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「寸暇を惜しんで」と「寸暇を惜しまず」どっちが正しい?意味と使い方を解説【間違いやすい日本語#45】

“寸暇”は、惜しむもの?  惜しまないもの? 

今回は『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに特に間違いやすい“寸暇”を使った慣用句について解説していただきました。

「寸暇を惜しんで」と「寸暇を惜しまず」どっちが正しい?

「寸暇を惜しんで」と「寸暇を惜しまず」どっちが正しい?

「わずかの時間も無駄にしない様子」を表す際の表現として正しいのはどちらでしょうか。

  1. 寸暇を惜しまず
  2. 寸暇を惜しんで

正解は「2」の「寸暇を惜しんで」です。

しかし、過去に文化庁が行った『国語に関する世論調査』の正解率は38.1%と低迷しており、43.5%が誤用である「寸暇を惜しまず」を選択しています。

間違いやすい表現である「寸暇を惜しんで」を掘り下げていきます。

「寸暇を惜しんで」の意味とは?

「寸暇を惜しんで」の意味とは?

寸暇を惜しむ」は、休む時間も惜しいほど何かに打ち込む様子。“寸暇”の“”は“少し”、“”は手が空いた時間のこと。ほんのわずかな時間ももったいなく思い、活用しようとするほど、時間を大切にする様子を表す慣用句です。

現代風の表現を使うと「1分1秒も無駄にせず」といったところでしょうか。

「寸暇を惜しんで」使い方の注意点は?

「寸暇を惜しんで」使い方の注意点は?

正しい表現は「寸暇を惜しんで」ですが、近年は「寸暇を惜しまず」という表現を使う人も多くなっています。

「有効なすき間時間を積極的に物事に打ち込む」というニュアンスで使っている人が多いと推測されます。ただ、“ちょっと手が空いた時間”を表す“寸暇”の意味を踏まえると本来は誤用ですのでご注意ください。

また、“惜しむ”の意味をきちんと理解していないケースも想定されます。

「寸暇を惜しんで」の“惜しむ”の意味は、もったいないと思うこと、失われるのを残念に思うことです。

ここで、“惜しんで”と“惜しまず”の使い分け方法をチェックしておきましょう。

■「惜しんで」と「惜しまず」の使い分け方法

【惜しんで】

  • 別れを惜しんで(【意味】別れることを悲しく思って)
  • 名を惜しんで(【意味】名声が汚れるのを残念に思って)
  • 金を惜しんで(【意味】金を使うのをもったいないと思って)
  • 寸暇を惜しんで(【意味】わずかな時間ももったいないと思って)

【惜しまず】

  • 手間を惜しまず(【意味】手間をかけることをいとわず)
  • 労力を惜しまず(【意味】労力を出し惜しみせず)
  • 努力を惜しまず(【意味】努力を出し惜しみせず、懸命に努力をして)
  • 協力を惜しまず(【意味】協力を面倒がらず、積極的に協力して)

「寸暇を惜しんで」の例文は?

「寸暇を惜しんで」の例文は?

「寸暇を惜しんで」を用いた例文をご紹介します。

寸暇を惜しんで勉強に没頭した。

・今回の仕事が成功したのは、寸暇を惜しんで対策を練ったからだ。

・彼は、寸暇を惜しんで創作活動に打ち込んだ。

寸暇を惜しんで作成した資料は参加者から好評だった。

「寸暇を惜しんで」を言い換えると?類似の表現は?

「寸暇を惜しんで」を言い換えると?類似の表現は?

「寸暇を惜しんで」と類似の場面で使われる言い回しをご紹介します。

(1)「1分1秒を無駄にせず」

慣用句ではありませんが、少しの時間も惜しまずに仕事や学習に励む際に使われている表現です。話し言葉でもよく耳にする表現です。

【例文】

1分1秒を無駄にせずに勉強をがんばりたいと思います。

(2)「すき間時間を活用して」

“すきま時間”は、用事と用事の間のあいている時間のこと。空いている時間をうまく使って、何かに打ち込む際に使う表現です。

【例文】

すき間時間を活用してリスキリングに励んでいます。

(3)「~の合間を縫って」

空いている時間を見つけて何かに励む際に使う表現です。

【例文】

・仕事の合間を縫って英会話教室に通った。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに「寸暇を惜しんで」の意味や使い方を解説していただきました。

ちなみに2021年度の『国語に関する世論調査』では「寸暇を惜しんで」に関する質問の正解率は38.1%。2010年度の28.1%からやや改善しています。

世論調査での「寸暇を惜しんで」と「寸暇を惜しまず」のせめぎあいが、今後どう展開していくのかも着目していきたいですね。

 

取材・文/北川和子

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【参考】

令和2年度「国語に関する世論調査」の結果について – 文化庁

吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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