歯周病ってどんな病気?
null歯周病は、細菌の感染によって歯の周りの歯茎(歯肉)が赤く腫れたり、歯を支える骨などが溶けてしまったりする細菌感染症の一種。多くの場合、痛みをほとんど感じないため、気づかないうちに進行してしまうこともあります。
「歯周病の場合、膿が出た、腫れた、出血したなどの症状が出たときは、全体的あるいは局所的に症状が重くなっている可能性があります」と話すのは歯科医の山本伸彦先生。
例えば、歯周病の症状のひとつに突然歯茎がボコッと腫れるというようなことがあります。これは歯茎の奥深くに潜り込んだ微生物が出られなくなり、一気に膿がたまって腫れてしまうため。歯周病の急性発作と呼ばれています。
「また、歯周病になると、歯茎に触ったりブラッシングしたりするだけで慢性的に血が出ることがあります。そのため怖くて歯磨きをしないという人がたまにいますが、それでは悪循環。必要以上に強い力で歯を磨いて血が出るのはケガですが、大して力を入れていなくても、じわじわと出血してブラシが真っ赤になるようなら、結構進んだ歯周病だと認識していただいていいと思います」(以下「」内、山本先生)
歯周病を放置すると、口臭が酷くなる、噛むと歯が痛くなる、歯が揺れるなどの症状が出始め、最終的には歯が抜けてしまいます。歯茎に違和感を感じたら、できるだけ早く歯科医に相談しましょう。
歯周病と歯肉炎はどう違う?
null健康な状態の歯茎は、美しいピンク色をしていて、表面にスティップリングとよばれるきれいな粒々が見えます。
一方、歯と歯茎の間の清掃が行き届かず、そこに多くの細菌が増殖してしまうと、歯茎は赤みを帯びて腫れ、スティップリングも消えてしまいます。
「このように歯茎だけに炎症が起こっている状態を“歯肉炎”、歯肉炎が進行して歯根膜や歯槽骨を含めた歯の周りにまで炎症が拡大している状態を“歯周炎”といいます。“歯周病”はこれらをまとめた総称。歯肉炎は歯周病の第一歩なんです」
ただし、単純な歯肉炎であれば、原因である歯の根元の汚れをきちんとコントロールすることで、きれいな歯茎を取り戻すことができます。歯周病を防ぐには、歯茎の異変にどれだけ早く気づけるかが重要なのです。
歯周病は歯を支えている骨を溶かす!?
null歯周病は、歯と歯茎の間にある歯周ポケットに入り込んだプラーク(歯周病菌などの細菌の塊。歯垢ともいう)や歯面に付着している歯石(プラークにミネラルなどが沈着して石のように硬くなったもの)が原因で起こります。
「歯石自体は歯周病の直接的な原因ではありません。例えるなら、歯石は海のテトラポットに付着した貝や海藻のようなもの。テトラポットって表面に無数の細かい穴が空いていて、そこに貝や海藻などがくっつくから、栄養も豊富で小魚がいっぱい集まるじゃないですか? 歯石も同じで、歯の表面にどんどん付着するため、細菌や微生物が自分たちの棲みやすい環境をつくって留まりやすいんです」
では、細菌が歯を支えている骨を溶かすのかというと、そうではありません。このようにプラークがたまって歯周病が進行すると、周囲の骨は、細菌や微生物が産生した炎症を引き起こす物質に反応し、感染により炎症を起こしている部位から遠ざかるように退いてしまうのです。
「丈夫で健康な骨を保つには、骨を溶かす“破骨細胞(はこつさいぼう)”と新しい骨をつくる“骨芽細胞(こつがさいぼう)”がバランスよく働くことが大切です。しかし、プラークにより歯茎に炎症が起こると、骨は感染から逃れるため、自らそこに破骨細胞を集めてしまうのです」
よく骨が溶けると言いますが、実は、骨自身が自分を守ろうとした結果、破骨細胞により骨が吸収され、最終的に歯がグラグラになってしまう……というのが歯周病の怖いところ!
次回は、歯周病の予防と治療についてご紹介いたします。
取材・文/清瀧流美
やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医
都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。