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親が頭を悩ます「宿題」問題。行動を促す声かけは?【子育てのアンガーマネジメント#小学生編4】

いつまでも学校の宿題をやろうとしないわが子に、思わずイライラ。声をかけたいけれど、子どもの自主性に任せるべき? 多くの親が悩みがちな「子どもの宿題に、どう関わるか」問題に、良い対処法はあるのでしょうか。
講師歴29年、これまで22万人を指導してきた戸田久実先生に、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」を使った対処法、子どもへの上手な伝え方を教えてもらいました。

「宿題をやりなさい」と言うと、やる気が失せる?

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今回は、こんなお悩みを取り上げます。

「宿題に手をつけない子どもにイライラしてしまう。でも、良かれと思って指摘すると逆効果に!」

宿題をやらない、ギリギリまで手をつけようとしない。多くの親が悩む問題です。我慢の限界を迎えて「いい加減、宿題をやって!」と指摘すると「今やろうと思っていたのに」「言われたら、やる気がしなくなった」などと拗ねられてしまうことも。

かといって、完全に放置してしまって良いのか? 宿題をやらないまま学校に行かせては、子どもが学校で怒られたり、勉強で損をしたりするのでは? など、子どもの宿題への関わり方を悩んでいるパパ・ママも多いと聞きます。

親のイライラする気持ちをそのままぶつけるのではなく、子どもが気持ちよく宿題に取りかかろうと思えるような声かけをするには、どうすればいいのでしょうか?

「親のために宿題をやらされている」と思わせてはダメ

まず戸田先生は「こんな言い方をすると逆効果」な声かけのパターンを教えてくれました。たとえば「なんで宿題をしないの?」「早く手をつけたほうがいいって、どうしてわからないの?」といった言葉。

“なぜ/どうして~できないの?”といった聞き方は、相手を責めたり追い詰めたりする言葉です。なぜ?と責めることで、子どもはますます素直に“やろう”と思えなくなってしまうかもしれません。

それに小学生くらいの子どもにとっては、なぜ、どうしてと理由を問われても“やりたくないから”としか思えないでしょう。親が望む反応を引き出すのに、こうした声かけはあまりふさわしくありません」(以下「」内 戸田先生)

他にも「やらないとお母さん(お父さん)が恥ずかしいでしょう!」といった怒り方も、避けたい声かけのひとつだそうです。

「親子の関係を、上司と部下の関係に置き換えて考えてみましょう。“あなたがちゃんとやらないと、上司の私が恥ずかしい”“私の出世に響くからやってほしい”と言われたら、どのように感じるでしょう? “私は、あなたの出世のために頑張らないといけないの?”と、嫌な気持ちになるのではないでしょうか。

宿題をやるのは本来、自分のためのはずです。子どもも“お母さんやお父さんのために宿題をやらされている”と思うと、やる気が下がるもの」

確かに、こうした声かけは、子どもの「宿題をやりたい、やらなければ」と思う気持ちを削いでしまいそうです。

時には痛い目を見たほうが、自主性は育つ

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それではどんな言い方をすれば、子どもが行動に移しやすいでしょうか。

「責めるような言葉を使うのではなく、“今日は宿題ある?”“宿題できた?”のように問いかけるのがおすすめです。

特に、計画を立てて取り組むのが苦手なお子さんの場合、はじめは親のサポートが必要かもしれません。そういうときは“今日の宿題は何?”“何時から始める?”など、未来の行動について考えさせるような声かけをすると、子どもも行動に移しやすいでしょう」

「宿題は○時から始める」と子ども自身が言ったのにもかかわらず、時間になってもやろうとしないとイライラしてしまいそうですが……。

「気持ちは分かります。それでも、一度子どもと約束したことは、できるだけ信じてあげるのが良いと私は思います。“言ったのにやってないじゃない!”と思う気持ちはあると思いますが、少し時間をおいて、見守ってみるといいですね」

また「もし宿題をやらずに学校に行くと、どうなるだろう?」などと問いかけて、子ども自身に“宿題をする意味”を考えさせるのも良いとのこと。予習や復習のために宿題がある、やらなければ自分が損をするだけだ、などと子ども自身が宿題をする意味に気づけば、自ら「やろう」と思う姿勢につながりそうです。

「宿題をやること」は、親の課題なのか?

さらには「親が逐一口出しするのではなく、子ども自身が宿題をやらなかったことで先生に怒られたり、学校で恥ずかしい思いをしたりする経験を積むほうが、結果的には良い効果があるかもしれない」と戸田先生は話します。

「アドラー心理学では“これは誰の課題なのか?”といった問いかけを使いながら、『課題の分離』を考えます。

宿題は、子どもが自分で考えて行動するべき課題です。それなのに、親が代わりに解決しなければ、と考えて“宿題しなさい”と言うのは、他者の課題に対して踏み込む行為。

子どもから“手伝って!”と言われたり、教師から“フォローをしてください”と依頼されたら共同の課題として手助けをすればよいですが、それ以外では子どもの課題と考えて口を出すことは控えるべきとします。

子ども自身が痛い目を見て、はじめて“自分でなんとかしよう”と自主性が育つこともあります。親としては、子どもができるだけ怒られないように……と先回りして助けてあげたい気持ちになりがちですが、ぐっと堪えて見守ることも、親ができるサポートの一つのはず」

少し遠回りにも見えますが、子どもの真の自主性を育てるために、時には失敗させることが必要なのかもしれません。親子で「なんのために宿題があるのだろう?」「なぜ親である私は、子どもに宿題をしてほしいと思っているのだろう?」と話し合ってみてもいいですね。

 

次回は、「思春期のイライラ、ムカムカに、親はどう向き合えばいい?」という問題について取り上げます。

取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono

戸田 久実
戸田 久実

アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。

豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。

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