「差し出がましい」の読み方や意味とは?
null“差し出がましい”の読み方は“さしでがましい”です。“出しゃばる”を意味する動詞“差し出る”に接尾語“がましい”がついた形容詞です。
本来の自分の立場や役割以上に出しゃばって関与しているように感じさせるさまを意味します。
「差し出がましい」はどんなシーンで使う?
null“差し出がましい”はビジネスシーンにおいて以下のような場面で使われています。
(1) 目上の相手に意見をするとき
自分より上の立場の相手に対して意見を述べるとき、本題に入る前のクッション言葉として使います。「差し出がましいことを申しますが……」などと一言添えることで、自分の立場をわきまえていることを示しながら、少々言いにくいことを控えめに伝えることができます。
【例文】
・ 差し出がましいことを申しますが、Aプランの方が適切かと存じます。
・ 差し出がましいお願いですが、引き続きご対応をお願いいたします。
(2)お詫び・反省の気持ちを示すとき
お客様や取引先への対応で何か失礼があったことをお詫びする際に、書き言葉・話し言葉で使うことがあります。自分の言動だけでなく、後輩や部下の出過ぎた言動をお詫びするときに使うこともあります。
【例文】
・立場もわきまえず、差し出がましいことを申しました。
・弊社の鈴木が差し出がましいことをしたようで、申し訳ありませんでした。
(3)目下の相手に対して注意をするとき
“差し出がましい”は、基本的には自分の言動を指して使う言葉です。しかし後輩・部下などの言動に対して注意・叱責をする際に使う場合もあります。強い言い方となるので、自分と同等の立場の相手や、目上の相手には下記の例文のような言い方をすることはありません。
【例文】
・差し出がましいことを言うのはやめなさい。
私生活ではどんなときに使う?
私生活においては、地域の役員活動などにおいて、自分の意見を伝えたり反論するときの“クッション言葉”として使うことがあるかもしれません。
また、お節介かもしれないことを承知しながら相手のプライベートに立ち入ったアドバイスをするとき、“差し出がましい”という言葉で前置きをすることもあるでしょう。
【例文】
・私が言うのは差し出がましいと思うんだけど、不満に思っていることがあるなら家族に正直に伝えた方がいいと思う。
「差し出がましい」と「おこがましい」の違いは?
null“差し出がましい”と“おこがましい”を混同している方は少なくないようです。実際、この2つの言葉の意味は類似しているのですが、その意味は微妙に異なります。
【差し出がましい】
本来の自分の立場や役割以上に出しゃばって関与しているように感じさせるさまを意味します。
【おこがましい】
元々は“ばかばかしい”“みっともない”という意味が主でしたが、そこから転じて「身の程知らずの態度を取るのはみっともない」という意味に。現代の日本語では、“分をわきまえていない”“でしゃばっている”という意味で使われています。出過ぎた態度を“みっともない”と形容するニュアンスが含まれます。
「差し出がましい」の使い方の注意点は?
null“差し出がましい”の読み方は“さしでがましい”です。まれに表記方法や読み方を間違えている方が見受けられますのでご注意ください。
ちなみに、標準語のアクセントは「さ/しでがまし\い」です。読み方にも注意が必要です。
「差し出がましい」を言い換えると?類語は?
null続いて、“差し出がましい”の類語と例文をご紹介します。
(1)「僭越」
“僭越”(せんえつ)は、自分の地位や立場をこえた失礼な態度、でしゃばった態度を表す言葉です。“差し出がましい”と同様に目上の相手に対して指摘や反論をするときにも使いますが、結婚式のスピーチ、会議など、あらたまった場面でも使われています。
【例文】
・僭越ながら、ひと言申し上げます。
・僭越ながら、本日の司会を務めます山田と申します。
(2)「出しゃばる」
“出しゃばる”は、自分に関係ないことにまで余計な口出しや手出しをすること。日常会話でよく使われている口語的な表現です。“出過ぎた”などの表現もあります。
【例文】
・Aさんの案件なのに出しゃばってしまい、申し訳ありませんでした。
・今回の送別会は、Aさんが主役だから、あまり出しゃばってはいけないよ。
(3)「厚かましい」
“厚かましい”は“ずうずうしい”の意。個人のパーソナリティや態度を示す言葉です。ビジネスシーンでは無理なお願いをするときなどに使うことがあります。第三者のずうずうしいふるまいを形容するときにも使います。
【例文】
・厚かましいお願いで恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
今回は“差し出がましい”の意味や使い方を国語講師の吉田裕子さんに解説して頂きました。
依頼や指摘をするときにしばしば使われる言葉ですので、使い方を覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。