「拝借」の意味とは?
null“拝借”とは、“借りる”の謙譲語です。“拝”は”おがむ”という字ですから相手への敬意を含み、動詞の前につくと自分の動作をへりくだって言う語になります。
「拝+動詞」の言葉は他にも“拝見”“拝読”“拝啓”といったものがありますね。
「拝借」はどんなときに使うといい?
null“拝借”は、目上の相手や取引先の相手に対して使う言葉です。話し言葉でも使われることがありますが、文語調ですので、主に書き言葉で使われています。
ビジネスシーンにおいては、物の貸し借りだけでなく、相手に相談を持ち掛けるときに“お知恵を拝借”などという表現を使って提案を求めたりすることもあります。
【慣用句的に使われている「拝借」】
・(話を聞いて欲しいとき)お耳を拝借する
・(相談のとき)お知恵を拝借する
・(一本締めの前に)お手を拝借する
会合の締めに掛け声に合わせて手を叩く“一本締め”“三本締め”の際の“お手を拝借”という表現はよく聞かれますよね。
プライベートで「拝借」を使う場面は?
null“借りる”の謙譲表現には、“拝借”の他に”お借りする”いう言い方もあります。“お借りする”という言葉のほうが平易で伝わりやすいので、日常会話においては“お借りする”のほうがよく使われています。
プライベートにおいては、手締め以外で“拝借”
「拝借」の例文は?
nullそれでは、“拝借”の例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。
・本企画について、お知恵を拝借できますと幸いです。
・拝借しました書類の返却についてご連絡いたします。
・(一本締めなどのとき)お手を拝借いたします。皆さまご起立ください。
・皆さん、作業をしたままでいいのでお耳を拝借できますか?
「拝借」の使い方の注意点は?目上の人にも使える?
null“お知恵を拝借”“お手を拝借”が慣用句的に使われていますが、以下のような言い方は違和感を与える可能性があるので、避けたほうがいいでしょう。
【「拝借」NG使用例】
・(名前を聞くときに)お名前を拝借してもよろしいでしょうか。
→“名前を拝借”とは言わない。この場合は「お名前をうかがってもよろしいでしょうか」など。
・(話す時間が欲しいとき)お時間を拝借してもよろしいでしょうか。
→時間は借りても返すことができないため、”時間を拝借”という表現に対して違和感を覚える人もいるかもしれません。この場合は「お時間を頂戴してもよろしいでしょうか」がベター。
また“拝借”は一語で謙譲表現として成立していますので、“ご拝借する””拝借申し上げる”
「拝借」を言い換えると?
null続いて“拝借”の言い換え表現をご紹介します。
(1)「お借りする」
“お借りする”は、“借りる”の謙譲表現。“拝借”よりも平易な表現なので、書き言葉、話し言葉、いずれの場合でも高い頻度で使われています。ちょっとした物の貸し借りでも使うことができます。
【例文】
・お知恵をお借りしたく存じます。
・ボールペンをお借りしてもよろしいですか?
(2)「貸していただく」
“貸してもらう”の謙譲表現です。相手の物を借りるとき、相手の協力を仰ぐときに使われています。
【例文】
・おもしろい本を貸していただき、ありがとうございました。
・ぜひ〇〇様の力を貸して頂けないでしょうか。
(3)「お預かりする」
【例文】
・利用カードをお預かりしてもよろしいでしょうか。
以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“拝借”の使い方について解説して頂きました。
“お借りする”とセットでぜひ意味や使い方を覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。