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「繁忙期」の意味と使い方は?間違いやすい点を解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#58】

忙しい時期を“繁忙期”と呼ぶことがありますよね。間違った使い方も見受けられますので、正しい意味や使い方の注意点を知っておきましょう。

“繁忙期”について解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「繁忙期」の意味とは?

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“繁忙期”は、1年の中で業界や会社が特に忙しくなる時期のこと。1日や2日のことではなく、特に多忙となる一定の期間のことを指して使います。

「繁忙期」の注意点は?よくある間違った使い方

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繁忙期の使い方の注意点は以下の3つです。

(1)個人的に多忙な時期には使わない

“繁忙期”は個人的に忙しい時期ではなく、会社や業界が忙しい時期を指して使います。

(2)「一時的に忙しい一日」は「繁忙期」ではない

例えば、たまたま受注や来客が重なり忙しくなってしまった日のことを“繁忙期”とは呼びません。1年間の中である一定の期間、多忙になる時期のことを指して使います。

(3)「(御社の)繁忙期のところ失礼いたします」とは言わない

多忙な様子の取引先に何か依頼をする際には、「ご多用中恐れ入りますが」「お忙しいところ申し訳ありませんが……」などの表現を使うのが一般的です。

「繁忙期」はどんなときに使うといい?

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ビジネスシーンにおいては、以下のような場面で使われることがあります。

(1)スケジュールの調整をするとき

プロジェクトや製造など、何かのスケジュールを立てていくときに、例年予定がたてこむ時期を指して使います。

【例文】

・この時期は工場の繁忙期なので、少し余裕を持って計画を立てておきましょう。

(2)顧客に通常期と同様の価格・サービスが提供できないとき

注文が集中し、通常期と同様のサービス(納期・価格など)の提供が難しくなるとき、その理由として“繁忙期”という言葉を使うことがあります。

【例文】

繁忙期の場合は通常期の料金の500円増しとなりますので、ご了承ください。

「繁忙期」の例文は?

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“繁忙期”の例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

繁忙期を乗り切るために、前倒しで作業を進めましょう。

・まもなく弊社も繁忙期を迎えるため、ご協力をお願いします。

繁忙期を避けて休暇を取ることが推奨されています。

「繁忙期」を言い換えると?類語は?

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“繁忙期”の類語や言い換え表現をご紹介します。

(1)「書き入れ時」

“書き入れ時”は“かきいれどき”と読みます。「帳簿の記入に忙しい」という意味から、営業で最も利益のあがる時期を指します。小売り・飲食など接客販売系の仕事で使われることが多い言葉です。

【例文】

・例年なら書き入れ時だったが、緊急事態宣言の影響で客入が激減した。

(2)「稼ぎ時(かせぎどき)」

“稼ぎ時”は、自分たちがお金を多く得ることができる時期。“繁忙期”や“書き入れ時”は顧客に向けても使いますが、“稼ぎ時”は顧客に向けて使うことはありません。社員やスタッフなど、内輪向けの言葉です。

【例文】

・(社員・スタッフに向けて)今が稼ぎ時ですから、力を合わせて乗り切りましょう。

(3)「たてこんで(立て込んで)いる」

多くの用事が一時に重なること。個人的に忙しいとき、また、部署等が一時的に忙しい状態のときにも使うことができます。

【例文】

・申し訳ありませんが、急な案件がたてこんでおりますので、明日ご連絡致します。

(4)「目がまわる忙しさ」

きわめて忙しいことをいう慣用句。雑談や日常会話の中で使うことがあります。

【例文】

・プロジェクトの準備で目がまわる忙しさですよ。

「繁忙期」の対義語は?

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“繁忙期”の対義語(反対の意味を持つ言葉)は、以下のようなものがあります。

(1)「閑散期」

ビジネスシーンでは、売買・取引・客入りが少ない時期のことを指して使います。農業に限った言葉では“農閑期”(のうかんき)という言葉もあります。

【例文】

・まもなく業界は閑散期を迎えます。

(2)「二八(にっぱち)」

一部の業界では、2月・8月は商取引が振るわない月だと言われています。季節的にも冬物・夏物などの季節商品の購入がいったん落ち着き、売り上げが落ちる傾向があります。そのような時期を指し、俗語的表現で“二八“(にっぱち)と表現することがあります。

【例文】

二八に備えて、書き入れ時に売り上げを伸ばしておきたい。

(3)「閑古鳥が鳴く」

商売などが流行らないさまを指して、慣用句的に「閑古鳥が鳴く」という表現を使います。

【例文】

・普段は混雑している行楽地に閑古鳥が鳴いている。

 

以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに“繁忙期”の意味や使い方を解説して頂きました。

業界によって多忙な時期は異なります。社内外でよく使われる言葉なので意味や使い方を覚えておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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