「よしなに」の意味とは?
null“よしなに”は、“よいように”“よい具合になるように”“よろしく”という意味を持つ副詞。古くから使われており、古風で上品な響きがある大和言葉です。
辞書によっては、「良しなに」と表記されている場合もありますが、現代日本語ではひらがな表記が一般的です。
「よしなに」はビジネスシーンではどんなときに使う?
nullビジネスシーンにおいて、“よしなに”の使用頻度はそれほど高くありませんが、以下のような使い方をするのが一般的です。
(1)お願いをするとき
相手に望ましい行動をお願いするときに使われることがあります。細かく語らず相手に察してもらい、
【例文】
・統括部長の大切な顧客なので、よしなに取り計らってください。
・これからもよしなにお願いします。
(2)手紙やメールの締めのあいさつ
“よしなに”は手紙やメールの文末でも見られる言葉です。文末の「何卒よろしくお願いします」という定番の挨拶の言葉の代わりに、文末に余韻が残る「何卒よしなに」「これからもよしなに」などの表現を用いることがあります。
【例文】
・(メールや手紙の締めに)何卒よしなに。
私生活ではどんな場面で使う?
私生活においても、手紙やメールの文末で「どうぞよしなに」などの一言を使うことがあります。
「よしなに」の使い方の注意点は?よくある間違った使い方は?
null“よしなに”の使い方の注意点は2つあります。
(1)組織から出す公式の文書ではほとんど使われていない
“よしなに”は“よろしく”と同様の意味を持っていますが、組織から発行する不特定多数に向けた公式の文章の中で使うことはほとんどありません。
【例文】
・来月は新商品の発表を予定しておりますので、どうぞよしなに。
→個人でなく組織から出す文章、また、
(2)「よしなに」と「よしない」の混同に注意
“よしなに”と“よしない”は字面が似ていますが、まったく意味の異なる言葉です。“よしない(由無い)”は、“そうする根拠がない”“つまらない”などの意味がある言葉です。混同しないように注意が必要です。
「よしなに」の例文は?
null例文を通じて、使い方をイメージしてみましょう。
・部長にはよしなにお伝えください。
・どうぞよしなにお付き合いください。
・よしなにお取り計らいくださいませ。
・これからも、よしなに。
「よしなに」を言い換えると?類語は?
null続いて“よしなに”の言い換え表現をチェックしてみましょう。
(1)「適宜」
“適宜”は、その場合・状況に合っていること。相手にその場の状況に合った対応を望むときに使います。
【例文】
・細かいところは適宜ご判断ください。
(2)「適切に」
その場の状況や目的にあてはまる言葉・行動・方法を指して使います。
【例文】
・適切に対処してください。
(3)「しかるべく」
“ふさわしい”“適切”という意味。その場に適した対応や言動を相手に察してもらうという点は“よしなに”と共通しています。
【例文】
・しかるべき立場の人物とお話したいと思います。
・しかるべき服装をしてきてください。
(4)「あんじょう」
関西地方で使われることがある言葉。“味よく”から転じた言葉で“よしなに”と同様の意味で使われています。
【例文】
・あんじょう頼みますね。(「よきように対応して」の意)
今回は“よしなに”の意味や使い方について、国語講師の吉田裕子さんにうかがいました。
ビジネスシーンにおいては“よろしく”という言葉のほうがポピュラーですが、意味や使い方を覚えていくと役立つのではないでしょうか。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。