「俄然」の意味とは?
null“俄然(読み方:がぜん)”は、“急に”“突然”“にわかに”の意。物事が急に変化する様子を表す副詞です。「彼をほめたたえたら、俄然自信がわいてきたようだ」といった使い方をします。
俄然の“俄”を訓読みすると“にわか”。日常会話でよく聞かれる“にわか雨”“にわかファン”といった言葉から、急に変化する様子をイメージしやすいのではないでしょうか。
「俄然」の使い方の注意点は?よくある誤用は?
「俄然」の使い方の注意点は?よくある誤用は?“俄然”の意味は“急に”ですが、間違った解釈をされやすい言葉です。
過去に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、俄然の意味の正解率はわずか23.6%。調査では「とても、断然」と回答した人の割合が67%にのぼっていました。
特に20~30代に関しては、およそ8割の回答者が誤った意味を選択しています。
字面が似ていることから“俄然”と“断然”を混同しているケースもあると推測されます。
この結果を踏まえると、以下のような文章では、真意が正しく伝わらない可能性があります。“急に”“突然”などと言い換えたほうが伝わりやすいかもしれません。
【要注意例文】
・俄然お腹が空いた。
→正しい意味は「急にお腹が空いた」だが「とてもお腹が空いた」と解釈される可能性がある。
「俄然」の例文は?
「俄然」の例文は?“俄然”を用いた例文をご紹介します。
・食事をとったら俄然元気になった。
・一眠りしたことで俄然やる気が出てきた。
・コンクールで受賞したことで俄然注目を浴びた。
・入社直後は所在なさそうにしていた新人が、俄然頭角を表してきた。
「俄然」を言い換えると?類語は?
null“俄然”と類似の意味を持つ言葉をご紹介します。
(1)「にわかに」
先述したように“にわかに”を漢字で表記すると“俄かに”。“俄然”の類義語です。
【例文】
・これまで無名だった選手は、国際大会の活躍でにわかに注目を浴びた。
(2)「突如」
“突如”(読み方:とつじょ)は、思いがけず物事が急に起こる様子。
【例文】
・突如、A社の担当者が来訪したので慌てて対応した。
(3)「忽然」
“忽然”(読み方:こつぜん)は、“突然”の意。たちまちに変化が起こる様子を表す形容動詞です。“忽”を訓読みすると“たちまち”。出没について言及するときに使われることの多い言葉です。
【例文】
・その歴史的な人物は、忽然と姿を消したと言われている。
(4)「卒爾」
“卒爾”(読み方:そつじ)は、突然なこと。ややかしこまった場面で突然のお知らせをするときに「卒爾ながら」という形で使われています。おもに書き言葉で使われる表現です。
【例文】
・卒爾ながら、ご報告がございます。
「俄然」の対義語は?
「俄然」の対義語は?“俄然”の対の意味を含む言葉をご紹介します。
(1)「おもむろに」(徐に)
“ゆっくりと”“ゆるやかに”“徐々に”の意。“徐行運転”
【例文】
・彼に声をかけたら、おもむろに動き出した。
(2)「やおら」
“やおら”は、“おもむろに”の同義語。ゆっくりと落ち着いて動作を行う様子です。“突然”の意で使うのは、誤用です。
【例文】
・彼女は、やおら片付けを始め、部屋を出ていった。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“俄然”の意味を解説していただきました。
非常に間違いやすい言葉なので、正しい使い方を覚えておきましょう。
取材・文/北川和子
【参考】
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。