どんな人が虫歯になりやすい?
null「虫歯にはだ液の量や成分、歯並びなども関与しているのですが、それを理解した上できちんとケアできている人というのは、虫歯になりにくいですね」と話すのは歯科医の山本伸彦先生。
前回ご紹介したとおり、虫歯はミュータンス菌という虫歯の原因菌が歯に残った食べかすなどの糖分を餌として、歯が溶ける酸をつくり出すことでできます。では、どんな人が虫歯になりやすいのでしょう?
「虫歯になりやすい方は、虫歯になるような生活習慣や歯磨き習慣をもっています。習慣を変える努力をしない限りは、確実に虫歯は進行していきます」(以下「 」内、山本先生)
例えば、疲れて寝てしまい歯磨きをしないまま朝を迎えてしまう……というのは、虫歯になる生活習慣。食べたり飲んだりしたまま放置する時間が長ければ長いほど、口の中の環境はどんどん悪くなっていくのです。
歯を磨かずに寝てしまうとどうなる?
null口の中の健康は、だ液によって維持されています。だ液には虫歯を防ぐ「再石灰化作用」があり、歯に付着した汚れが原因となって出される酸を中和して、歯の表面のエナメル質を元の状態に修復することができるのです。
「ただし、あくまでもこれはきれいな歯並びの方の場合。多くの方は、すべての歯がきれいに並んでいるわけではありませんから、歯についた汚れを放置すればするほど、細菌が繁殖してプラーク(歯垢)になっていきます」
歯を磨かず眠るのは最も危険!
プラーク1mgの中には、脱灰(歯が溶けること)を引き起こすミュータンス菌(虫歯菌)や乳酸菌などを含めた1億個もの細菌が存在しています。プラークがすぐに取り除かれれば、歯は再石灰化することもありますが、一晩中プラークがついたままでは、この修復作用が妨げられてしまうだけでなく、さらに脱灰を早めてしまう危険もあります。
「しかも、睡眠中のだ液の分泌量は、活発に噛んだり食べたりしているときに比べ、ぐんと少なくなります。やはり歯を磨かずに寝てしまうのは、いちばん危険といえるでしょう」
歯磨きは何分したらいい?
null「例えば、朝ごはんを食べて、ケチャップやソースがついたお皿を“同じ人が使うから洗わないでお昼もまた使えばいいよね”ということはないですよね? それは歯も同じこと。食事の都度、きれいにする必要があるのです」
虫歯になりにくい環境をつくるには、日頃のケアが大切です。一日の仕事や家事を終えて寝落ちしてしまうのも、つわりでどうしても口の中に物が入れられない時期があるのも仕方がありませんが、翌朝きちんとリカバリーしなければなりません。
「私は電動歯ブラシを使っていますが、毎回5〜6分は当たり前に磨いています。歯を磨かずに寝てしまった翌朝は、さらに時間をかけて、いつも以上にていねいに細かくケアしてあげるといいでしょう」
では、実際どのように歯を磨いたらいいのでしょうか?
「先ほどのお皿でいえば、手洗いするときは手元で洗っていますよね? そのため、ついた汚れも汚れが落ちてきれいになっていることを、目で見て実感できるのです。歯磨きもイメージは同じ。
自分の歯並びをボコっと手元に取り出し、歯ブラシを1本渡されて“では、これをキレイにしてください”と言われたら、ここにもここにも汚れがついていると気がつきますし、“ブラシの角度はこうかな?”とか、“隙間には小さい歯ブラシを使おうかしら?”などと考えながら磨くじゃないですか? そういう感覚で磨いてほしいのです」
確かに、自分の歯の模型を磨くようにイメージするというのは分かりやすい! そして、正しい歯磨きを身につけるには、鏡を見ながら意識して練習する必要もあります。最初は時間がかかりますが、ブラシの動かし方や磨きにくい場所を認識すると、次第に意識しないで習慣的に動かしても正しく磨けるようになります。良い習慣を身につけて、口の中を健康に保ちましょう。
次回も引き続いて「大人の虫歯」をテーマに、進行度合いと痛みとの関係についてお届けします。
イラスト/菜ノ花子 取材・文/清瀧流美
【取材協力・監修】
山本伸彦
やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医
都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。