「マイルストーン」の意味は?
nullまず最初に、国語辞典に掲載されている“マイルストーン”の意味をご紹介します。
『デジタル大辞泉』(小学館)
2 画期的な出来事。「近代医学のマイルストーンとなる発見」
3 システム開発やプロジェクト管理において、スケジュール上で特に重要な節目。成果物そのものを指すこともある。
ビジネス用語としてはどんな意味で使われている?
null英語の“milestone”には、街道に設置された目印の“マイル標石”という意味がありますが、“画期的なできごと”や“節目”という意味でも使われています。
日本のビジネスシーンにおいて、“マイルストーン”は、目的を達成するための区切りとなる段階や、途中の大切な節目、画期的なできごとを指して使われています。
過去をふりかえって、節目となるようなできごとを指して“マイルストーン”と呼ぶこともあります。
ビジネスシーンでは「マイルストーン」はどんなときに使う?
null“マイルストーン”は最終的な目標を達成するための区切りとなる段階を指します。
ビジネスシーンでは、取引先、社内メンバーとプロジェクトの進行について議論したり、確認したりするときに“マイルストーン”という言葉を使うことがあります。
例えば、商品開発が完了するまでのスケジュールをいくつかの工程に分け、それぞれの工程の締め切りを“マイルストーン”と呼ぶこともあるでしょう。
長期的な計画・戦略の最終目標ではなく、あくまでも途中の重要な節目を指しますから、その点は注意が必要です。
「マイルストーン」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方は?
null先述したように、マイルストーンは最終的な目標やゴールではなく、途中の大切な節目のこと。しかし、しばしば以下のような間違いが見受けられます。
【NG例文(1)】
・当社の最終的なマイルストーンは、この分野で世界のリーディングカンパニーとなることです。
→“マイルストーン”は最終目的の途中にある節目のこと。例文の場合は“目標”“ゴール”などに置き換える。
また、“マイルストーン”という言葉のイメージから、目印や象徴となる建造物を意味する“ランドマーク”と混同している例もあります。
【NG例文(2)】
・駅から弊社までのわかりやすいマイルストーンは、青い鉄塔です。
→目的地までの経路にある目印を指して“マイルストーン”とは言わない。この場合は“目印”と言ったほうがベター。
「マイルストーン」の例文は?
null“マイルストーン”を使った例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。
・本プロジェクトをスタートするにあたり、5つのマイルストーンを設定しました。
・現在は2番目のマイルストーンに到達しています。
・このプロジェクトのマイルストーンを把握しておいてください。
・今回の試作品の品質試験は、開発工程の重要なマイルストーンになると思います。
・マイルストーンを拾い上げて、事業の歩みをまとめる。
「マイルストーン」の関連語は?「ターニングポイント」との違いは?
null続いて“マイルストーン”と関連して使われている言葉をご紹介します。“マイルストーン”との意味の違いにも着目しながらチェックしてみましょう。
(1)「ターニングポイント」
“ターニングポイント”は、これまでの方向性が大きく変わる転換点や分岐点を指します。最終的な目標の途中の節目を指す“マイルストーン”とは異なり、より重大な転機を指して用います。
【例文】
・世界情勢の変化により、弊社の営業部門はターニングポイントを迎えている。
(2)「ロードマップ」
ビジネスシーンで使われる“ロードマップ”は、プロジェクトの全体的な工程を示したもの。計画全体を見渡せる“ロードマップ”の中に、いくつかのマイルストーンを設定する場合もあるでしょう。
【例文】
・このプロジェクトのロードマップにおいて、最も重要なのは2番目のマイルストーンだと思っています。
(3)「メルクマール」
ドイツ語の“merkmal”が語源。目標、指標、目印などの意味があります。
【例文】
・本企画のメルクマールを設定してください。
(4)「ベンチマーク」
もとは測量する際の基準点の意。日本のビジネスシーンでは、性能や品質の比較目標を意味して使われることがあります。コンピューターのソフトウェア・ハードウェア開発、製造現場、経営手法、株式など幅広い場面で使われており「このぐらいの水準に到達していたい」という価値判断の基準を指して用います。
【例文】
・トップシェアを誇るA社の商品の性能は、他社にとってのベンチマークとなっている。
今回は国語講師の吉田裕子さんに“マイルストーン”の意味や使い方について解説して頂きました。
プロジェクト管理の場面で使われることがある言葉ですから、使い方を覚えておきましょう。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。