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フロスは歯磨き前or後?歯周病の治療と効率よく予防する方法【オトナのための歯科相談室#9】

口臭の原因となるだけでなく歯が抜け落ちてしまうこともあるという「歯周病」はどうすれば防げるのでしょう? 今回も、地域密着型の歯科医院の院長として、お子さんからご高齢の方まで、歯の健康管理と治療を行ってきた歯科医の山本伸彦先生による大人の歯科相談室を開設! 連載9回目は、「歯周病の治療と予防」について教えていただきました。

まずは歯周病の診察から

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「歯周病の治療をする場合、まずは歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の隙間がどこまで深いかというところを検査します」と話すのは歯科医の山本伸彦先生。

歯周ポケットとは、歯と歯茎の間がプラーク(歯垢)の細菌により炎症を起こして深くなった溝(歯肉溝)のこと。健康な歯茎の場合、この溝の深さは2~3mm程度ですが、プラークの細菌により歯肉が炎症を起こし腫れていくと溝はどんどん深くなり、歯周病となります。

「歯周ポケットの深さが5mm、7mmとなると、歯茎が見かけ上も腫れていますから、まずはそういう深い溝を健康な状況にするために歯石を取るスケーリング、あるいはルートプレーニングと呼ばれる処置を行います」(以下「」内、山本先生)

歯の根の表面をツルツルな状態に戻す治療法とは?

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ルートプレーニングとは、「スケーラー」という道具を使って歯の根っこ(root)の汚染セメント質を除去し、表面を本来のツルツルで滑らか(plane)な状態に戻す治療法のこと。溝の奥深くまでしっかりきれいにするのに多少の痛みを伴うため、治療は麻酔をして行われます。

とはいえ、歯周病の治療が麻酔で済むなら、まだいい方……。歯周病が進行して歯周ポケットが深くなっている場合、歯石や感染した根の表面を確認しやすくするため、歯茎を切開してプラークや歯石を徹底的に取りきるという外科的な歯周病処置をすることも。また、歯のグラつきが進行してしまった場合には、やむなく抜歯しなければならないこともあるのです!

「ただ、今は再生医療が進んできて、根の表面をもう一回ツルツルで細菌感染のない正常な状態に戻してからエムドゲインという薬を添加することで、ある程度骨の量を戻すこともできるようになりました。そのような再生治療を積極的にやられている先生もいますから、調べてみるといいでしょう」

フロスを正しく使って歯周病を予防しましょう

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歯周病を防ぐには歯ブラシに加え、デンタルフロスや歯間ブラシ、マウスウォッシュなどの補助的なアイテムを取り入れるのがおすすめ! より効率よく歯周病を予防することができます。

「フロスを使う際、歯と歯の間に詰まった汚れをフロスでパチパチ弾くだけで終わらせる人が多いようですが、フロスはブラシでは届かない歯の側面を磨く道具です。フロスを歯と歯茎の隙間の奥の痛くないところまでそーっと入れ、歯の側面に引っ掛けるようにして上下に動かし、歯垢を取り除きましょう」

フロスは歯磨きの前に使うのが正解! まずは、フロスを指先から肘までの長さに切り、両手の中指にグルグルグル巻いて、1箇所通す毎に少しずつずらしていきましょう。常にカバンに入れておくと、出先でも使えて便利です。

ただし、これは前提条件として歯医者に定期的に通ってチェックしている方に健康を維持していただくための予防法。何年も歯医者にかかっていない方は、必ず歯石がついていますし、状況が悪いところもあるかもしれませんから、まずは歯医者に行ってチェックしてもらう必要があります。

「歯周病を防ぐには、お皿と同じ感覚で、使ったらその都度磨いてあげる、お掃除してあげることが大切です。歯も大事な食器。インプラントにしたら1本40万、それが28本もあるんですから、自分の歯の持っているポテンシャルや価値を十分認識していただいて、大事にしてほしいですね」

歯周病で早産や肺炎の危険性が高まる⁉

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「妊産婦の場合、歯周病があると例えば低出生体重児の出産、つまり早産になる可能性があるといわれています。これは血中に入り込んだ歯周病菌が胎児に影響を与えてしまうため。歯周病菌は、心内膜炎を起こしたり、糖尿病を悪化させたり、高齢者が食事中に誤嚥したら肺炎になることもあるといわれています」

全身疾患への影響もある歯周病は、甘く見ないで早めに対処することが大切。まずは自分がかかりやすい先生、話がきちんと伝わる先生を探し、「歯茎からたまに出血する」「歯茎がちょっと腫れているような気がする」などの症状を伝え、しっかりチェックしてもらいましょう。

「歯医者へ行くのが床屋や美容院と同じレベルの習慣になるといいのかな。歯医者の場合、辛い状態で関わりを持つと治療がずっと続くんです。でも、ある程度落ち着いたときに関わりを持っていくと、いわゆる“快適”“気持ちいい”“ツルツル”“ピカピカ”という状態になり、楽しい気持ちになれる場所なんです」

 

歯周病は怖い病気。自分の歯を残すためにも、3カ月に一度あるいは半年に一度は歯医者へ行って自分の歯と歯茎の現状を把握しておく方がよさそうですね! 次回は、歯の黄ばみについてご紹介します。

 

取材・文/清瀧流美

山本伸彦
山本伸彦

やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医

都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。

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