「一世一代」の意味とは?どんな場面で使う?
「一世一代」の意味とは?どんな場面で使う?“一世一代”の読み方は“いっせ いちだい”。 “一世”と“一代”はともに“一生涯”を表す熟語です。
おもに2つの意味で使われています。
(1)歌舞伎や能などの芸能の世界において、これまでの集大成のような最後の演技をすること。役者の引退や、得意の演目の演じ納めの際などに使われています。
【例文】
・一世一代の名演技は、これからも語り継がれていくだろう。
・ “一世一代”と銘打たれた来月の引退公演を見に行く予定だ。
(2) 一生のうちにただ1度しかないようなこと。一生に1度の大きな勝負ごと、滅多にないチャンスが巡ってきたとき、晴れ舞台のときなどに使われています。
【例文】
・一世一代の大勝負に出た。
・一世一代の大仕事だと思い、全力を尽くした。
「一世一代」の使い方の注意点は?「いっせいいちだい」は間違い?
「一世一代」の使い方の注意点は?「いっせいいちだい」は間違い?“一世一代”を “いっせい いちだい”と読む人が多く見受けられますが、正しい読み方は“いっせ いちだい”です。
“一世”には“いっせい”と“いっせ”の2つの読み方があり、それぞれ異なる文脈で使われています。
「一世(いっせい)を風靡する」「ナポレオン一世(いっせい)」などの“一世”とは異なっていますので注意が必要です。
また、“一世一代”と混同しやすい熟語として、“一世一元”(読み方:いっせいちげん)があります。
“一世一元”は、君主1代ごとに1つの元号を用いる制度のことであり、別の言葉です。
「一世一代」を言い換えると?類語は?
「一世一代」を言い換えると?類語は?“一世一代”の言い換え表現をご紹介します。意味を踏まえると、頻繁に使われる言葉ではありませんが、覚えておきましょう。
(1)「一生に一度の」
広く使われている表現です。滅多にできないような体験や、人生の節目などに使われることがあります。
【例文】
・私にとっては一生に一度の大舞台です。
(2)「命運がかかる」
“命運(読み方:めいうん)がかかる”は、物事のなりゆきを左右するような重大な運命がかかっていること。
【例文】
・わが社の命運がかかったプロジェクトがスタートした。
(3)「千載一遇」
“千載一遇”(読み方:せんざいいちぐう)は、千年に1回しか巡り合えないほどまれなこと。多くの場合、チャンスに恵まれたときに使われている表現です。
【例文】
・経営が苦境に陥っていたが、千載一遇のチャンスが到来した。
(4)「畢生」
“畢生”(読み方:ひっせい)は、一生涯のこと。“一世一代”は役者の渾身の演技を表しますが、“畢生”は作家・芸術家などの生涯の傑作を描写する際に使われることがあります。
【例文】
・レオナルド・ダ・ヴィンチの畢生の大作である『モナ・リザ』を所蔵しているのは、ルーヴル美術館である。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“一世一代”について解説していただきました。
意味を踏まえるとあまり頻繁に使う言葉ではありませんが、読み方には注意しましょう。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。