育休後の働き方が多様化
null女性が将来に渡っての「キャリアビジョン」を描こうとするとき、壁となって立ちはだかるのが「出産・育児」です。出産後も仕事を続けるとすると、多くの方が次のいずれかに該当するでしょう。
(1)退職し、派遣やパートなどで働く(アシスタント業務が多い)
(2)産休明け、もとの会社に復帰し、時短勤務制度などを利用しながら働き続ける
一昔前は、会社側の体制が整っておらず(1)を選択せざるを得ない方が多く見られました。
しかし昨今は、政府が掲げた「女性活躍推進」により、育児と仕事を両立できるような支援制度を充実させる企業が増えてきたため、(2)を選択できる方が増えています。
育児と仕事を両立できる制度が整っていない会社を辞め、育児支援制度がある会社に転職する女性も多く見られます。
しかし、「社員として勤務」というスタイルの場合、やはり働きにくさを感じる人も多いのが事実。
「勤務時間に制約がある分、同僚に負担をかけるのが心苦しい」
「責任ある仕事を任せてもらえず、スキルアップや成長の実感がない」
……そんな声もよく聞こえてきます。
そこで、最近では「フリーランス」の立場で、「業務委託」のスタイルで働くことにより、仕事とプライベートのバランスをうまく取っているワーキングマザーが増えてきました。
フリーランスといえば、少し前まではデザイナーやライターといったクリエイターの働き方……というイメージが強かったのですが、最近では営業、マーケティング、企画、管理部門業務といった「ビジネス系フリーランス」も一般化してきました。
前職のキャリアを活かしたAさんの場合
null例えば、外資系ファッションブランド企業のマーケティング部門でPR担当として働いてきたAさんの場合、出産を機に退職したものの、「もう一度ビジネスの第一線に立ちたい」という想いが強く、仕事への復帰を望んでいました。
とはいえ、育児が落ち着くまでは自分で仕事のペースをコントロールしたい。しかし、会社組織に入れば、さまざまな要求や期待を背負い、葛藤するのではないか……。という懸念がありました。
そこで彼女が選んだのが、別の外資系ファッションブランドでの「業務委託」という働き方。その会社の「PRマネージャー」の名刺を持ち、ほぼ毎日出社。外部の人からはその会社の社員に見えますが、実質的にはフリーの立場です。
彼女は、このポジションをとても気に入りました。なぜなら、専門職としての自分の役割さえこなしていれば、「組織人」としての役割を求められないから。
「社員だと、会社の飲み会や社内イベントに参加しないのは協調性を欠くようで申し訳なく感じるが、業務委託の立場ならお互いに割り切れて、心理的負担を感じずに済む」
「必要性を感じない会議への出席や部下の査定評価など、専門業務以外の義務を負わなくていい。やりたい仕事だけに集中して時間を過ごせる。そして、専門職としてキャリアも積み上げていける」
――そんなメリットがあると言います。
育児と仕事を両立するにあたり、組織人であることの煩わしさから解放され、かつキャリアのレベルや価値を落とさないためには、こんな働き方も一つの手だと思います。
最近では、こうしたビジネス系フリーランス人材と企業のマッチングを支援する企業やサービスも増えてきています。
そして、いずれ育児が落ち着いたら、キャリアを活かして再び正社員として働くという選択肢も可能です。
業務委託契約のデメリットは?
ただし、業務委託契約という働き方には当然ながら厳しい面もあります。例えば、
- 収入が不安定
- 取引先の開拓、契約・条件面の交渉を自分で行わなければならない
- 確定申告、保険料の支払い手続きなどを自分で行わなければならない
- 有給休暇がない
こうした点は覚悟しておく必要があります。
しかしながら、最近ではフリーランス人材と企業のマッチングを支援する企業やサービスが増えており、仕事の情報は得やすくなっています。「副業解禁」への動きが活発化する中、企業側もスポット的に外部人材を活用することへの抵抗感が薄れています。今後もプロジェクト単位での業務委託案件の求人情報は増えていくと見込まれます。
また、『プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会』などのフリーランス支援団体では、フリーランスのネットワークやコミュニティ形成の支援、キャリアアップセミナー、福利厚生・保険・所得補償制度などの提供を行っていますので、そうした支援サービスを活用してもいいでしょう。
なお、こうした働き方を実現するためには、出産前にキャリアのベースをしっかり築いておくことが大切。
キャリア構築を「前倒し」するつもりで、早いうちから難易度の高いプロジェクトに積極的に関わったり、プロジェクトマネジメントやチームマネジメントを経験しておいたりすることをお勧めします。
構成/青木典子