「顛末」の意味は?
null“顛末”の読み方は“てんまつ”。意味はことの初めから終わりまでの事情です。
“顛”は、いただき(頂)、末は“終わり”を意味しており、ある物事が起こってから終了するまでのいきさつを説明する際に使われています。
パソコンやスマートフォンで漢字を変換すると、“顛末”と“顚末”の2種類が出てくると思いますが、常用漢字の“顛末”を使うのが一般的です。
ビジネスシーンでは「顛末」はどんなときに使う?
null“顛末”は日常的に使われる言葉ではありません。使う機会がやってくるのは、自分が関わった案件で何か問題やトラブルが発生したとき。
ことの経緯を顧客や上司などに報告する際、メールや文章の中で“顛末”と言う言葉を使って説明をすることがあります。
やや硬い言葉なので、話し言葉よりも書き言葉で使われることの多い言葉です。
「顛末書」と「始末書」の違いは?
ミスやトラブル、不祥事などが生じた際に、“顛末書”や“始末書”の提出を要する場合もあります。
職場ごとに運用のルールは異なりますが、それぞれの書類は概ね以下のような目的で作成されます。
始末書・・・何か不祥事やトラブルが起きたときに、過失のある当事者が事実の一部始終を書き記して上司などに提出する文書。謝罪や反省の言葉を含む。
顛末書・・・クレームや問題など、何か問題が起きたとき、その経緯や一部始終を書き記して上司などに報告するための文書。
顛末書はあくまで事のいきさつを報告する目的であるのに対し、
私生活でも「顛末」という言葉を使う?
私生活では“顛末”という言葉を使う機会はあまりないと思いますが、何かトラブルが起きたとき、その経緯を文章で説明するときなどに使うことがあるかもしれません。
「顛末」の使い方の注意点は?よくある間違い例は?
null“顛末”の使い方の注意点は、以下の3つです。
(1)途中経過の報告には使わない
“顛末”は物事の最初から最後までのいきさつのことですので、途中経過を報告する際には用いません。
【NG例文】
・今起こっているトラブルの現時点までの顛末をご報告しますね。
→“顛末”は、物事が始まってから終わるまでのこと。問題発生中には使わない。例文の場合には“経過”などに置き換える。
(2)「良いこと」の報告には適していない
ビジネスシーンにおいては、既に起こってしまったネガティブな物事について説明する際に使うのが一般的です。以下のような使い方に対しては、違和感を覚える方もいるかもしれません。
【例文】
・今回の契約成立に至るまでの顛末を説明してください。
→ビジネスシーンでは、良いニュースの報告時に“顛末”という言葉を使うことはあまりない。“経緯”などに置き換えたほうが真意が伝わりやすい。
(3)「結末」と「顛末」を混同
字面が似ているために、“結末”と“顛末”を混同している人も見受けられます。“結末”は、物事のしめくくりのことを指します。最初から終わりまでのいきさつを意味する“顛末”とは意味が異なります。
【例文】
・今回は、思いがけない顛末となりましたね。
→“結末”の意で使っているのなら、間違い。
「顛末」の例文は?
null“顛末”を使った例文をご紹介します。
・ことの顛末をお聞かせください。
・今回のCMの企画から炎上までの顛末をこちらの資料にまとめました。
・顛末書を提出しなければならなくなった。
・クレームの顛末を詳しく報告してください。
「顛末」の言い換え表現は?類語は?
null続いて“顛末”の言い換え表現や類語をご紹介します。
(1)「経緯」「いきさつ」
“経緯”は、物事の細かいいきさつのこと。その物事が現状に至った理由や原因なども含んだ表現です。“経緯(けいい)”と書いて“いきさつ”と読むこともあります。
【例文】
・トラブルになった経緯を説明いたします。
(2)「一部始終」
“顛末”の類義語です。“一部”という言葉から、一部の過程のことをイメージしがちですが、ことの初めから終わりまでのことを意味します。
【例文】
・私は、今回のトラブルの一部始終を見ていたわけではありません。
(3)「ことの次第」
現在の状況がもたらされた経過・事情を報告するときに使われる表現です。
【例文】
・ことの次第を報告いたしますね。
今回は国語講師の吉田裕子さんに“顛末”の意味や使い方を解説していただきました。
何か問題が起こったときに登場することの多い言葉です。もしものときにために覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。