育児休業中に退職・転職・就労したら給付金はもらえない?
null育児休業を取る前から退職・転職を決めていた場合
育児休業を取る前から、復職せずに退職や転職を決めている場合は、育児休業給付金はもらえません。
というのも、育児休業給付金は、労働者と会社が納める雇用保険料から支払われています。この制度は、休業しても元の会社に復職し、働き続けてもらうための「雇用継続給付」のひとつなので、最初から退職や転職を予定している人は対象外となります。
もともと退職や転職の予定があったにもかかわらず、不正な手段により受給した場合、不正受給した金額の3倍の額を納めるなどの罰則が設けられています。もし、支払いを怠った場合、財産が差し押さえられる場合もありますので、くれぐれも“ズル”はしないようにしましょう。
育児休業中や休業期間終了時に退職・転職した場合
復職するつもりで育児休業を取得したものの、パートナーの転勤や家族の病気など何らかの事情が生じ、育児休業中や休業期間終了時に退職・転職しなければならなくなった場合は、給付金が支給されます。
育児休業に入る時点で退職する予定があったか、育児休業に入る前は復職するつもりでいたかが、受給できるかどうかのポイントになります。
育児休業中の“いつ”退職したかで、給付金額が変わる
復職するつもりで育児休業を取り、給付金を受給した場合、途中で退職や転職をしても、それまで受給した育児休業給付金を返還する必要はありません。
ただし育児休業給付金は、退職日を含む支給単位期間(1カ月単位)とそれ以降は支給されません。ただし、退職日が支給単位期間の末日の場合、退職日を含む期間も支給されます。つまり退職日によって、育児休業給付金の支給額に1カ月分の差が出てしまいます。退職・転職をする際は、タイミングも重要です。
また、支給単位期間の途中で1日の間もあけずに転職し、引き続き育児休業を取得する場合は、転職後の事業主からの支給申請により、支給対象となりえます。
8月31日付けで退職した場合、④の期間(8/15~9/14)は支給対象となりません。ただし、直前の③の期間(7/15~8/14)までは支給対象となるため、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出の際、併せて③の期間(7/15~8/14)までの支給申請書を同時に提出してください。
もし、9月14日付で退職した場合は、④の期間(8/15~9/14)まで支給対象となります。「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出の際、併せて④の期間(8/15~9/14)までの支給申請書を提出してください。
図:厚生労働省作成資料「第11章 育児休業給付について」P125より作成
また、育児休業中に転職をする場合、タイミングによっては、前述の通り、受給金額に大きな差が出てしまいます。
さらに自治体によっては、保育園の入園内定が取り消しになる可能性も。育休中に転職することになった場合は、自治体にも相談しておきましょう。
育児休業中に働いた場合、 給付金はもらえない?
育児休業給付金受給中に、会社から「とても忙しいので、3日間でいいので働いてもらえないか」などと頼まれ、働いた場合でも、給付金は支給されます。
育児休業中の就労が、臨時・一時的であって、就労後はもとの育児休業に戻るのであれば、「職場復帰」とは認められず、あくまで「休業中の臨時・一時的就労」とみなされます。そのため、支給要件を満たせば支給対象となるわけです。
ただし、こういった場合、支給申請書の「支払われた賃金額」欄への記入を必ず行ってください。ただし、支給単位期間において、就業日数は10日(10日を超える場合は、就業時間が80時間)以下でなければなりません。
注意しないとならないのは、育児休業期間中に働き、それに対する賃金が支払われた場合です。
1支給単位期間において、休業開始時賃金日額(※1)×支給日数(※2)の80%以上の賃金が支払われた場合は、育児休業給付の支給額は0円となります。
80%に満たない場合でも、収入額に応じて、支給額が減額される場合があります。
※1・・・休業開始時賃金日額は、原則として、育児休業開始前6カ月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除く)を180で除した額。
※2・・・1支給単位期間の支給日数は、原則30日(ただし、育児休業終了日を含む支給単位期間については、その育児休業終了日までの日数)となる。
いかがでしたか? 育児休業給付はあくまで、復職を前提に育児休業を取る人のための支援制度です。しかし、やむを得ず復職できなかったり、途中で働かないとならない場合でも、タイミングによっては一部給付を受けられるので、あきらめずに確認してみましょう。
【1】基本的な仕組み、支給期間や金額などを詳しく解説
【2】申請手続きの方法、必要な書類などをチェックしよう
【3】復職に間に合わない!延長を申請するときの手続きについて
【4】育児休業中に退職・転職・就労することになったら?
文・構成/嶋田久美子
【取材協力・監修】
井戸美枝
CFP(R)、社会保険労務士、社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。
講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。経済エッセイストとしても活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞に連載をもつ。
近著に『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP社)など。