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「コンプライアンス」の意味は?「法令遵守」と何が違う?例文も解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#36】

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2000年代に入ってから日本のビジネスシーンに定着した“コンプライアンス”という言葉。近年は、国語辞典・英和辞典に掲載されている本来の意味とは少し異なるニュアンスも含み始めています。

国語講師の吉田裕子先生によるビジネス語の解説をお届けしている本連載。今回からビジネスシーンで頻出するカタカナ語・外来語の意味を紹介していきます。

今回は“コンプライアンス”の意味や使い方、注意点、混同しやすい言葉について解説して頂きました。

「コンプライアンス」の本来の意味とは?

まず最初に国語辞典に掲載されている“コンプライアンス”の意味をチェックしてみましょう。

<デジタル大辞泉>
1 要求や命令への服従。
㋐ 法令遵守。特に、企業がルールに従って公正・公平に業務を遂行すること。 ㋑ 服薬遵守。処方された薬を指示どおりに服用すること。
2 外力が加えられたときの物質の弾力性やたわみ強度。

『日本大百科全書』(小学館)を参照すると、“コンプライアンス”が企業文化に根づいた経緯も分かります。

<日本大百科全書>
広義には、民間企業、非営利組織、行政組織などが消費者、従業員・職員、取引先、株主などの利害関係者の要請に機動的に対応することを意味するが、日本では法律や規則に従う法令遵守の意味で使われている。国民の生命や安心・安全、利益を損なう不祥事が相次いだため、近年、コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになった。

ビジネスシーンではどんな意味で使う?

コンプライアンスを“法令遵守”(ほうれいじゅんしゅ)と理解している人は多いと思います。

しかし、日本のビジネスシーンにおいては、法律に従うのみならず「企業内のルールや世の中の常識・良識に従う」という意味合いも強くなっています。

近年では、社員の働き方、男女の待遇、クレーム対応、SNSの使用法など、幅広い場面で企業倫理や社会の風潮に鑑(かんが)みて、“コンプライアンス”という言葉が使われるようになっています。

中には“コンプラ”などと略して言う人も見受けられます。

ビジネスシーンで「コンプライアンス」はどんなときに使う?

“コンプライアンス”はビジネスシーンにおいては、以下のような場面で使われています。一部の例をご紹介します。

(1)広報・PR

ウェブサイトや投資家向け資料などで、企業理念の中に使われています。

【例文】

・当社はコンプライアンス経営を徹底しています。

(2)報告・告発

組織内外で法令に違反したケースを指摘・報告する際に用います。

【例文】

・先日、取引先のA社で重大なコンプライアンス違反が報告されました。

(3)社会的に適切かどうか議論・指摘するとき

ある事柄が社会的に見て適切かどうかを議論をしたり、注意喚起をしたりするときに使われます。

【例文】

・この表現は昨今のコンプライアンスを配慮して、修正した方がいいと思います。

(4)社員向けの研修

多くの企業では、機密情報・個人情報の取り扱い方法や炎上・ハラスメントを未然に防ぐ対策などを学ぶ“コンプライアンス教育”の機会が増加しています。

【例文】

・来週、管理職向けのコンプライアンス研修を実施します。ふるってご参加ください。

「コンプライアンス」の使い方の注意点は?

“コンプライアンス”という言葉が浸透した背景には、企業を取り巻く環境の著しい変化があります。そのため、“コンプライアンス”という言葉に対して抱くイメージが業界や企業文化によって異なる傾向があります。

例えば、“コンプライアンス”という言葉の下に過剰なルールを設ける組織もあり、コンプライアンスを拡大解釈しているケースがあることは否めません。

一方で、昔は許されていたことが“コンプライアンス“を理由に禁止されたことを揶揄するような意見(「コンプラのせいで何もできないよ」など)も見受けられます。しかし、コンプライアンスの意味を踏まえると、現代の組織運営において本来は重要な価値観の1つであることを忘れないでおきたいものです。

「コンプライアンス」の例文は?

コンプライアンスの例文を通じて、使い方をイメージしてみましょう。

・弊社はコンプライアンスを重視しています。

・全社員に向けたコンプライアンス教育を行っています。

コンプライアンスチェックは重要である。

コンプライアンス違反は往々にして見られる。

・取引先のコンプライアンス体制をチェックすることも大切な仕事だ。

「コンプライアンス」の関連語は?

“コンプライアンス”と関連して使われている言葉をご紹介します。中にはコンプライアンスと混同して使われている用語もあるのでチェックしておきましょう。

(1)「法令遵守(ほうれいじゅんしゅ)」

“法令”(法律・決まりごと)に従い、守ること。“遵守”は“順守”と表記することもあります。

広い意味を持つ“コンプライアンス”と比べて、法令に特化した言葉です。

【例文】

・当社では、法令遵守を徹底しています。

(2)「ガバナンス」

管理・統制のこと。ビジネスシーンにおいては、会社内の管理体制について言及するときに使う言葉です。

【例文】

・コンプライアンスを徹底するためにも社内のガバナンスが欠かせない。

(3)「ポリティカルコレクトネス(PC)」

直訳すると“政治的な正しさ”のこと。昨今では、人種・性別・性的指向・宗教・障害などに対する配慮と寛容さを示す考え方として使われています。広告やSNSなど、企業からの情報発信の際には、差別や偏見につながる表現やイメージを用いないことが重要となっています。

【例文】

・今日の企業CMは、ポリティカルコレクトネスに配慮する必要があります。

 

以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“コンプライアンス”の意味や使い方について解説して頂きました。

“法令遵守”と訳されることの多い“コンプライアンス”という言葉が、ビジネスシーンにおいて幅広い意味を持ち始めていることがおわかり頂けたのではないでしょうか。これからの組織運営には切り離せない概念ですので、意味を覚えておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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