「歯に衣着せぬ」の意味とは?読み方は?
「歯に衣着せぬ」の意味とは?読み方は?「歯に衣着せぬ」の読み方は「はに きぬ きせぬ」。“衣”は“きぬ”と読みますので注意が必要です。
相手に遠慮したり、気を使いすぎることなく、思っていることをずけずけと言う様子を表す慣用句です。「歯に衣着せない」という言い方をすることもあります。
「歯に衣着せぬ」はどんな場面で使う?
「歯に衣着せぬ」はどんな場面で使う?ビジネスシーンにおいて「歯に衣着せぬ」は、第三者の率直な物言いを評する際に使われることの多い言葉です。
思っていることを包み隠さず言うさまを表す言葉であり、ほめ言葉として用いられることもあります。
とはいえ、実際の仕事の現場では思ったことを包み隠さずに伝えることでしばしば配慮に欠けた印象を与えることもあります。周囲をひやひやさせるほど、本音をずけずけと言う人の様子を「歯に衣着せぬ」と形容することもあるでしょう。
「歯に衣着せぬ」を使うときの3つの注意点
「歯に衣着せぬ」を使うときの3つの注意点「歯に衣着せぬ」の注意点は以下の2つです。
(1)「衣」の読み方・漢字変換に注意
「歯に衣着せぬ」を「歯に絹着せぬ」と間違ってつづるケースが散見されます。また、先述したように“衣”を“きぬ”と読みますのでご注意ください。
(2)ほめ言葉として使うときには注意
目の前にいる相手の率直な発言をほめるために「歯に衣着せぬ」を使うときには注意が必要です。
例えば、率直な意見を述べる相手に対して「さきほどは歯に衣着せぬ発言でしたね」と伝えた場合、相手はほめ言葉と受けとらずに、遠慮のない言動に対する皮肉だと解釈する可能性もあります。
前向きな意味で使うときには「率直なご意見をどうもありがとうございました」「はっきり言ってくださって感謝しております」など、わかりやすい表現を使ったほうがいいかもしれません。
【要注意例文】
・〇〇さんの歯に衣着せぬ発言で、参加者がびっくりしていましたよ。
→前向きな意味で言っているのか、婉曲的に皮肉を言っているのか、意図が伝わりにくい。良い意味で使う場合には「率直な意見をいただき、参加者にとって良い刺激になりました」などと言い換えたほうがよい。
(3)自分の言動については使わない
「歯に衣着せぬ」は、自分のことについて言うことほとんどありません。踏み込んだ質問をする際にも「歯に衣着せぬ言い方をしますが」とは言いませんのでご注意を。
【NG例文】
・歯に衣着せぬことをうかがいますが、あなたは転職を希望していますか?
→自分の言動に対しては使わない。この場合は「不躾なことをうかがいますが」など。
「歯に衣着せぬ」の例文は?
「歯に衣着せぬ」の例文は?「歯に衣着せぬ」の例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。
・課長の歯に衣着せぬ発言は痛快だった。
・彼の歯に衣着せぬ正論は頼りになるが、しばしば肝を冷やすこともある。
・彼女は、歯に衣着せぬコメントのおかげで瞬く間に人気になった。
「歯に衣着せぬ」を言い換えると?類語は?
「歯に衣着せぬ」を言い換えると?類語は?続いて「歯に衣着せぬ」の言い換え表現をご紹介します。
(1)「忌憚ない(きたんない)、忌憚のない」
遠慮のないこと。相手に率直に意見を言ってもらいたいとき、正直な声を聞きたいときに使われています。
【例文】
・忌憚のないご意見をいただけますようお願いします。
(2)「舌鋒鋭い(ぜっぽうするどい)」
議論、弁舌などが鋭いこと。相手を言論で打ち負かすような強さを連想させる言葉です。
【例文】
・彼女は、舌鋒鋭く経営陣の批判をした。
(3)「率直」
隠したりせずにありのままなこと。正直に伝える際の前置きとして使うこともあります。
【例文】
・率直に言いますが、私は彼女の意見に納得していません。
(4)「単刀直入」
前置きなどを抜きにして、問題の要点を述べること。
【例文】
・単刀直入に申し上げますが、今回は値上げの相談に参りました。
「歯に衣着せぬ」の対義語は?
「歯に衣着せぬ」の対義語は?「歯に衣着せぬ」の対の意味を含む表現をご紹介します。
(1)「奥歯にものが挟まったよう」
物事をはっきり言わないこと。
【例文】
・奥歯に物が挟まったような言い方をやめて、率直な意見を聞かせてください。
(2)「オブラートに包む」
“オブラート”とは薄い膜状のもの。相手を刺激するような強い表現を避けて、遠回しな言い方をすることを「オブラートに包んだ言い方」などと言います。
【例文】
・先方はオブラートに包んだ言い方をしていたが、かなり不満がたまっているようだ。
(3)「持って回った(もってまわった)」
必要以上に遠回しな言い方をすること。
【例文】
・持って回った言い方をしたので、意図が正しく伝わらなかった。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに「歯に衣着せぬ」の意味や使い方について解説していただきました。
対義語でお届けした「奥歯にものが挟まったよう」と混同して「奥歯に衣着せぬ」などと間違う例も見られますので、正しく使えるようにセットで覚えておくといいですね。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。