子どもの目のために絶対やってはいけないこと
null基本的な目の構造は同じですが、そもそも子どもと大人の目には大きな違いがあるそうです。
「まずは免疫力です。乳幼児から段階を追ってついてゆき、高校生になるころに完成します。だから子どものほうが免疫力がなく、アデノウイルスによる流行性角結膜炎にかかりやすいともいえます。
また、10才ごろまでは視力が発達しきっておらず、とくに小学校入学前は発達において重要な時期です」(以下「」内、中村 裕先生)
だからこそ、絶対にしてはいけないのが「眼帯」。とくに3才未満の小さな子どもは3日以上、眼帯で片目を覆うだけでも視力に差が出るといわれているそうです。
「一度生まれた視力の左右差は、リカバリーはかなり難しいんです。どうしても、視力がよいほうの目で見てしまうので。アデノウイルスにかかったからと眼帯をさせる親御さんもいらっしゃいますが、乳幼児期から未就学のお子さんは、眼帯をさせてはいけません」
アデノウイルスによる「流行性角結膜炎」とは?
null伝染力がとても強いアデノウイルス。かかると黒目、つまり光が入る視路(しろ)にキズがつき、目が赤い、まぶたが腫れる、目やにが出るなどの症状が発症します。
感染経路は、手などによる接触、くしゃみや咳などの飛沫、そしておむつやトイレなどの排泄物とさまざま。人がたくさん集まる保育園や幼稚園、学校、職場も休む必要があります。
「ご家庭でも、タオルは別々にする、寝具をこまめに洗濯する、感染者はお風呂は最後に入るなどの基本的な対策が必要です。また、お子さんに親御さんが目薬をさしてあげるときは使い捨てのゴム手袋をして、さし終わったら裏返して専用のごみ箱に捨てること。それだけ注意してもうつりやすいんです」
治ったはずなのに「まぶしい」「見えにくい」…なぜ?
null他者へうつす可能性がなくなった後も「まぶしい」「見えづらい」といった症状を訴える場合も。実はこれが、アデノウイルスによる流行性角結膜炎の怖さでもあります。
「症状のピークを迎える前に、きちんと治療を始められなかったことによる後遺症の可能性があります。ですので、目が赤い、まぶたが腫れて治りにくいと思ったら、眼科専門医を早期に受診しましょう。
ウイルスによる感染症は、特効薬がありません。感染したらいかに効率よく治して後遺症を残さないかが大事。一度ピークを迎えて症状がひどくなってしまうと、しゅう明などの後遺症が数カ月も持続することも珍しくありません」
「しゅう明」とは、通常なら苦痛を感じない光量に対して、まぶしく不快に感じる症状のことです。
「後遺症は、一生残ることもありえます」と中村先生。初期の段階できちんとステロイドホルモンの目薬を使わないと、黒目(角膜)の混濁が長期間残りやすくなるためです。
「感染の初期からきちんと炎症を抑えて、なおかつ角膜ににごりがないかきちんと検査、確認して治療を終えることが大事です。ステロイドホルモンの目薬も、段階に応じて濃度やさす回数などが変わってゆくので、正しく使う必要があります」
年に一度でOK!眼科で検診してもらうのがおすすめ
null定期的に眼科を受診し、検診を受けた方がいいと語る中村先生。学校などでも眼科検診はありますよね……?と聞いたところ、「僕も地元の小学校で検診を担当しましたが、何十人、何百人も一度に診るので、やはりじっくり観察するのはどうしても難しい」と中村先生。だからこそ、おすすめは眼科での検診。
「夏休みや冬休みなど、時間がある長期休暇を利用して、年に一度でもよいです。最寄りの眼科で目の検査をすると安心ですね。とくに小さな子どもは、見えにくいなどの症状も的確に訴えづらいですから。
また、年齢とともにまつ毛が太くなり、逆さまつげで角膜にキズがつく子どももいます。それから、秋冬は空気が乾くので目が乾くとか、涙の排出が悪くて左右差のある流涙を訴える子どももいますね。これらの症状を起こす病気は、早く見つけるほど対処がスムーズな場合は多いです」
何か起こってからではなく、起こる前に予防する。この機会に、最寄りの眼科で検診を受けたり、かかりつけ医を見つけたりしてみませんか?
【取材協力】
中村 裕先生
東京・新小岩駅から徒歩5分の「中村眼科」院長。眼科医として40年にわたるキャリアを持つ。慶應義塾大学病院では、臨床および研究に従事し、専任講師として医学部生や若手医師の教育を担当。眼科領域の腫瘍のほか、交通事故による外傷、スポーツ外傷、白内障や斜視など多くの手術も行うエキスパート。
「中村眼科」では、小児眼科は0才児から受診可能で、斜視・弱視の相談も受け付けている。
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote