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「早く片付けなさい!」の「叱り言葉」より子どもに届く【井桁先生の魔法のフレーズ】♯5 自分でお片付け編

3歳前後の子育ての“困った!”を解決すべく、保育・子育てカウンセラーの井桁容子さんにいますぐ実践できるメソッドを聞く本連載。今回は、つい叱りモードになってしまう「お片付け」についてです。

前回は、「子どもの“やって!”には応えてあげて大丈夫、厳しくしなくても自分でできる子になる」という心温まるお話を聞きました。

お片付けについても「自分でやらせなきゃ!」と思いがちですよね。おもちゃが散乱した部屋を見て「せっかく買ってあげたのに、大事にしていない!」とイライラしてしまうことも。

でも、子どもが片付けない理由は、意外にも親の心持ちにあるようです……。

Q.「片付けないと捨てちゃうよ!」を連発し、ようやく子どもが片付ける日々にうんざりです…

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A.片付けの本質は“物を大切にすること”。大人も、物に愛着を持った発言をしましょう

【お片付け:実践フレーズ】

「あなたの大事なおもちゃ、床に置いたままで壊れちゃったらママ(パパ)も悲しいから、片付けておくね」「カッコよくブロック作れたから、棚の上に飾っておこうね」

「時にはご両親が片付けてあげることも大事ですよ。子どもが大事に思っていることを大人も大事に思っていると伝えることで、裏表なくその物に対する愛着を育てることができます。

“捨てる”という脅しは、“わたしの大事なおもちゃなのに……”と、親に裏切られた気持ちにさせてしまいますね。

また、ブロックで上手に作品ができたからこのままとっておきたい、と子どもが思っているのに、お母さんが“片付けなさい!”と、いま作った作品を平気で無視しては、子どもとしては許せません。そのことに怒って、ますます片付けないでしょう。

“棚の上に置いておけば、お布団も敷けるし、しばらく眺めていられるもんね”と教えていれば、次は潔く壊して元通りにしまうことができるようになります。

やがて、“お母さん、洗濯物畳んでおいたよ”“お父さんの定期入れ落ちてたから、テーブルに置いておいたよ”と行動できるようになる。それこそが、片付けが身についた人がすることです」

Q.片付けは、「ブロックの箱」「車の箱」と分けて決めているのに、いつもぐちゃぐちゃです!

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A.右から左に物を動かすだけならロボットでもできます。まずは、片付けをする理由を説明しましょう

【お片付け:実践フレーズ】

「ここに出しておいたら、足を怪我するね」

「たまに幼児番組で、“お片付け~、お片付け~”と歌いながら、とにかくおもちゃを元に戻すシーンを見かけますが、あれでは何のために片付けをするのか伝わりません。

ここからそこへ持って行くだけなら、将来はAIの仕事ですよね。21世紀型の“考える子ども”に教えることは、安全だからとか、物を大切にするとか、みんなが気持ちよく過ごすためといった、“片付ける理由”です」

井桁容子さん

“ココからココに片付けなさい!”とか、“あなたが使ったんでしょ? 片付けなさい!”と言われてきた子どもは、大人が指示をしないとできないし、誰かが使っていたものは“ぼくのじゃないもんねー”と片付けません。言われたことしかやらないようなしつけでは、将来、子どもが困りますよ」というお話には筆者もドキリとしました。

片付ける場所を教えるよりも先に、片付ける理由を教えることが大切なんですね。“片付け”ひとつとっても、本質を伝えながら育てていくということは子どもが成長した未来に大いに影響することを実感しました。

 

次回は、公共の場でのマナーについて。何気なく使っている言葉が“言われたことしかやらないしつけ”になっている場合も……。

 

【取材協力】

井桁容子(いげた ようこ)

保育・子育てカウンセラー。東京家政大学短期大学部保育科を卒業後、同大学が併設する乳幼児の保育・研究を実践する保育施設に42年間勤務。20184月より保育の現場からステージを移すことになり、全国での講演のほか、『すくすく子育て』(NHKEテレ)への出演、『いないいないばぁっ!』(NHK Eテレ)の監修も行う。著書は、『保育でつむぐ子どもと親のいい関係』(小学館)など多数。男女の母でもある。

 

撮影(井桁さん)/黒石あみ(小学館)

取材・文/駿河真理子

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