起床後~通勤・外出時に有効な「朝の猛暑対策」
null●朝食のおすすめは…「歩行距離」による!?
朝食をしっかりとることは、体水分維持に極めて重要ですが、外出後に歩く距離(運動時間)が長く汗をかきやすい場合は、塩分(ナトリウム)を含んだみそ汁やスープがおすすめです。
水分をナトリウムと一緒に摂取すると、体内での保水効果が高く、大量の発汗による脱水のリスクを軽減することが期待できます。
●「日傘」で直射日光を避ける!
日射(輻射)により、太陽からカラダへ熱が移動するので、日傘などでこれをさえぎると、多少は体温の上昇を抑えることができます。
ただし、日傘は太陽からの輻射熱を防ぐだけなので、これでまったく安心というわけではありません。そのほかの対策とセットで考える必要があります。
●朝の通勤電車に乗るときのコツは「早めに家を出る」!
激しい運動をすればするほど、筋肉でたくさんの熱がつくられ、深部体温が上がってしまいます。つまり、電車に乗り遅れそうになって駆け込んでしまうと、危険であるだけでなく、それだけ深部体温が上がってしまうことになります。
そのため、朝は余裕を持って家を出て、産熱量を上げないように心がけましょう。
最も気温が上がるピーク時に有効な「昼の猛暑対策」
null●外まわりの移動前は安静にして「体温を下げて」おく!
運動をすると深部体温が上昇するので、運動前に高い状態だと、より深部体温が上昇して暑熱ストレスが大きくなります。
外まわりなどで、どうしても歩いたり、カラダを動かしたりする必要がある場合、その直前は涼しい場所で安静にし、深部体温を低くしておくことで、暑熱ストレスを軽減できます。
●よく歩く日の水分補給には「スポーツドリンク」が有効!
脱水予防の水分補給の場合、飲んでから吸収されるまでの速さや、吸収後すぐに尿として排泄されずに体内に残ることが重要です。
ナトリウム飲料に少し糖が入っていると、吸収速度と保水作用が高くなります。スポーツドリンクには十分な量の糖が入っており、長時間運動前のエネルギーと水分の補給におすすめです。
●猛暑対策として「昼寝」をすると深部体温は少し下がる
昼寝中は筋肉の活動レベルが低くなります。そのため、筋肉でつくられる熱の量が減り、深部体温を下げるように働きます。また、眠りに入ると一瞬汗が出ることがありますが、これにより熱の放散がうながされて深部体温が低下します。
暑さでバテ気味のときは、昼寝で回復を図るのもひとつの手かもしれません。
日暮れ~就寝までに有効な「夜の猛暑対策」
null●帰宅したら「汗で濡れた服」を着たままクーラーに当たる!
帰宅したらすぐに着替えたいところですが、歩いて帰宅した直後は深部体温が上がった状態であることが考えられます。
深部体温が高いと、せっかく着替えてもまた汗をかいてしまう可能性が高く、汗をかいている状態でクーラーに当たったほうが、気化熱で深部体温を下げやすいので、汗が乾いてから着替えるのがおすすめです。
●就寝前に入浴する場合は「時間短め」or「温度低め」!
入浴によって手足の温度を上げることで、睡眠の質が向上する可能性がありますが、一方で急激に皮膚温や深部体温が上昇します。入眠には深部体温の低下が重要であるため、寝つきが悪くなる可能性も。
入浴後は涼しい場所で深部体温を下げてから寝るか、入浴時間を短くしたり、お湯の温度を少し下げたりするとよいでしょう。
●熱帯夜のなかで眠るときは室温を下げても「手足は冷やすな」!
室温が高すぎると睡眠の質が低下することが報告されているので、就寝時はクーラーを使って快適な温度に設定しましょう。
ただし、手足の温度が低下することで、逆に睡眠の質が低下してしまう可能性が指摘されています。冷え性の女性の場合は特に注意が必要です。靴下をはくなど、手足を冷やしすぎないよう工夫しましょう。
今回は一部のみの紹介でしたが、『猛暑対策BOOK』では、この他にもさまざまな対策を掲載。さらに、「食生活の猛暑対策」「運動時の猛暑対策」「高齢者や子ども・ペットなどを守る猛暑対策」など、知っておきたい知識ばかりです。
全3回のシリーズ、次回(最終回)は「猛暑対策のよくある勘違い」についてご紹介します!
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体温調節の専門家が「水分補給」「冷却」「暑さに慣らす」「冷やす」の観点から、熱中症対策をはじめ、猛暑によって引き起こされるカラダのさまざまな変化や危ない事例を取り上げ、夏をできるだけラクに、快適に、安全に過ごすための科学的ノウハウを公開。
屋内外をいったりきたりする働き盛り世代や、屋外でのスポーツ愛好家、加齢とともに体温を感知する機能が衰える高齢者、体温調節機能が未発達な子ども……猛暑から自分や大切な人を守るために、必携の一冊です。
藤井直人(ふじい なおと)
筑波大学 体育系 准教授。博士(学術)。専門分野は運動生理学。
1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。これまでの著書に『ランナーのカラダのなか 運動生理学が教える弱点克服のヒント』(小学館)がある。