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「ゲームは30分まで」約束を破られるたびにケンカに…!【子育てのアンガーマネジメント#小学生編1】

ゲームをする時間についてルールを決めたのに、守らない。子どもに約束やルールを破られたときのイライラ、どう向き合えばいい? 講師歴29年、これまで22万人を指導してきた戸田久実先生に、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」を使った対処法、子どもへの上手な伝え方を教えてもらいました。

「約束したのに」多くの親が悩む、ゲーム問題

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今回は、こんなお悩みを取り上げます。

「約束を守らずゲームをし続ける子どもにイライラする!」

小学生にもなると、子どもに守ってほしい約束やルールがありますよね。中でも、一筋縄ではいかない約束ごとの代表が、ゲームです。

ゲームは1日30分までと決めたのに、守らない。ルールを決めた以上「もう30分過ぎたよ!」「約束したでしょ!」と声をかけずにいられなくて、親も子どももイライラ。そのままケンカに……なんてことも。

ゲームは、続けて取り組みたくなる工夫が随所にされています。時間だからやめなきゃ、と思っても、キリが悪くてなかなかやめられない。大人でもそうなのですから、子どもが約束の時間ぴったりに終わらせるのは、そもそも難しいもの」と戸田先生。

だからと言って、約束が破られてばかりだと、親もイライラしてしまいます。どうすればいいでしょうか?

前に進むためには「今は変えられないから諦める」もアリ

このケースでは、家庭内で「約束やルールを守る目的」が明確であるか、また、子どもがその目的を理解できる年齢かによって、対処の考え方が変わるといいます。

「たとえば中学受験など、子ども自身が目標を持っていて、そのためにゲームの約束が必要なのだと理解できているのであれば、根気良く子どもと約束のすり合わせをしていくこともできるでしょう。

その場合は、以前も紹介した、親側の『べき』を3つのゾーンに分けるテクニックを使うのがおすすめです。“30分経ったらゲームをやめる約束だけど、キリのいいところまでクリアしてからやめても、まぁOKとしよう”などと、『まぁ許せるゾーン』を設けてみてください」(以下「」内 戸田先生)

※「○○するべき」の境界線についてはこちらの記事を参考にしてください。
食事のたびにイライラ…「どうして食べてくれないの!?」【子育てのアンガーマネジメント#幼児編2】

 

では、「約束やルールを守る目的」がそこまで明確ではない場合、また子どもがまだ幼くて理解できない場合は、どうしたらいいのでしょうか。

「もしかしたら『肯定的な諦め』が必要なケースかもしれませんね

肯定的な諦めとは、どういうことでしょう?

戸田先生は「目の前の出来事は、自分の力で変えられるのか、変えられないのか。その見極めが重要」と話しながら、親自身が自分の行動を選ぶための考え方を教えてくれました。

そのイライラの要因は、あなたの力で変えられるか?線引きする

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たとえば子どもがゲームをやりたい気持ちは、親の力でコントロールできるでしょうか? どれだけ怒っても、子どもの気持ちまでは変えられません。ゲームを取り上げたとしても、子どものやる気に火をつけてしまい逆効果……なんて可能性も。

一方で、ある年齢に達したり、思う存分ゲームをやり切ったりしたら、子どもが自分から「やーめた」と言い出すかもしれません。

「親はつい、自分の子どもなら分かってくれる、自分の思い通りになるのではないか、といった感覚を持ってしまいがちです。でも実際は、明日の天気が思い通りにならないのと同じで、子どもの気持ちも、変えようとして変えられるものではありませんよね。

自分でコントロールできないことに“どうして”と思い続けると、過剰に怒りが膨れ上がってしまいます。これは自分には変えられないことだ、と判断したら、“まあ、今はいいか”、“ひとまず、変えられないことを受け入れよう”と諦める、そして、これ以上の怒りを抱えないために“できることは何か”に目を向けるのも、前に進むための選択のひとつなのです」

今は子どもの気持ちを変えられない。約束やルールを決めても、現実的には守れそうもないし、受験のように、切迫した目標があるわけではないから「今は放っておく」、それも前向きな決断。

これが戸田先生のいう「肯定的な諦め」なのです。

迷ったら上の図を参考にして、その状況はあなたが何か行動することで「変えられること」なのか、「重要なこと」なのか、自分に問いかけてみましょう。「今できること、できないこと」が明確になり、自分にとっていい道を選ぶことができそうです。

子どもの「事情」にも耳を傾けて

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「まあ、今はいいか」と諦めることもひとつの選択肢、とお伝えしてきました。「ちゃんと伝えれば、約束やルールの大事さをわかってくれて、子どもが変わるかもしれない」と思うなら、上記の「行動のコントロール」の図の左にある『変えられる』 にあてはめ、『いつまでに、どの程度子どもが変わってくれ
たらOKにするか』という目標を決め、子どもと話し合い、働きかけるのもいいでしょう、と戸田先生。

「思いを伝えるときは“ルールを守らないあなたがいけない”といった声掛けはNGです。

まず、なんのためにそのルールがあるのか。ゲームは30分までなら、なんのために30分という取り決めをするのか。約束やルールの意味を、しっかり伝えましょう。

もしかしたら、子どもにも思いや事情があるかもしれません。約束したのにゲームをやめられなかったのはなぜか、など、子ども側の話にも耳を傾けてみてくださいね」

自分には変えられないことを見極め、自分が変えられることに力を注ぐ。「これは自分の力では、どうにもできないことだ」と割り切ると、必要以上にイライラせずにすみそうです。

 

次回は、小学生の子どもを持つママやパパから寄せられた「乱暴な言葉遣いをするようになったら、どうすれば?」のテーマを取り上げます。

 

取材・文/塚田智恵美 イラスト/ayakono

戸田 久実
戸田 久実

アンガーマネジメントコンサルタント、アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。日本アンガーマネジメント協会理事。「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を行う。

豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、幅広い年齢層が受講している。「アサーティブ・コミュニケーション」(日経文庫)、「怒りの扱い方大全」(日本経済新聞出版)、「『つい怒ってしまう』がなくなる 子育てのアンガーマネジメント」(青春出版社)など著書多数。

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