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「虫歯」を放置したらどうなる?自然に治ることはあるの? 【オトナのための歯科相談室#1】

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子どもの歯磨きや歯科健診は一生懸命しているのに、自分のデンタルケアはおろそかになっていませんか? 大人の歯は、毎日歯磨きをしていても、つい日常に紛れてトラブルを放置しがち……。そこで、これまで地域密着型の歯科医院の院長として、お子さんからご高齢の方まで、歯の健康管理と治療を行ってきた歯科医の山本伸彦先生による大人の歯科相談室を開設! 

連載の第1回は、おかしいな?と思っても放っておきがちな「大人の虫歯」について教えていただきました。

虫歯の放置の原因は…大人は痛みが出にくい?

「子どもの虫歯がこの20年ほどで急激に減少している」というニュースをご覧になったことはありますか? 厚生労働省の「平成28年歯科疾患実態調査」によると、5歳以上10歳未満で永久歯に虫歯(治療済みを含む)のある子どもの割合は、1993年は36.3%でしたが、2016年は8.2%まで減少。23年間で子どもの虫歯率は大きく改善されています。

では、わたしたち大人はどうでしょう?

厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」データより抜粋したものを元にしたグラフ

同調査によると、25歳以上85歳未満の虫歯率は2016年も80%以上。特に35歳以上44歳未満では99.3%と、子育て世代の大人のほとんどに、虫歯があることがわかります。思い当たる人も多いのでは?

歯科医の山本伸彦先生によると、「大人の虫歯は、症状が特にない状態でじわじわ進行していくことがかなり多い」とのこと。たとえ痛みや黒ずみがなくても、大人の歯には虫歯が潜んでいるかもしれないのです。

虫歯を放置して勝手に治ることはある?

痛みもなく、黒ずみもない“隠れ虫歯”、放っておくとどうなるのでしょうか? 自然に治ることはないのでしょうか。

虫歯ができるしくみとともにみてみましょう。

虫歯の主な原因菌であるミュータンス菌は口腔内に存在します(ちなみに生まれたばかりの子どもの口腔内にはミュータンス菌は存在せず、親などを介して菌が子どもに移ってしまいます)。

ミュータンス菌は食べ物や飲み物に含まれる糖質をエサにして酸をつくります。

このようにして口の中が酸性に傾くと、歯が溶けてしまう「脱灰(だっかい)」が起こり虫歯になります。この「脱灰」を止められるのがだ液。だ液には虫歯を防ぐ「再石灰化作用」があり、酸を中和して歯の表面のエナメル質を元の状態に修復することができます

私たちの歯は食事のたびに「脱灰」と「再石灰化」を繰り返しています。虫歯はこの「脱灰」と「再石灰化」のバランスが崩れ、「脱灰」が優位になった結果、できてしまうものなのです。

「逆に、歯の表面がわずかに溶け出す程度の初期虫歯の状態であれば、ケアをきちんと積み重ねて“再石灰化”を優位にすることにより、虫歯の進行を止めてエナメル質を元の状態に戻すことができます」(以下「」内、山本先生)

とはいえ、これはあくまで初期虫歯の場合。そもそも私たちが初期虫歯かどうかを自己判別するのは難しいですし、虫歯になる人は虫歯ができやすい口腔環境にあるため、初期虫歯だから大丈夫と考えるのはとても危険。

万が一、初期以降の虫歯を放置した場合、進行して痛みが出たり、歯根部に膿が溜まったりして、最終的に抜歯することになってしまいます。

歯は体のほかの組織と異なり、自己再生ができません。初期虫歯を放置して、みなさんが虫歯と認識されているような、穴の開いて黒く見えるような状態になったときは、一生懸命磨いたからといって治ることはありませんから、すぐに歯医者さんへ行きましょう」

“隠れ虫歯”を見つけるには?

症状が出ない“隠れ虫歯”を見つけるには、定期的に歯科医院へ行き、チェックを受ける必要があります。

「歯に何のトラブルもないのに歯科医院へ行くのはちょっと……」と思う方もいるかもしれませんが、虫歯を早期に発見できれば治療も簡単に済みますし、健診の際にクリーニングやホワイトニングなどもしてもらえば、すこやかできれいな歯をキープすることができるのです。

「例えば、美容院は何か悩みがあるから行く場所というよりは、自分がもっときれいになれる場所というイメージじゃないですか。歯医者さんも美容院のように“悩みがあるから行くところではない”という感覚で捉えてもらえると、問題が大きくなってから慌てて行くということが少なくなると思います。

いまの歯医者さんの多くは、痛みを抑えるように努力しています。昔より治療のときに痛くないことが多いんですよ」

歯科健診はどれくらいの頻度で受けるべき?

「心のハードルをもう少し下げて、もっと気楽に歯医者さんへ行ってもらいたい」と話す山本先生。とはいえ、どのくらいのペースで行けばいいのか、迷いますよね。

「多くの方は3カ月に1回くらいのペースで受診されていますが、歯の健康に対する意識も高くて歯の状況もいい方の場合は半年に1回でも構いません。最低でも1年に1回は受診するようにしましょう」

通い続けるには自分と相性のいいドクターを見つけることも大切です。歯科医院によっては子どもと一緒に行けるところもあるようですから、育児に追われて自分の時間が取れないという方は、そのようなクリニックを探してみるのもいいかもしれませんね。

 

次回も「大人の虫歯」をテーマに、虫歯になりやすい人となりにくい人の違いなどをお届けします。

イラスト/菜ノ花子 取材・文/清瀧流美


 

【取材協力・監修】

山本伸彦

やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医

都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。

【参考】

厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」

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