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夏の水分&塩分補給の落とし穴!「子供の熱中症対策」5つの要注意ポイント【夏の飲み物、どう選ぶ?#3】

例年、厳しい暑さが続く夏。大人も子供も、熱中症対策が欠かせません。

そこで管理栄養士のFUKAさんが、熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院の十河剛先生に「熱中症にならないための飲み物の選び方」について取材。シリーズ【夏の飲み物、どう選ぶ?】として、全3回でお届けします。最終回は、子供の熱中症対策についてお届けします。

熱中症対策には、さまざまな勘違いも…!?

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こんにちは。管理栄養士のFUKAです。今年も暑い日が続いていますね。ニュースなどでは「危険な暑さ」のワードをよく耳にしますが、本当に身の危険を感じる程の暑さです。

【夏の飲み物、どう選ぶ?】をテーマに全3回でお届けしているこちらのシリーズ、最終回となる今回は、「子供の熱中症対策の要注意ポイント」5つ!

暑いなか部活をしたり、外で遊びまわったり……子供の熱中症、心配ですよね。「大人が平気な時は子供も平気?」「水分の摂りすぎはNG?」など、勘違いしがちなポイントを整理して、効果的に熱中症予防をしていきましょう。

1:大人が大丈夫でも、子供は大丈夫とは限らない!

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早速ですが十河先生、子供の熱中症について、特に注意点してほしいことはありますか?

「まず認識しておいていただきたいのが、大人が大丈夫だからといって、子供が大丈夫とは限らない、ということです。

小さなやかんの水は、大きなやかんの水に比べてすぐに沸騰するように、体の小さな子供は暑さの影響をもろに受けやすく、大人以上に注意が必要です。地面からの距離も近く、照り返しの影響も受けやすいので、大人がしっかりと気を付けることが大切です」

夏の車の中に子供を置き去りにして亡くなってしまうという痛ましいニュースも耳にしますよね。

「子供は発汗速度が遅く、汗をかきはじめる体温が高い傾向があります。また、大人よりも体温調整機能が低いため、短時間でも熱中症になるリスクが高いです。

実際に私も娘が1歳の頃、ビーチで遊んでから駐車場まで移動する15分ほどの間に、娘が熱中症になってしまったことがあります。大人が大丈夫だからといって子供が大丈夫なわけではなく、想像以上に子供の体には負担がかかっています」

特に体の小さい乳幼児はより注意が必要ですね。加えて、大人だったら体調に異常があっても自分で気づいて対処できますが、子供の場合、そうはいかないですよね。

「その通りです。子供はのどが乾くのを忘れて遊んでしまったり、自分で異常に気づけなかったりするので、外出時や運動時は特に、こまめな水分補給を心がけてください。

子供は体が小さいので、のどがカラカラになってから飲むのでは遅いです。のどが乾いているということは、すでに水分が足りていないということ。健康な成人ならのどが乾いてからの水分補給で間に合う場合もありますが、体の小さな子供の場合は大変危険です」

つい大人の感覚で判断してしまいがちですが、子供たちの何倍も体が大きい私たちと同じ基準で判断するのはNGですね。

2:水分補給をしていても熱中症になる!? よく寝るのも立派な熱中症予防

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熱中症とあわせて日射病という言葉もよく耳にしますが、これらは同じものですか?

「日射病は熱中症の一種です。

熱中症の多くは、原因として脱水状態がベースにあります。ナトリウム(塩)には体内に水分を保持する働きがあるのですが、ナトリウムや水分が不足することで適切に汗をかけなくなった状態(=体の冷却水がなくなり体温が下げられない状態)になると、頭痛や吐き気、意識障害などが起こります。また、カリウムには細胞内の水分量を調整する効果があるため、ナトリウムに加えて、カリウムの摂取も重要です。

一方、日射病は脱水状態でなくても起こる症状です。日光にあたると温められて全身の血管がひらき、その結果、脳にいく血液が足りなくなってめまいなどの症状が現れます」

日射病は水分不足でなくても起きてしまうとのこと。太陽の下に長く居続けないようにするなど、注意が必要ですね。

熱中症のリスクを高める要素としては、どんなものがあるのでしょうか。

「大きく環境要因、身体要因、行動要因の3つに分けられます。

暑さや湿度、風が吹いていないといった環境要因や、水分・ミネラルの不足だけでなく、体が熱さに慣れていない(身体要因)、寝不足がたまっている(行動要因)など、さまざまな要素が影響します。

例えば疲れていそうな時には多めに休憩を挟むなど、その時々のお子さんの状態にあわせて、できるだけリスクを減らせるような選択をするのが重要です」

※十河先生への取材を元に編集部が作成

寝不足も熱中症の原因の1つとは……驚きました! やはり睡眠は大事なのですね。

「日ごろから十分な睡眠時間を確保することも大切ですし、特にどこかに遊びに行く前の日は寝不足にならないように注意が必要です。また、水分補給や塩分補給だけでなく、それ以外の対策も合わせて実行することも大切です」

私は紫外線対策として日傘をさしていますが、熱中症対策にも日傘は有効でしょうか?

「はい。なります。日傘や帽子を使用することで、体に受ける熱は軽減されます。また、日常的に環境省が発表している『暑さ指数※』などの情報を確認して、リスクが高い時には部活動を一時中止するなど、安全優先の選択をしていただきたいです」

(※ただし、発表されているのは観測所の指数であり、場所によって変動することに注意)

3:飲みすぎは心配しなくてOK!ただし塩分補給をしっかり

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熱中症対策の基本は水分補給だと伺ってきましたが、反対に、飲みすぎにも注意したほうがよいのでしょうか?

「水や麦茶など、糖分やカフェインが入っていない飲み物であれば、飲みすぎについては心配しなくてOKです。過剰な水分は自然に尿として排泄されます。

例えば運動などで汗をかく場合でも、“時々トイレに行きたくなるくらい”が十分な水分補給の目安になります」

塩分補給ができるタブレットタイプの商品も。ただし、こちらの商品の場合、1粒あたりの食塩相当量は0.275g。4~6粒食べてやっと梅干し1個分になる計算です。糖分が多く含まれている商品もあるので、それぞれの成分表示をよく読んで摂取しましょう。

「ただし、前回の記事でお話したように、運動後などで体内のナトリウム濃度が低下しているときに大量に水分のみを摂取すると、かえってマイナスにはたらいてしまう場合もあります。汗を多くかいた時は、水分と一緒に塩分も補給しましょう。

なお、小学生以上なら1時間の激しい運動(夏場/屋外)に対して、少なくともペットボトル1本程度(500ml)の水分と、大きめの梅干し1個分ほど(食塩約1.52g相当)の塩分を補給するのが望ましいです。

涼しい屋内で運動する際や、体の小さい未就学児の場合など、かく汗の量に応じて必要な量は変わりますが、水分については飲みすぎを心配して控えることはせず、むしろ多めに補給することをおすすめします」

4:食事から摂取できる水分・塩分もばかにならない!

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食事からの水分補給や、ナトリウム・カリウムといったミネラルの補給は、どのくらいの効果が期待できるのでしょうか。

「暑い時期こそしっかり食事をとるのは、熱中症対策としても有効です。特に、旬のものにはその時期に必要な栄養素が豊富に含まれている傾向があるので、旬の美味しい食材を選んで食べるのはとても理にかなっています。

例えば、夏においしいすいかやきゅうり、トマトなどの食材には、水分、カリウムが豊富に含まれています。すいかやきゅうり、トマトに食塩(ナトリウム)をふって食べれば、それだけでも立派な水分・ミネラルの補給源になります。

朝ごはんも大切です。人間は寝ている間に多量の汗をかくので、朝ごはんでしっかり補給しないと、体内の水分やナトリウム、カリウムが足りない状態で1日をスタートしてしまうことになります。そうなると大人でも電車の中で倒れたり、熱中症になりやすくなってしまいます」

なるほど。何事も基本は、しっかりごはんを食べて、栄養を摂取することからですね。

なお、100gあたりのカリウム含有量は、

すいか:120mg
きゅうり:200mg
トマト:210mg

でした。旬だから美味しいというだけでなく、必要な栄養素も豊富にとれるとは……これは食べなきゃ損ですね!

5:室内なら、無理にこまめに飲ませなくてもOK。飲みたいときに、ストレスなく水分補給を

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この時期、お子さんにこまめに水分補給をさせたいが、なかなか飲んでくれない……という声も耳にします。

「前回の記事で、シチュエーション別のおすすめの飲み物はご紹介しましたが、“絶対にこれを飲ませなければいけない”というわけではありません。

お子さんが飲みやすいスポーツドリンクやジュースなども、糖分などの摂りすぎに注意すれば飲んでいただいて問題ありません。また、飲み物にこだわらず、すいかや桃、梨などのフルーツからも水分補給は可能です」

麦茶や水だけと決めるのではなく、飲みやすいものや食べやすいものから水分を摂取すればいいのですね。

「また、涼しい室内で過ごす際は、ほとんど汗をかかないので、のどが乾いていないのに無理にこまめに飲ませる必要はありません。食事からの水分補給をしっかりしていれば、それにプラスして、“のどが乾いたら飲む”程度でOKです。

ただし、運動して汗をかいたときはしっかり水分・塩分を補給してくださいね」

日常生活なら、無理に飲ませようとする必要はないとのこと。それを知っておくだけで、なんだか気持ちがラクになりそうです。

 

これからまだまだ暑い日が続きますが、旬のフルーツや野菜からの栄養摂取を上手に取り入れるなど、お母さん、お父さん、お子さんみんなが無理のない形で熱中症対策をしていきたいですね。

今回十河先生に教えていただいた熱中症対策をしっかりして、今年の夏も元気に過ごしましょう!

 

【参考文献】
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
(最終参照日:2023/08/03)


 

十河 剛(そごう つよし)

済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 部長。肝臓、消化器、スポーツ医学を専門とする。「Best Doctors in Japan 2022-2023」に選出、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
幼少時より武道の修行を続けており、躰道七段教士、合気道二段、剣道二段の資格を持つ。高校生と大学生、2人のお子さんのパパ。

FUKA
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家族が笑顔になれる 【幸せおうちごはん】のレシピを紹介する管理栄養士/料理家。簡単だけど、美味しくてちょっとおしゃれなレシピが大人気。

公式Instagram:【管理栄養士】FUKAの褒められおうちごはん @morifu_popo

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