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猛暑対策のキーワード「深部体温」って知ってる?最新科学で、災害級の暑さを乗り越える!

もはや「災害級」ともいえるような暑さに毎年のようにさらされている日本列島。有効な猛暑対策とは、いったいどんなものなのでしょうか?

7月に発売したばかりの新刊『猛暑対策BOOK』(著/藤井直人・小学館刊)より、厳しい猛暑の時代を乗り切るために知っておきたい科学的知識を全3回でご紹介するシリーズ連載。第1回は「深部体温(しんぶたいおん)」というキーワードを軸に、藤井先生が解説する「猛暑対策の基本」をみていきましょう。

猛暑対策で特に重要な「深部体温」って?

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●カラダの表面と深部の体温はビミョーに違う

外側の「皮膚温」と中心部の「深部体温」は違います。

人間の体温は、外側の「皮膚温」と中心部の「深部体温」に分類されます。皮膚温は環境温の変化により大きく変化しますが、深部体温は多少環境温が変化しても一定に保たれるように調節されています。

カラダの機能や運動パフォーマンス、熱中症には皮膚温と深部体温の両方が関係しうるのですが、深部体温の過度な上昇は命にかかわるので、深部体温への対策がより重要になります。

●暑さのなかでカラダはどうなる?

1:汗をかくことは体温調節の命綱

汗が皮膚表面で蒸発すると気化熱を奪い、これにより体温が下がります。このように発汗は人間の体温調節に極めて重要な役割を果たしています。また、体温調節に作用せずに流れ落ちる汗を「無効発汗」といいます。

この猛暑のなか、カラダでは何が起きている…?

2:皮膚血流量と心拍数がアップ

体温が上昇すると、皮膚血流量も増加。深部の熱を体表に移動させ、外気への熱放散をうながします。皮膚に大量の血液を送る必要があるため、心拍数が上がり、心臓から多くの血液が押し出されます。

3:呼吸量も体温と一緒に増える

呼吸も体温と密接な関係にあります。じっとしていても息が上がっている場合は、深部体温がかなり上昇している可能性があります。

さらに…暑くなると脳の血流量が低下する!

深部体温が大きく上昇すると、呼吸が活発になり、体外への二酸化炭素の排出が増加して血液の二酸化炭素濃度が低下します。これは脳の血流量の低下をもたらし、この反応が過剰になると、めまいや失神につながります。

効率的に体温を下げるには、どうしたらいい?

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●冷やすとよい部位「正直レビュー」

カラダの特定の部位を冷やすことで体温が下がるのかを、部位別に解説します。

基本的に、冷却効率( 深部体温の低下速度)は冷やす面積に比例してよくなるため、深部体温を下げるには、部位というよりは冷やす面積を大きくすることが重要。ですが、制限のある状況の場合に効率的に体温を下げるには、こちらの解説を参考にするとよいでしょう。

カラダの一部だけを冷やす場合、その効果のほどは…?

【頭・顔】頭や顔は温度感受性が高いといわれており、感覚に与える効果がほかの部位より大きいと考えられています。

【首】首を冷やすと脳へ供給される血液の温度が下がり、脳が冷えるといわれることもありますが、そのような効果はありません。ただし、感覚に対する効果は高い可能性があります。

【お腹】ほかの部位と比べて冷却効率がよいわけではないのですが、上肢・下肢など広範囲を冷やせない場合は、冷やしてもよい部位です。

【背中】冷却効率がよいというわけではないのですが、面積が広い部位でもあるので、お腹と背中を冷やすアイスベストを着用すれば、それなりの冷却効果はあります。

【太もものつけ根】太い血管を冷やすと、そこを通る血液が冷やされ、冷却効果が高い気がしますが、首の冷却と同様、そのような効果はありません。

【脇】首や太もものつけ根と同じように、脇を冷やしたからといって冷却効率がよくなるわけではありません。

【手のひら】動静脈吻合(ふんごう)という特殊な血管があるので、ほかの部位より冷却効果が少し高い可能性が。ただし、手を冷やすだけでは、深部体温を急速に下げることはできません。

【足先】手のひらと同じように動静脈吻合が多くあるのですが、やはり足先だけ冷やしても、大きな冷却効果は期待できません。

●重度の熱中症が疑われるなら…?

重度の熱中症(熱射病)が疑われる場合には、1秒でも早く深部体温を39℃以下に下げることが最も重要。そのためには、アイスバスなどで、カラダの大部分を冷水に浸ける方法が最も有効です。

カラダの一部を冷やす方法では、急激に深部体温を下げることはできません。冷水や氷水を用意できない場合は、冷たい水で濡らしたタオルをカラダ中に貼りつけ、1~2分おきにタオルを交換し続けて冷却効果を落とさないようにします。

熱中症の症状を知っておくのも、大事な猛暑対策の1つです。

あわせて、熱中症については、図のような症状に要注意!

「日本救急医学会」が使用している熱中症の分類区分では、重症度に応じてⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度という区分を用いています。下記の【熱中症の分類】も見ながら、具体的にどのような症状であるか理解を深めましょう。

【熱中症の分類】

熱失神:めまいや一過性の意識消失

熱けいれん:痛みをともなうけいれん

熱疲労:脱力感・倦怠感・頭痛・吐き気などの症状

熱射病:意識障害と高体温(深部体温40℃以上)の状態

日本では近年、熱中症による救急搬送者数が増加し、毎年夏になると熱中症での死亡事故が頻繁に報道されています。熱中症を重症化させないためには、熱中症を正しく理解し、適切に対応することが大切です。


『猛暑対策BOOK』では、より詳しい「カラダの体温調節の仕組み」や「熱中症の注意点」、暑さにカラダを慣らす「暑熱馴化」というキーワードについても解説されているので要チェックです。

そして、次回の記事のテーマは「朝・昼・夜それぞれの効果的な猛暑対策」! 今回ご紹介した深部体温という概念を理解した上で読むと、さらにわかりやすい内容になっていますよ。

『猛暑対策BOOK ~日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!~』(著/藤井直人・税込み1,430円・小学館)

猛暑から身を守る最新科学の知恵が満載!

体温調節の専門家が「水分補給」「冷却」「暑さに慣らす」「冷やす」の観点から、熱中症対策をはじめ、猛暑によって引き起こされるカラダのさまざまな変化や危ない事例を取り上げ、夏をできるだけラクに、快適に、安全に過ごすための科学的ノウハウを公開。

屋内外をいったりきたりする働き盛り世代や、屋外でのスポーツ愛好家、加齢とともに体温を感知する機能が衰える高齢者、体温調節機能が未発達な子ども……猛暑から自分や大切な人を守るために、必携の一冊です。

藤井直人(ふじい なおと)

筑波大学 体育系 准教授。博士(学術)。専門分野は運動生理学。

1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。これまでの著書に『ランナーのカラダのなか 運動生理学が教える弱点克服のヒント』(小学館)がある。

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