パターン1:1社で特定の専門業務を長く担当した
null「大手企業で約10年間、一貫して△△部門の××業務を担当し、専門性を磨いた」。
一見すると理想的なキャリアに見えます。ところが、こうした経歴の方は転職活動で意外と苦戦することが多いのです。求人企業側は、次のように評価し、不安を抱くからです。
「細分化された組織の中で、一部の業務しか経験していない。組織全体を俯瞰して、さまざまな状況に対応する力はないのではないか」
「1社・1部門しか経験しないまま長期間も過ごしたということは、考え方・やり方が凝り固まっているのではないか。新しい環境や手法に適応できないのではないか」
もちろん、その業務のスペシャリストとしてのスキルの高さは評価されます。しかし、世の中の求人を見ると「この業務だけずっと担当してくれればいい」というものはあまり見られません。
積極採用している企業は事業拡大中であることも多く、また慢性的な人材不足であることもあり、「複数業務を兼務してほしい」「さまざまな業務に臨機応変に対応してほしい」というニーズがあります。
そのため、幅広い経験、柔軟性、臨機応変な対応力といったものを求めています。その点で、「一つのことだけを長く続けた人」は「融通が利かないのではないか」という懸念を抱かれることがあるのです。
広い視野をアピールすることが大事
これをカバーするためには、「未知の業務にも柔軟に対応した」「さまざまな立場の人と協業した」経験を伝え、広い視野を持っていることをアピールしましょう。
1部署で同じ仕事をしていても、どこかのタイミングで異分野・異職種の人たちと協働した経験があるのではないでしょうか。例えば、「○○の改革プロジェクト」や全社イベントなど、社内横断型の活動や社外の人と共同で行う取り組みです。
ごく短期間でも、他部署のプロジェクトをサポートした経験があれば、それも有効です。
こうした経験、および、その経験を通じて何を身に付けたかを職務経歴書に記しておくことをお勧めします。
業務上でそのような経験がなければ、社外のコミュニティやサークル、セミナーなどに参加し、さまざまな業種の人と交流した経験を伝える手もあります。
このような経験がなく、いずれ転職を検討しているのであれば、上記のような経験をこれから意識的に積むようにしてみてはいかがでしょうか。他部署への異動を願い出るのも一つの手です。
パターン2:大手企業で高い業績を挙げた/社会への影響が大きいプロジェクトに携わった
null大手企業に所属し、成果を挙げた経験があれば、転職活動では積極的にそれをアピールしようとします。しかし、意外と相手企業の反応が薄いこともあります。
もちろん成果を挙げたことは評価されますが、このように思われるからです。
「その成果をうちの会社でも再現できるのか? 前の会社だからできたのではないか?」
つまり、大手企業であれば会社のブランド力や優秀なチームメンバーに助けられ、「たまたま」「運よく」成果を挙げられたのかもしれない……と思われるわけです。
特に中小ベンチャーなどに応募した場合、大手に比べて知名度も低く資金力が乏しいケースも多いわけですから、大手企業で経験したやり方で成果が出せるのか疑問視されます。
成果だけではなく、プロセスとノウハウ化まで伝える
では、どのようにアピールするか。
「こんな成果を挙げた」だけで終わらせず、「プロセス」を伝え、「ノウハウ化できている」ことを伝えましょう。
会社が持つ資源を活用しただけでなく、独自で考えた戦略や工夫、それをどう実行し、どんな成果を挙げたか、途中ぶつかった壁をどう乗り越えたか、などを伝えるのです。
その経験が、自分の「ノウハウ」として身に付いていて、相手企業でもそれを再現できることを伝えられれば、プラス評価につながるということです。
これまでの実績をアピールするだけでなく、それを活かして相手企業にどう貢献できるか、という視点を持っておきましょう。
構成/青木典子