将棋には子どもの成長に必要な要素が凝縮されている!
nullたとえ将棋のルールが分からなくても、藤井聡太棋士の対局やインタビューを見て、落ち着いた発言や大人びた物腰に「本当に中学生!?」と、プロ入りした当時から衝撃を受けていた人も多いはず。
まさに将棋には、子どもが成長するうえで身につけるべき必要な要素がたくさん詰まっていると、大石さん(上写真)は話します。
その1:礼儀作法が自然と身につく
null「将棋は“礼に始まり、礼に終わる”という言葉通り、将棋を指すうえでの礼儀は欠かせません。将棋は約1,000年の歴史をもつ日本の伝統芸能。ひとつひとつの所作が、伝統的な文化の表れなのです。
“お願いします”、“負けました”の言葉で、一礼をする。相手の一手を待ち、対局中はお互いを尊重する。当たり前のことですが、そういった基本の所作、相手への敬意がプレーを通じて子どもたちも身につきます。将棋の世界には、日本人の礼儀作法が凝縮されているんですよ」
その2:集中力が鍛えられる
null「さらに将棋に熱中すると、集中力も鍛えられます。いわば将棋は、短時間で無数の計算式を解いているような頭脳スポーツ。とにかく盤に集中して、相手の指す一手を想像しながら、幾通りもの次の手を考えます。
つまり、将棋に没頭している間は、集中力の訓練も行っているようなもの。実は僕は落ち着きがない子どもで、そのために父が将棋を教えたそうです(笑)。将棋を指す間はウロウロできませんし、集中力を鍛えるにはもってこいですね」
その3:客観視する力が身につく
null将棋は自分が負けた場合、「負けました」と言葉にして相手に伝えるのがルール。これを“投了”と呼び、どんな棋士もこの言葉で自分の負けを認めなくてはなりません。まさにこの行為こそが、強い子どもを育てると大石さんは話します。
「将棋が大好きな子どもほど、勝負に熱中して、その悔しさからなかなか負けを認められません。負けた瞬間にポロポロ涙をこぼす子や、駒をグチャグチャにしてしまう子も時にはいます。あの藤井聡太棋士も、幼い頃は負けると泣くので有名な少年だったんです。
子どもにとっては酷なことかもしれませんが、この“負けました”という言葉を口に出すことで、自分のことを客観視する力が自然と身につくのだと思います。そうして悔しさを押し殺し、乗り越えた子どもは、もっともっと強くなるんです」
その4:コミュニケーション力が鍛えられる
nullまた、将棋を通じて子どもの頃から大人たちと対等に接することができるのも将棋の魅力と大石さん。
「将棋は頭脳スポーツなので、ルールさえ分かれば、子どもも大人も楽しめます。将棋の大会や地域の将棋教室などでは、大人相手にプレーすることもあり、幼い頃から大人の世界に触れていく子どもも多いのです。将棋の盤の前では、子どもも大人も関係なく、ひとりひとりがプレーヤー。大人と対等に接することで、精神的に早熟になる子どもも多いと思います。
特に藤井聡太棋士は達観していますが、大人びた態度、豊富な語彙力、落ち着いた振る舞いなどは、そういった大人たちの厳しい世界で、若くして戦い抜く中で自然と育まれていったのかもしれません。
さらに将棋には、投了後に互いに勝負について話し合う時間が設けられており、“感想戦”と呼びます。これは、お互いがより強くなるために必要な議論であり、切磋琢磨することを美徳とする日本らしい考え方。自分の手の内を明かし、お互いのプレーについて話し合うことで、伝える力、コミュニケーション力も同時に養われていきます。
将棋の強い子は、大人に対して臆することなく自分の意見をきちんと言えるんです。時には、鋭い指摘で大人を言い負かす子どもたちもいるんですよ」
将棋には、礼儀作法、客観視、集中力など、日常生活で役立つことがたくさん凝縮されていて、将棋好きな子ども達はプレーに熱中しながら、自然とそういった力を身につけていくようです。
将棋は“頭脳スポーツ”と称されますが、次回は、将棋をしながら脳を鍛えることで身につく力について、お届けします!
【取材協力】
大石祐輝(おおいしゆうき)
プロ将棋界情報や上達講座など、将棋にまつわるさまざまな情報を発信するWEB媒体『将棋情報局』編集長。将棋・囲碁の書籍編集部を経て現職。
『将棋情報局』
取材・文/岸綾香