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「意趣返し」の意味と使い方は?よくあるNG使用例も解説

“意趣返し”という言葉は、漢字の並びからポジティブな意味を連想しがちですが、実際は違います。【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#92】では、“意趣返し”の意味や使い方、使用時の注意点を掘り下げていきます。

“意趣返し”について解説していただいたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「意趣返し」の意味とは?

「意趣返し」の意味とは?

意趣返し”(読み方:いしゅがえし)の意味は、仕返しをすること、復讐をすること

“意趣”には、“考え”“思うところ”“恨む心”“遺恨”など、複数の意味があります。

“意趣返し”といったときには、「恨みを晴らすために仕返しをする」という意味になります。

「意趣返し」はどんなシーンで使う?

「意趣返し」はどんなシーンで使う?

“意趣返し”の意味を踏まえると、使用頻度はそれほど高くありません。

ビジネスシーンにおいては、業界内のライバル同士の競争を評したり、社内外の組織の人事の波乱などに言及したりする際に使われることがあります。政治経済ニュースなどの見出しでもしばしば見かける言葉です

身近な人同士のいざこざよりも、ある程度距離のある対象を論ずる際に使われています

日常会話においては、“仕返し”“やり返す”といった表現を使うのが一般的です。

「意趣返し」の使い方の注意点は? よく見かける間違った使い方

「意趣返し」の使い方の注意点は? よく見かける間違った使い方

先述したように、“意趣返し”の“意趣”には“恨み”のほかに“思っていること”という意味があります。そのため“お礼”“お返し”という意味があると勘違いしてしまうケースもあるようです。

また、恩返しにも仕返しにも使われる「借りを返す」と同様の意味だと勘違いする例もあります。

【NG例文】

・あのとき助けてもらったので、意趣返しをしたいと思います。

“恩返し”“借りを返す”などの意味で使っているのであれば、NG。“意趣返し”の意味は“仕返し”。

「意趣返し」の例文は?

「意趣返し」の例文は?

“意趣返し”の例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

・今回のA社の対応は、弊社への意趣返しとも受け取れる。

・彼の行動は意趣返しだったのかもしれない。

・いつか意趣返しをしたいと心の中で思って来た。

「意趣返し」を言い換えると?同義語や類語は?

「意趣返し」を言い換えると?同義語や類語は?

“意趣返し”の類似の意味を持つ言葉をご紹介します。

(1)「意趣晴らし」

“意趣晴らし”は、仕返しをして恨みを晴らすこと。“意趣返し”の同義語です。

【例文】

・ドラマの主人公が意趣晴らしをするシーンは痛快だった

(2)「リベンジ」

“復讐”の英語。ライトなニュアンスなので、日本語でも広く使われるようになっています。

【例文】

・先日のゴルフは楽しかったです。次回こそリベンジしますから。

(3)「報復」

“報復”は、仕返しをすること。国家間の措置についても使われています。

【例文】

・A課長の異動は、B部長による報復人事だと噂されている。

(4)「仕返し」

“仕返し”は、相手に同じようなことをやり返すこと。報復すること。日常会話でも使われる言葉です。

【例文】

・今回の措置に対して、B社は必ず仕返しをしてくるだろう。

(5)「一矢を報いる」

相手から受けた攻撃に対して完全な報復はできないけれど、ほんの少しだけ反撃をすること。

【例文】

・他社の追随を許さないA社に一矢を報いるべく、大規模なプロモーションを展開した。

(6)「雪辱を果たす」

スポーツなどで、前に負けた相手に勝利をおさめること。前回の悔しさを次の勝利で晴らすこと。

【例文】

・昨シーズンの雪辱を果たした

「意趣返し」の対義語は?

「意趣返し」の対義語は?

“意趣返し”と対の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「恩返し」

“恩返し”は、うけた恩に報いること。

【例文】

・これまで多大なサポートを頂いたので、せめてもの恩返しです。

(2)「報恩」(ほうおん)

“報恩”は、受けた恩に報いること。恩返し。

【例文】

・この業界で生き抜くには、報恩の心がけが大切だ。

(3)「借りを返す」

「借りを返す」の“借り”は、返していない恩や恨み。つまり、恩返しの意でも仕返しの意でも使う言葉です。

【例文】

・つらいときに寄り添ってくれた上司になんとかして借りを返したい

・ひどい仕打ちをうけたので、いつかこの借りを返してやりたい

 

以上、“意趣返し”の意味を国語講師の吉田裕子さんに解説していただきました。

意味を勘違いしやすい言葉なので、正しい意味を覚えておきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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