「耳そうじの理想的な頻度は?」
null耳そうじのやりすぎはよくない……という話は聞いたことがあるものの、耳垢が気になったり、耳そうじが何となく気持ちよかったりで、頻繁にしてしまう人も多いようです。では、実際のところ、耳そうじはどれくらいの頻度で行うのが理想的なのでしょうか?
「日本人は耳そうじ好きな人が多いようで、質問をよく受けます。ただ、結論から申し上げると、どの頻度でやればよいということではなく、“極力やらないほうがいい”というのが答えです。
そもそも耳垢は、外耳道を守ったり、細菌が増えないようにしたりなど、重要な役割を担っています。“垢”というと悪者のイメージですがそんなことはなく、本当は必要不可欠なものなのです。
そして、耳垢は量が増えてくると、基本的には自然と耳の奥から徐々に押し出されてきます。ですから、頻繁に取り除く必要はありません。
不要な耳そうじをすることによって、耳の皮膚を傷つけてしまうおそれがあります。実際のところ、耳そうじをよくする人ほど、耳のなかが荒れて汚い状態の方が多いです。耳そうじを全くしない人のほうが、意外ときれいなことが多いんですよ。
耳そうじは行うとしても、せいぜい2~3カ月に1度程度にとどめましょう。もちろん、これはその頻度でやったほうがいいということではありませんよ。気にならないなら、普段は耳そうじしないで、何かのついでに耳鼻科でみてもらうのもいい方法です」(以下、「」内は伊東先生)
耳そうじをする際の注意点は?
null極力やらないほうがいいという耳そうじですが、どうしても耳そうじがやめられない人もいることでしょう。そこで、耳そうじをする際に、どのような点に注意すべきなのか、伊東先生からアドバイスをいただきました。
(1)風呂上がりの耳掃除はNG!
「風呂上がりのほうが耳垢がたくさんとれる気がするから……と風呂上がりの耳そうじを習慣化している人もいるようですが、これは大きな誤解です。
風呂上がりにとれるのは耳垢よりも、実は正常な皮膚が多いです。風呂上がりには、耳のなかの皮膚が柔らかくなっていますから、耳そうじで正常な皮膚までこすりとってしまうのです」
(2)耳の外側に出てきたものをすくうだけにする
null「耳には自浄作用があり、耳垢は自然と耳の外に押し出されるので、放置しても耳垢が奥にたまることは少ないです。ですから、耳の入口付近まで出てきたものを、耳かきでそっとすくうようにしましょう。
そもそも耳垢は外耳道の外側にしかできないので、耳かきなどを奥に入れると、かえって耳垢を押し込み、耳の奥をふさいでしまう耳垢栓塞(じこうせんそく)になることもあります。耳そうじをするのはおよそ1cmくらいにとどめましょう」
(3)耳垢がしっとりしている人は綿棒を使わない
null耳そうじの道具としては、耳かきと綿棒がありますが、この使い分けはどうすればよいのでしょうか?
「耳かきを使うか、綿棒を使うかは耳垢のタイプによります。日本人に多い乾燥タイプの場合、大きなものは耳かき、細かいものは綿棒とするとよいでしょう。
他方、耳垢がベタベタしている場合、綿棒を使うと耳垢を押し込みやすいため、一般的なヘラタイプの耳かきのみを使うほうがよいでしょう。
いずれにせよ、耳の奥には突っ込まない。耳の入口からおよそ1cm以内だけに使うという点はくれぐれも要注意です」
伊東先生によれば、耳そうじは耳垢を押し込んだり、耳を傷つけてしまったりするデメリットのほうが大きいので、なるべく行わないほうがよいとのこと。気になる場合は耳鼻科で耳垢除去を行ってもらってみては?
習慣化したものを急にやめるのはなかなか難しいかもしれませんが、なるべく頻度を落とすことをまずは心がけましょう。気軽に耳そうじができないように、耳かきや綿棒といった道具を取り出しにくい場所にしまいこんだりというのも有効かもしれませんね。
【取材協力】
伊東祐永(いとうすけなが)・・・宮前平トレイン耳鼻咽喉科院長。金沢大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院などの勤務を経て、2014年に川崎市宮前区に宮前平トレイン耳鼻咽喉科(東急田園都市線 宮前平駅前)を開院。アレルギー性鼻炎、花粉症に対して舌下免疫療法やレーザー治療も行っている。他に風邪、中耳炎、補聴器、睡眠時無呼吸・いびき、小児耳鼻咽喉科などが得意。日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医。