危険行為1:抱っこひも運転
nullまず、自転車は道路交通法では「車両」(軽車両)の扱いとなるので、そのルールも、道路交通法で定められています。
自転車の規格にもよりますが、子どものお座りが安定して自転車の前に装着されているチャイルドシートに乗せられるようになるのは、だいたい1歳前後。それまでの移動手段に困って、仕方なく写真のように抱っこひもに子どもを入れたまま走行しているお母さんが見受けられますが、これは認められていません。
この点は、都道府県の「道路交通法施行細則」によって細かく規定されています。
基本的に自転車は、運転者以外の人を乗せるのは違反となりますが、都道府県の定めるでは一定の条件を満たした場合に子どもを乗せることが認められています。その条件に「おんぶ」は含まれていますが、「抱っこ」が含まれていないのです。
都道府県の「道路交通法施行細則」の一例をあげますと
・東京都・・・運転者は幼児1人を子守バンド等で背負って運転できる。
・神奈川県・・・幼児1人をひも等で確実に背負って16歳以上の者が運転する場合は認める。
・埼玉県・・・運転者がおんぶひもで4歳未満の幼児を背負うのは認められている。抱っこは抱っこひもを使った場合でも認められていない。
・千葉県・・・16歳以上の運転者が幼児1人を背負い確実に緊縛して、自転車に乗車する場合を認める。
・静岡県・・・16歳以上の運転者が4歳未満の子ども1人をひも等で確実に背負っている場合は認められている。
(全て2018年2月22日現在)
ぜひ、お住まいの都道府県のホームページの法律を調べてみてください。
さらに、谷田貝さんは、「抱っこひも運転」の危険性を以下のように指摘しています。
「抱っこひもに子どもを入れたまま運転する際、運転者とハンドルの間に子どもの頭があることで、進行方向を変えたり、バランスをとるのが難しくなります。また、転倒時には子どもが大きな衝撃にさらされることも想定されるため、大変危険です。
お母さん達も“それぞれの事情”を抱えていると考えられますが、あくまでも違反行為であることを念頭に置いてください」(以下「」内、谷田貝さん)
危険行為2:前後のチャイルドシート乗せ&おんぶの4人乗り運転
null子どもをおんぶしたままの運転について谷田貝さんは、「転倒の際の衝撃などを踏まえれば、先に述べた抱っこの運転と同様に危険」と話します。
「やむを得ず子どもを背負って自転車の運転をする場合は、おんぶを正しくできているか、子どもと背中がきちんと密着した状態となっているかが大切なポイントとなります。子どもが嫌がって暴れたりしたとき、バランスを崩しやすいため、くれぐれも注意して運転してください」
一方で、谷田貝さんが「大きな法律違反で、きわめて危険な行為なので、絶対にやめてください」と警鐘を鳴らすのが、小さな赤ちゃんをおんぶして、前と後ろのチャイルドシートにそれぞれ子どもを乗せる“4人乗り走行”。バランスを崩して転倒したり、事故に遭ったときに、より被害を受けやすいのは運転手より子どもです。
上の写真では、人形で再現しましたが、各都道府県の細則でも、このような4人乗り走行は認められていません。
危険行為3:片手に傘をさしたままの運転
nullご存じの方も多いと思いますが、片手で傘をさしたままの運転は禁じられています。罰金が科せられることもあり、子どもを危険にさらす行為だといいます。
「雨の日、子ども乗せ自転車で傘差し運転をした場合、
(1)片手運転でバランスを崩すリスク
(2)視界が悪くなるリスク
(3)スリップのリスク
(4)とっさの場合のブレーキがかけられないリスク
の4つのリスクが高まります」(谷田貝さん)
雨の日に保育施設などの送り迎えをする際には、できるだけ徒歩通園が好ましいですが、そうも言っていられない家庭も多いのではないでしょうか。雨が降ったらレインコートの着用、子ども用の席にはレインカバーの装着をするといった工夫で乗り切りましょう。
危険行為4:自転車専用レーンの逆走
null自転車は軽車両ですから、原則左側通行ですが、まだ右側通行をしている自転車も見受けられます。中には、自転車専用レーンの逆走例も……。
「自転車専用レーンで逆走した場合、対向車とすれ違うために、一方が車道にはみ出る形になります。きちんと左側運転をしている相手を危険にさらすことにもつながります。万が一事故が起こった場合、右側方向をした運転者が“加害者”となるリスクがありますので、左側通行を徹底しましょう」(谷田貝さん)
危険行為5:子どもにヘルメットを着用させない
null自転車事故において、子どもにとって最も注意すべきが頭部の負傷。
現状では、幼児・児童を自転車に乗せる際のヘルメット着用は、道路交通法で“努力義務”とされています。
谷田貝さんは、ヘルメットの重要性について以下のように語っています。
「毎日、事故もなく平穏に過ごしていると“ヘルメットは本当に子どもの頭を守ってくれるのか?”という点に疑問を感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、ヘルメットに用いられている発泡スチロールのウレタンは、子どもの頭部を事故や転倒の衝撃から守ります。
講習会で、ヘルメットの素材の中に生卵を入れて落として割れないというデモンストレーションをすると、みなさんに納得して頂けるのですが……」
基本的にヘルメットは『SGマーク』がついているものを選ぶことが推奨されているそう。
最近ではヘルメット購入の補助金を出している自治体もありますので、まだ購入していない家庭では、自治体の窓口で補助の有無を確認してみましょう。
危険行為6:欠損のあるヘルメットを用いている
null最後に、忘れがちなのが、落としたり、ぶつけたりして衝撃を加えたヘルメットの使用継続。
「これは意外と知られていないことですが、一度大きな衝撃を加えたヘルメットは、一見問題がなさそうに見えても目に見えないキズがついて、衝撃を吸収する機能が著しく落ちている場合がありますので、必ず買い替えてください」(谷田貝さん)
ヘルメットは落とさぬように大事に扱い、子どもの頭のサイズに合わせて買い替えることも大切です。
以上、6つの危険行為についてご紹介しました。
子どもを乗せての自転車移動は時間の短縮になりますし、行動範囲も広がりますが、“もしも”の事態を想定して安全運転を心がけたいものです。
【取材協力】
谷田貝一男(やたがいかずお)
一般財団法人日本自転車普及協会 / 自転車文化センター学芸員。各地の自転車通行環境や利用状況の調査を基にして事故発生原因と安全利用方法を検討し、その結果を講演や執筆等を通じて広報する活動を行っている。
【参考】
※ 本記事は2018年2月現在の情報です。