言いにくいことを伝えるときに便利な「大和言葉」
null1.【おこがましい】目上の人に意見するときのクッション言葉
意味:分をわきまえず、出しゃばりすぎている。
例文:私が言うのもおこがましいのですが、部の方針と課の方針に齟齬がありませんか?
目上の人に意見する後輩や部下に「そんな態度はおこがましいぞ」と注意したり、例文のように、自分が目上の人に意見する際のクッション言葉として使ったりする言葉です。「おこ」は元々「愚か」という意味で、古典では「おこがましい」は「ばかばかしい」の意で使われていました。身分が下の者が上の者に物申すのは愚かなことであったからです。
2.【お力添え】相手を敬いつつ、お礼や依頼をするときに
意味:力を貸して助けてくれることを、相手を敬って言う。
例文:中村さんのお力添えがなければ、このプロジェクトは成立しませんでした。
例文のようなお礼の使い方以外に、手伝ってほしいという依頼の文で使うこともできます。具体的に手伝ってほしい作業がある場合だけでなく、「自分は企画書を出すけれど、あなたは反対しないでくださいね」といった、邪魔をせずに見守って欲しいという温度感の場合も含みます。似ている言葉に「お力になる」がありますが、こちらは「微力ながら、お力になれれば幸いです」のように、自分がだれかを助ける際に使います。
3.【お含み置きください】事情をあらかじめ理解して欲しいときに
意味:ある事情を心に留めておいてくれと頼む。
例文:在庫状況により、お届けにお時間を頂戴する可能性をお含み置きください。
ビジネスでは、お知らせの文面などで「事情などをあらかじめ理解しておいてください」と伝える際に使います。いつもそのことばかり考えてほしいわけではないけれども、リスクがあることを頭の片隅に置いておいてくださいね、くらいのニュアンスです。「覚えておいてください」と言うと命令しているようにも聞こえますが、こちらは柔らかく響きます。似たような意味では、熟語を使った「ご承知置きください」という表現があります。
4.【折悪しく(おりあしく)】タイミングの悪さを失礼のないように表現
意味:間の悪いことに。あいにくのタイミングで。
例文:その時間は折悪しく先約が入っておりまして。
「タイミングが悪い」を失礼のないよう丁寧に言うときの表現です。ほかにも「折悪しく雨が降ってまいりましたが、どうぞお気をつけてお帰りください」と、相手を気遣う文脈で使うことができます。「タイミングが悪い」の言い換えとしては、「間が悪い」もあります。
信頼されて人間関係が円滑に!「思いが伝わる語彙学」
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・あいにく
・あしからず
・お暇する
・お心づくしの
・お呼び立て
・折り入って
・心ばかりの
・さしあたり
など、言いにくいことも柔らかく伝えてくれる大和言葉をピックアップし、解説しています。
大和言葉をコミュニケーションに取り入れると、より上品で素敵に見えるのも嬉しいですね。ぜひ日常のなかで取り入れてみてください。
『明日の自信になる教養4 池上 彰 責任編集 思いが伝わる語彙学』(著者:吉田裕子 責任編集: 池上 彰 税込1,870円・KADOKAWA)
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国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。