7月28日発売予定の最新号、絶賛製作中!
nullこんにちは。
今、私は、7月28日に発売する『ぺぱぷんたす006号』の撮影、本づくり作業の真っ只中です。本当に、てんてこまいな毎日ですが、作家、フォトグラファー、モデル、デザイナー、印刷、加工、たくさんの人の想いや力が合わさって、だんだんと形になっていく喜びを感じられる、幸せな時間でもあります 。
……余談ですが、“てんてこまい“って言葉、大変なのに悲壮感がなくて大好きです。
『ぺぱぷんたす』を手に取られた方から、「どうやったらこんな本ができるの?」「なんで作ろうって思ったの?」とよく聞かれます。
特に出版関係の方から聞かれることが多いのですが、今回は『ぺぱぷんたす』が生まれるまでの話をしたいと思います。
「デジタル」と「紙」は共存できるはず!
null『ぺぱぷんたす』が誕生したのは2017年。
当時のことを思い返すと、なんだかとっても強い「使命感」のようなものに駆られていた気がします。
入社以来、ずっと女性誌でファッションやビューティのページを作っていた私が、幼児誌に携わるようになったのは2014年。異動が決まって初めて見た幼児誌は、キャラクターが集結していて、おもちゃやテレビの情報もいっぱいで、ドリルがあって、漫画もあって、とにかくパワフルで刺激的。
「今の幼児誌ってすごいんだなあ!」という驚きがありました。子どもが好きなものと、お勉強的なページがギュギュギュッと詰まっています。
その当時、私の息子は6歳と8歳。彼らが通っていた保育園は、「どろんこ系」とも呼ばれ、「子ども時代を子どもらしく!」がモットーの自然派保育園。
我が息子たちは、1年中裸足に草履で野山を駆け回る幼年期を過ごしました。そんな野生児のような長男が小学生になり、現代の風に触れ、自然や絵本よりも、テレビやゲーム、タブレットにより強い興味を示すように。それはもう、抗いようもない当然の流れなのですが、当時の私は戸惑いました(今となっては笑い話です)。
それはちょうど「0歳児がスマホを操る!?」「スマホで育児?」という話題がニュースになっていた頃。デジタルの流れは加速する一方で、“デジタルスキルも大切な時代になる“と頭ではわかっていても、紙の本が好きで、雑誌が好きで、ずっと作ってきた私にとって、紙の本や雑誌が廃れていくのは耐え難いことでした。
「出版の未来」にも危機感を覚えました。どうしたら良いのだろう……。その時強く思ったのは、「子どもの原体験に、楽しい本との関わりがあれば、きっとデジタルの世界に入っていったとしても、いつかは戻ってくる。デジタルと紙は共存できるはず!」ということ。
ただ読むだけ、見るだけなら、電子書籍でいい。だからこそ、紙の本に付加価値を与えたい。
それは能動的に手を動かす「体験」だったり、そこから得る「発見」や「驚き」、五感を刺激する「仕掛け」、手元に置いておきたくなるような「物としての価値」、そして親子の「豊かな時間」ではないかと。
紙の本だからこそ、できること。
nullそこでどんな本がいいのかを考えました。
そんな時に役立ったのは、小学館の幼児誌や学年誌(『小学1年生』など)が、長い年月をかけて(それはもう歴史と言ってもいいくらい!)培ってきた、紙のノウハウや紙遊びの文化でした。
女性誌では、本に使う紙やそのサイズはほとんど決まっていましたが、幼児誌に使われている紙は、実にバラエティ豊か。そして精密に設計され、加工された組み立て付録や巻頭付録は、印刷も加工の技術も素晴らしいものでした。
過去の付録は私にとっては宝の山のように見え、これこそが紙の本でなくてはできないこと!だと確信しました。
1:「自分の手で創造する楽しさ」を味わえる本を!
まず、キャラクターだったり、おもちゃだったり、子どもが好きなものを集めた雑誌はすでにあり、お勉強の本もあるから、そうではないもの。想像の羽を広げて、工夫したり、自分の手で何かを創造する楽しさや喜びを存分に味わえたり、いつもとちょっと視点を変えられるような本を作りたいと思いました。
勉強的な要素はなるべく排除し、「何かのために○○する」(例えば頭が良くなるために○○する、知識を得るために○○する)ではなく、純粋に遊びこめるような(でもちょっとした気づきがあるような)、正解のない本にしたいと思いました。
子どもに教える、というようなスタンスは(できるだけ)取らず、学習的な内容にもせず、けれど子どもの心に好奇心の種をそっと蒔くような気持ち。そしてその中には、のびやかに育ってほしいな、という隠れた願いも込めました。
『ぺぱぷんたす』の巻頭のご挨拶と、背に入れた読者へのメッセージ。毎号変えようかな、と思うのですが、これ以上の言葉が見つからず……(笑)。001号からずっと入れています。もちろん006号も!
巻頭のご挨拶はこんな文章です。
かみ でできること。
かみ だからこそ できること。
「コドモゴコロいっぱいの
おとなたちが
ホンキで たのしんで
ホンキで あそびながら、
かんがえました。
やくには(たぶん)たちません。
せいかいも ありません。
でも ここには
ワクワク、ドキドキ、
ニコニコの
あそびや はっけんが
つまっています。
このほんを
どうぞ おもいっきり
じゆうに
たのしんでください。」
読者の方から作品も届きました! 本の中の遊びが本の中だけで終わらず、広がっていくといいなと思っていたので、こういう作品や写真が届くと、スタッフ一同大喜び。編集者冥利に尽きます。
2:幼いうちから、デザイン的に洗練されたものにも触れてほしい
もう一つ、どうしてもこだわりたかったのが「デザイン」です。
「子どもはごちゃごちゃでも、好きなものを見つけるんだよね」「子どもはみっちりしていた方が好き」「派手な色で目を引かないとスルーされちゃう」という声を多々聞きますし、「そうなのかも」と思うところもあるのですが、デザイン的に洗練されたものにも幼いうちから触れてほしい、という個人的な思いと、親御さんにも楽しんでいただきたい気持ちもあって。
……余談ですが、『ぺぱぷんたす』を制作する際のスタッフの共通認識として、「子どもってこうだよね」という断定的な決めつけや、こうするべき、こうあるべきという「べき」論で語らないようにしています。
今はいろいろな価値観が共存する時代なので、否定したり断定したりせず、「そうかもしれないし、こうかもしれない」という柔軟さを大事にしています。
さて、こうして、うんうん唸りながら構想を練ったのですが、当時は「こんな本を作りたい」と言ってもなかなか理解を得られず……。
藁にもすがるような思いで、社内公募中だった「ネクストビジネスプラン」に「紙育雑誌」と銘打って企画書を提出しました。すると「ネクストビジネスではないけれど、目的が明確で、意義があることと判断しました。今の部署で作れますね」ということでGO!が出て(涙)。本当にタイミングもよく、ラッキーでした。
そこからは楽しくも苦しいイバラの道。予算の壁、制作の壁、流通ルールの壁、時間の壁などなど、次から次にいろいろな壁が立ちはだかり、まさに、てんてこまい!
でも、制作や販売の頼りになる「ぺぱぷんたすチーム」の皆さんや、印刷、加工、製本所の方々、そしてアートディレクター祖父江慎さんの強力なサポートで、一つ一つ難問をクリアし、壁を越え……約1年半後にようやく『ぺぱぷんたす』は産声をあげたのでした。
思い入れの深い『ぺぱぷんたす001』号(ごめんなさい! 現在完売しています) 。
出来上がった時は、嬉しさよりもホッとしたのを覚えています。
001号目から毎号『ぺぱぷんたす』の最後のページ(奥付)には、スタッフや協力してくださった方々のニックネームを載せています。作り手をぐっと身近に感じていただけるかなと思って(笑)。
実を言うと、今でも「よくできたなあ」って(自分でも)思ってるんです。どんな壁があり、どんな“てんてこまい“ぶりだったか、その話は、またいずれ!
「ぺぱぷんたす」005 2,300円(小学館)
紙で遊びながら、想像力を膨らませ、工夫したり、創造する喜びを味わえる、そんな体験型ムックの第5弾。
自分の手で、めくったり、ちぎったり、切ったり、折ったり……。
「紙でできること、紙だからこそできること」をテーマに、毎号、豪華なアーティストが大集合。
19種類の手触りの違う紙、表紙や付録の特殊な加工や印刷、日本を代表するブックデザイナー、祖父江慎さんによるアートディレクションにも注目です!
『ぺぱぷんたす』編集長・笠井直子
息子ふたり、猫二匹、ウーパールーパーとのドタバタ暮らし。余裕のある生活に憧れるもゆっくりできない性分。20年ほど女性誌を編集した後、幼児誌の編集に携わり、2017年『ぺぱぷんたす』を立ち上げ。帰宅後10分でつくる料理のマンネリ化が、今最大の悩み。