「浮足立つ」の意味とは?
「浮足立つ」の意味とは?“浮足立つ”(読み方:うきあしだつ)は、どちらの意味だと思いますか?
- 喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている
- 恐れや不安を感じ、落ち着かずそわそわしている
正解は「2」。「恐れや不安を感じ、落ち着かずそわそわしている」が正しい意味です。
文化庁が実施した「国語に関する世論調査」では、60.1%が「喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている」を選択しています。
“浮足”は、かかとが上がって十分に地を踏んでいない状態。気がかりなことがあって落ち着かず、逃げだしそうな状態を“浮足立つ”“浮足になる”という言葉で表します。
ところが、近年では喜びや期待によって“うきうき”した様子を表す言葉だと解釈している人が多くなっています。そのため、国語辞典の中には、“俗に”と前置きしたうえで“うきうき”の意を併記しているものもあります。
ちなみに、類似の変化を遂げた言葉としては「鳥肌が立つ」があります。本来は、寒さや恐怖のために鳥肌が生じる言葉でしたが、感動や強い喜びを感じた場合にも使われるようになっています。
「浮足立つ」と「浮き立つ」の違いは?
“浮足立つ”は、恐れや不安を感じて落ち着かない様子。
対して“浮き立つ”は、楽しく陽気になること、うきうきすること。
2つの言葉を混同しないよう、ご注意ください。
「浮足立つ」の例文は?
「浮足立つ」の例文は?“浮足立つ”を使った例文をご紹介します。
本来の意味である、不安でそわそわした様子を表す場合には、以下のような形で用います。
・初めてのプレゼンテーションで浮足立つ思いがした。
・めったにないトラブルを前にみなが浮足立っていた。
しかし、実際には以下のような形で“うきうき”の意味で使われる場面が多くなっています。
・彼は、明日から1週間の休暇を取得予定のためか、浮足立って見える。
・その朗報を受け、みなが浮足立っていた。
「浮足立つ」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方
「浮足立つ」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方“浮足立つ”という言葉は本来、恐怖や不安によって落ち着かない様子を表す言葉ですが、近年は、喜びでうきうきする様子を表す人が多くなっています。
本人は緊張して不安な気持ちを伝えようとして“浮足立つ”を使っても、相手に真意が正しく伝わらない可能性があります。以下に紹介する言い換え表現を使った方がいいかもしれません。
「浮足立つ」を言い換えると?類語は?
「浮足立つ」を言い換えると?類語は?続いて“浮足立つ”の言い換え表現をご紹介します。不安や恐怖を感じている様子を伝える際に使える表現です。
(1)「尻込みする」
不安になって、後ずさりすること。ためらうこと。“後込み”と表記することも。
【例文】
・久しぶりに大勢の前で発表をするので、尻込みしてしまう。
(2)「冷や汗をかく」
緊張したとき、恥ずかしいとき、恐ろしいときに、冷たく感じられる汗をかくこと。
【例文】
・総会では、想定外の質問が飛び交い、冷や汗をかいた。
(3)「気ぜわしい」
気持ちがせかされて落ち着かない様子。“そわそわ”した様子を表す形容詞です。
【例文】
・やることが山積みで、なんだか気ぜわしい。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“浮足立つ”について解説していただきました。
不安でそわそわした様子を表す言葉ですが、“うきうき”の意味で使われているケースもありますので、読解の際には注意してくださいね。
取材・文/北川和子
【参考】
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。