初潮がくるのは、赤ちゃんを産めるからだになるということ
nullまず初潮がくるのは、娘のからだの状態が、どうなったときが目安なのかをお聞きしてみると……。
「まずは生理のしくみをおさらいしてみましょう。
生理というのは、赤ちゃんを産むための準備として、月に1回の排卵に合わせて子宮の内膜を厚くし、受け入れ態勢を整えたものの、卵子が受精しなかった場合にはがれて体外に排出されるものでしたよね?
ということは、『赤ちゃんを産めるからだになったよ』という、からだの成長が認められることが、初潮がくる条件となるわけです。 つまり、体格が大人に近づく=大きくなる必要があります。
成長期のお子さんは、1年で8cmくらい身長が伸びるときがあるのですが、この成長を経ると、だいたい1年半後くらいに初潮がくることが多いですね。 身長以外の目安としては、からだが丸みを帯びてくる、乳房が大きくなってくる、陰毛が生えてくる、などの変化も目安になります」(高尾先生、以下同)
何歳までに初潮がくれば安心?
null子どものからだの成長には個人差がありますよね。発育を見ていて、我が子は、見た目のからだの変化があまりないのかしら?と心配になる方もいるのではないかと思います。
「何も見た目の変化がない場合は、婦人科を受診してもいいかもしれませんね。細い体型だと、脂肪量が少なく、生理がこないということがあり得ます。ある程度脂肪量が増えて、脂肪細胞からレプチンというホルモンが分泌されないと、初めての生理はこないのです。
ただ、周りの子どもたちに初潮がきたからと心配になって慌てる必要はあまりなく、18歳までに初潮がきていればいいと、考えられています」
現在の初潮を迎える平均年齢は、およそ10〜14歳といわれています。18歳までにくればいいという、意外な長さに驚きました。
本格的な「運動習慣」がある子どもに限っては…
null18歳という、おおまかな基準はあるものの、15歳までに初潮がきたほうがいい人もいると高尾先生。
「本格的な運動習慣のあるお子さんに限っては、15歳までに初潮があるのが望ましいと考えます。なぜなら、生理周期によって分泌される女性ホルモンのひとつ、エストロゲンには骨を強くするという働きもあるから。
成長期のアスリートにおける骨折のピークは16歳と報告されています。エストロゲンが分泌され始めて、骨の長さの伸びが止まり(つまり、身長の伸びが止まるということです)、その後にやっと骨の強度が高くなっていきます。
エストロゲンが分泌されていない時期は、まだ強度の高い骨ではなく、衝撃によってグニャっと曲がってしまうような若木骨折をしやすいわけです。このような骨折は、競技人生にはマイナスになってしまいます。
強度の高い運動をするお子さんで、生理がなかなか来ないようであれば、婦人科で早めに相談してみるといいでしょう」
なるほど。例外もあるわけですね。子どもの見た目の変化、生活面なども含めて、よく観察していくことが大切ですね。
「初潮がこない」ときに考えられること
null大人と違って、子どもの場合、初潮前に婦人科で健診や検診などを受けることは、ほぼありませんよね? 医学的には、初潮は18歳くらいまでにくれば大丈夫だというものの、その前に受診したくなる親の気持ちもあります。
そこで、先生にその必要性をお聞きすると……。
「確かに心配されるお気持ちはとてもよくわかります。18歳になっても初潮がこないという場合、卵巣がないなどの身体的理由のこともあるのですが、早期にそれが見つけられたからといって、実際のところ、何か治療法があるわけでもないんですね。
心配で受診された場合、エコーで子宮や卵巣があるかどうかの確認と、ホルモンの分泌を確かめる血液検査ができますが、婦人科で行えるのは、実はそのくらいなんです。
なので、まずはちゃんと成長しているのか? を確認することが、とても大事です。
学校では、すくなくとも1年に1度は身長と体重を計測しているかと思います。その結果をグラフにするなど、ご自身で見やすく管理することなどを、習慣にしておくといいかもしれませんね。母子手帳にはグラフが載っていますから」
まだお子さんが小さいという方も、子どもはあっという間に大きくなっていくもの。将来、娘が迎える変化の目安や、家庭で習慣づけておくといいことなど、心に留めておいてほしいなと思います。
次回は、大人と子どもの「生理周期と日数」の違いについてお届けしていきます。
イラスト/ Naho Ogawa
産婦人科医 高尾美穂
産婦人科専門医であり、婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。Gyne Yoga主宰。
「すべての女性によりよい未来を」と、TVや雑誌をはじめ、ツイッター(@mippolin78)やstand.fmなどのご自身のメディアにて、正しい知識や知っておくといいことなど、精力的に発信されている。