そもそもたんぱく質ってなに?
そもそもたんぱく質ってなに?こんにちは。管理栄養士の宮崎奈津季です。健康で美しくなりたい女性にとって欠かせない「栄養」の知識。何をどれだけ摂るのが良いのか、そもそもどんな働きをしているのか気になったことはありませんか? 今回は、「たんぱく質」について、体の中でどんな働きをしているのか、1日どのくらい摂ればいいのかの具体的な量などをご紹介します。
たんぱく質の役割
たんぱく質とは、アミノ酸がいくつも繋がった高分子化合物のことです。体の主な材料として、人間にとって必要不可欠な栄養素のひとつです。
体の中でのたんぱく質の役割は、大きく分けて3つあります。
【1】筋肉や臓器、皮膚などの材料として使われる
たんぱく質は、体重の20%を占めています。その体内のたんぱく質は分解と合成を繰り返して、古い組織から新しい組織を作っています。
【2】酵素やホルモンの材料
体の機能を調節するのに必要な酵素やホルモンはたんぱく質が材料となっています。そのため、不足すると私たちは生命活動を維持できなくなってしまいます。
【3】物質運搬や情報伝達
たんぱく質は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンや、遺伝子などの主成分でもあります。たんぱく質は体のありとあらゆるところに存在しているのです。
植物性・動物性たんぱく質の違いって?
たんぱく質は、植物性と動物性に分けられます。
■植物性たんぱく質
植物由来のたんぱく質のことで、米や小麦、大豆、ものによっては野菜や果物にも含まれています。動物性食品に比べて脂質が少ないものが多いので、比較的低脂質でたんぱく質を補給することができます。
■動物性たんぱく質
動物由来のたんぱく質のことで、肉や魚、魚介類、卵、乳製品などに含まれています。動物性たんぱく質は、必須アミノ酸と呼ばれる体内では合成できないアミノ酸をバランスよく含んでおり、良質なたんぱく質であるものが多いです。
ただし、動物性たんぱく質に偏ってしまうと脂質の摂りすぎにつながる可能性があるので、植物性・動物性どちらのたんぱく質もバランスよく摂ることが大切です。
たんぱく質はどれくらい摂ればいいの?
たんぱく質はどれくらいとればいいの?女性が1日に必要なたんぱく質量
日本人の食事摂取基準(2020年版)(※1)では、18歳以上の女性の場合、最低でも1日40g、できれば50g摂取するのが良いとされています。
また、目標量は日ごろどのくらいの活動量であるかによっても変わり、必要なエネルギー全体の13~20%をたんぱく質で摂取するのが良いとしています。
たんぱく質は足りてる?
では、その目標量に対して日本人はたんぱく質をどのくらい摂っているのでしょうか。
令和元年国民健康栄養調査報告(※3)によると、女性の場合、たんぱく質の摂取量は30~39歳で平均61.6g、40~49歳では65.9gと報告されており、大きく不足しているわけではありません。
しかし、中には仕事や家事、育児などで忙しいため時間がなく、健康な食習慣が難しいという方もいらっしゃいます。そのような場合は、1日3食バランスよく食べることができず、たんぱく質が不足している可能性があると考えられます。
また、日ごろの活動量や体格によっては、上記の量だと目標量よりも不足している場合もあります。
50gのたんぱく質って具体的にどれくらい?
1日に必要なたんぱく質50gを摂るには、食材でどのくらい摂ればよいのでしょうか? 1食で食べる量をもとに、食材ごとにどのくらいたんぱく質が含まれているのか見ていきましょう。
・鮭 1切れ(100g)・・・18.9g
・絹ごし豆腐 1/2丁(150g)・・・8.0g
・鶏もも肉 1/2枚(140g)・・・23.8g
これらを合計すると、50.7gとなります。
これらを毎食分けて食べるようにすれば、充分にたんぱく質を摂取することができます。(※2 アミノ酸組成によるたんぱく質を参照)
思っていたよりも多かったでしょうか?少なかったでしょうか?ぜひご自身がどのくらい食べているのか、参考にしてください。
プロテインで補うのはアリ?
プロテインは、主にスポーツをする人向けに、たんぱく質を効率よく摂取できるように開発されているものです。たんぱく質を補うためだけに摂取するだけではあまり効果は望めません。
目的に合わせて摂取し、運動もセットにして行うのが良いでしょう。あくまでサプリメントなので、日々の食事が基本であることを忘れないようにしましょう。
自分はどれくらいのたんぱく質が必要なの?
自分はどれくらいのたんぱく質が必要なの?筋肉をつけたいときのたんぱく質摂取量
基本的には、食事摂取基準(※1)に従い、成人女性の場合は50gを摂取しましょう。ただし、デスクワーク中心の方と、日ごろから運動したり、立ち仕事が多い方、運動習慣がある方では、エネルギー消費量が変わるので目標量も異なります。
そのため、必要なエネルギーの13~20%を目標とするのが良いでしょう。筋肉をつけたい場合、たんぱく質の摂取量だけではなく筋トレなどの運動も必須になります。そのため、たんぱく質の目標量も必然的に多くなります。
筋肉をつけたいときは、食事だけではなく運動もセットで気をつける必要があることを覚えておきましょう。
■30~49歳の女性の目標量
・自宅にいてほとんど外出しない場合:約57~88g。
・通勤や買い物での徒歩、軽い運動をしている場合:約67g~103g
・移動や立ち仕事が多い、また活発に運動をしている場合:約76g~118g
(参考データ:※1)
上記の目標量はあくまで目安となります。必ずしもこの数値を目指すということではなく、個人差があることを覚えておきましょう。
たんぱく質の量が少なすぎ・多すぎだとどうなる?
たんぱく質が不足すると、体力や免疫力が落ちてしまったり、筋肉が落ちて代謝が低下してしまいます。子どもの場合は、成長障害を起こしてしまうことも。
摂りすぎた場合、過剰症は現時点で報告されていません。しかし、摂りすぎた分は尿中に排泄されるため、腎臓に負担がかかることもあるので注意しましょう。
また、たんぱく質の摂りすぎはエネルギーの摂りすぎにもつながりますから、生活習慣病のリスクを高めることになります。
【参考文献】
※1 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
※2 文部科学省:日本食品成分表2020年版(八訂)
※3 厚生労働省:令和元年国民健康栄養調査報告
※4 吉田企世子、松田早苗監修:正しい知識で健康をつくるあたらしい栄養学、髙橋書店(2021)
※5 飯田薫子、寺本あい監修:一生役立つきちんとわかる栄養学、株式会社西東社(2019)
※6 香川明夫:はじめての食品成分表 八訂版、女子栄養大学出版部(2022)