの境界線を明確にする”ことも、“自分がコントロールできることかどうか判断する”こともできないからです」

アンガーマネジメントには3段階あると戸田先生。

まずは第1段階。カッと怒りを覚えても、6秒怒りをやり過ごすことで、理性が働く状態にする。

次に第2段階。ここまではまぁ許せる/ここからは許せないを考え、「怒る・怒らないの境界線」を明確にする。

そして第3段階は、ここからは許容できないという場合にどう行動するのかを、「親の働きかけで変えられること」と「変えられないこと」に分けて判断する

具体的にイライラの内訳を捉えていくと、“部屋にこもるのは許せるけれど、暴言を吐くことは許せない”のように、怒る必要のあること・ないことの区別がつけられるようになります

そして、たとえば“死ね!”などの人を傷つける暴言やカバンを叩きつけるなどの行為は許容できないとし、これらの行為は子どもとじっくり話せば変えられることと判断するならば、そのためにどう行動するかに取り組みましょう。

子どもと話し合うときに、“今起きているあなたの変化を、否定しているわけではない”と子どもに伝われば、子どものほうも耳を傾けやすいのではないでしょうか」

 

子どもの心が大きく揺れ動く時期。振り回されて疲れてしまう前に、自分のイライラを細かく分解しながら対処していけるといいですね。

次回は、「子どもが親の望む進路を選ばなかったときの葛藤や苛立ち」のテーマを取り上げます。

取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono

戸田 久実
戸田 久実

アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。

豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。

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