「俯瞰」の意味は?
null“俯瞰”の読み方は“ふかん”。“高いところから見下ろすこと”の意味です。会話の中では”一歩引いて客観的に見る”“全体を見渡す”“長期的な視点で見る”などの意味で使われています。
ビジネスシーンでは「俯瞰」はどんなときに使うといい?
nullビジネスシーンにおいては、当事者として現場で日々実行に励んでいる者の視点ではなく、一歩引いた客観的な視点を“俯瞰”と呼ぶことがあります。
例えば、プロジェクトに関わる人の動きや一連の流れ、タイムスケジュールについて、高いところから全体を見渡すようなイメージを持って“俯瞰する”という言葉を使います。
また、写真やデザインなどの分野では上から対象を見下ろしたような構図を“俯瞰図”“俯瞰撮影”という言葉で表すことがあります。
「俯瞰」の使い方の注意点は?
null“俯瞰”の使い方の注意点は以下の2つです。
(1)「俯瞰して見る」は二重表現?
“俯瞰”という熟語を分解すると、“俯”はうつむく、“瞰”は見下ろすの意。
単語の意味は“高いところから見下ろす”なので、“俯瞰で見る”“俯瞰して見る”などの表現は文法的には二重表現となります。
とはいえ、こうした表現は既に広く使われているので、それほど違和感がない人も多いかもしれません。
(2)漢字表記には注意
“俯瞰”は常用漢字ではありませんので、
「俯瞰」の例文は?
null“俯瞰”を使った例文をご紹介します。
・プロジェクトを俯瞰し、問題点を洗い出してください。
・彼は、組織の動きを俯瞰することができる貴重な人材です。
・人生を俯瞰することも重要です。
・世の中の流れを俯瞰的に捉えることが大切だ。
「俯瞰」の類義語や言い換え表現は?
null続いて、“俯瞰”の類語や言い換え表現をご紹介します。
(1)「鳥瞰」
“鳥瞰”の読み方は“ちょうかん”。高いところから鳥が見下ろすように全体を眺め渡すこと。“俯瞰”の類語です。
【例文】
・全体を鳥瞰で見渡すことが大切だ。
(2)「展望」
遠くの景色やプロジェクトの経過、社会の動きなどを広く見渡すこと。将来を語るときにも使われる言葉です。
【例文】
・来年度の業界の展望は不透明な状況です。
(3)「大局」
細かい有利・不利にとらわれず、物事の全体をみたときの状況。囲碁・将棋などでは“盤面を全体から見たときの情勢”という意味で使われています。
【例文】
・大局的にみて、ここはA社に譲歩したほうがいいかもしれませんね。
「俯瞰」の対義語は?
null“俯瞰”の対義語(対の意味を持つ言葉)には、以下のようなものがあります。
(1)「近視眼的」
近いところ、狭いところに気を取られ、視野が狭くなっていること。
【例文】
・近視眼的な施策だけでなく、大局的な施策も必要だ。
(2)「目先にとらわれる」
目の前の利益やメリットなどに気を取られて長期的な視野に欠けた状態のこと。
【例文】
・目先にとらわれずに、もう一度当初のコンセプトを思い出そう。
(3)「虫の目」(虫の目・鳥の目・魚の目)
近年、ビジネス書などによく登場する言葉です。細部を大切にする “虫の目”、全体を見渡す“鳥の目”、時代の流れを見る“魚の目”。いずれの視点も大切だと言われています。
【例文】
・皆さんには、虫の目・鳥の目・魚の目を大切にして欲しいと思います。
(4)「木を見て森を見ず」
細かい点に注意しすぎて、全体を見ていないことの例え。
【例文】
・打ち出されたトラブル再発防止策は的外れで、木を見て森を見ずといったところだ。
(5)「仰視」
“俯瞰”は見下ろすこと。対して“仰視(ぎょうし)”は仰ぎ見ること。絵画やデザインの分野でも使われることがあります。「アオリ」
【例文】
・その絵画は、下から見上げたような仰視法で描かれている。
今回は国語講師の吉田裕子さんに“俯瞰”の意味や使い方を解説していただきました。
よく使われる言葉なので、使い方を覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。