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「ダイバーシティ」の意味をおさらい!「インクルージョン」との違いは?例文も解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#37】

“ダイバーシティ”という言葉はさまざまな場面で使われています。経営理念やビジネスモデルの言葉の中にも登場することが多い重要単語です。今回は“ダイバーシティ”の意味やビジネスシーンでの使い方、注意点について掘り下げていきます。

解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

辞書に載っている「ダイバーシティ」の意味は?

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まず最初に、国語辞典に掲載されている“ダイバーシティ”の意味をチェックしてみましょう。

<デジタル大辞泉>
《「ダイバシティー」とも》
1 多様性。相違点。

2 企業で、人種・国籍・性・年齢を問わずに人材を活用すること。こうすることで、ビジネス環境の変化に柔軟、迅速に対応できると考えられている。

3 携帯電話などで、複数のアンテナで電波を受信し、受信状況の良い方を使う技術。

ビジネス用語としてはどんな意味で使われている?

ビジネスシーンにおいては「2」の「企業で、人種・国籍・性・年齢を問わずに人材を活用すること」の意味でよく使われています。

“ダイバーシティ”とは、人種や国籍・性別にかかわらず、多様な人材が活躍できる仕組みを目指すというアメリカ発の考え方です。多様な人材を活用することで創造力を高め、変化に強い組織づくりを目指すための人事の方針の一つとなっています。

日本のビジネスシーンでは“女性活躍”という言葉とセットで使われることの多い言葉ですが、国籍・年齢・採用時期・性別・障害など、さまざまな背景を持つ人材を雇用し、活躍できる状態を目指すことを指します。

ビジネスシーンでは「ダイバーシティ」はどんなときに使う?

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ビジネスシーンにおいては、以下のような場面で使われています。

・組織(企業・公的機関)の取り組みや目標を社会に紹介するとき

・組織のイメージアップ戦略の一環として

・人事制度について言及するとき

例えば、企業のホームページやパンフレット、投資家向けのIR資料、CSRレポートなどの中に、「ダイバーシティの取り組み」という形で自社の取り組みが紹介されています。

また、多様な人材を活用する人事制度について言及するときには“ダイバーシティ推進”“ダイバーシティ経営”“ダイバーシティマネジメント”といった言葉を用います。

「ダイバーシティ」の使い方の注意点は?

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一部の企業では、“ダイバーシティ”が“さまざまなライフステージにいる女性社員の活躍”という、限られた意味で使われているケースも見受けられます。

日本では女性の管理職の比率が低いこと、結婚・出産によって働き方を変えざるを得ない女性が多くいることは事実です。しかし、“ダイバーシティ”と“女性社員の活躍”という言葉は同義ではありません。

先述した通り、性別だけでなく国籍・採用時期・障害の有無・個々の特化した能力などにかかわらず、多様な人材の活躍を推進することを指します。

「ダイバーシティ」の例文は?

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“ダイバーシティ”の例文を通じて、使い方をイメージしてみましょう。

ダイバーシティは現代社会において重要なテーマだ。

ダイバーシティを無視して企業のさらなる発展はない。

・社内のダイバーシティを実現するには、採用・昇進の複線化が欠かせない。

ダイバーシティの欠如は、当社の深刻な問題だと思われます。

「ダイバーシティ」の関連語は?

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続いて“ダイバーシティ”の関連語をご紹介します。

(1)「インクルージョン」

英語の“inclusion”(インクルージョン)は“包括”を意味する名詞。“inclusive”(インクルーシブ)は“包括的な”を意味する形容詞。教育現場において、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指す施策として“インクルーシブ教育”という言葉が使われていました。近年の日本のビジネスシーンにおいて“インクルージョン”は多様な境遇にある人を排除しないで包含していく、という意味で使われています。“ダイバーシティ”と並べて使われることも多い言葉です。

【例文】

・ダイバーシティとインクルージョンによって、強い組織づくりを目指したいと考えております。

(2)「多様性の尊重」

組織の理念や目標の中で“多様性の尊重”という言葉が使われることがあります。

【例文】

多様性を尊重しあえる組織づくりを目指しています。

(3)「クオータ制」

“クオータ制”とは、政治家の議席や企業の役員のうち、一定数を女性やマイノリティに割り当てることを法律などで定めること。ダイバーシティ推進のための政策の一環として、日本でもしばしば議論の対象となっています。

【例文】

クオータ制の導入によって政界のダイバーシティを推進している国は少なくない。

 

今回は“ダイバーシティ”という言葉の意味や使い方をご紹介しました。

“ダイバーシティ”を実現するための取り組みを積極的に発信している企業も見受けられます。今後のビジネス業界において、引き続き重要なキーワードとなる言葉なので、ぜひ覚えておきましょう。

 

取材・文/北川和子

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吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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