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「リスクヘッジ」の意味は?「リスクマネジメント」との違いも解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#44】

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日本では金融用語として使われていた“リスクヘッジ”という言葉が、ビジネスシーンでも広く使われるようになっています。“リスクヘッジ”の最新の意味やビジネスシーンでの使い方、NG使用例を解説します。

解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「リスクヘッジ」の意味は?

まず最初に、国語辞典に掲載されている“リスクヘッジ”の意味をご紹介します。

『デジタル大辞泉』(小学館)

相場変動などによる損失の危険を回避すること。

続いて『日本大百科全書』(小学館)を参照すると、以下のように解説されています。

『日本大百科全書』(小学館)

広く一般に「危険を避けること」をさし、死亡、事故、失業など、不慮の事態に備えて保険に入ることもリスクヘッジの一種である。株式や外国為替{かわせ}商品などの資産運用分野では、分散投資してリスクを抑えることを意味する。

ビジネス用語としてはどんな意味で使われている?

まず、あらかじめ知っておきたいのは“リスクヘッジ”は名詞的に使われている和製英語です。英語には“risk hedge”という名詞はありません。

日本で“リスクヘッジ”という言葉が使われ始めたときには、「(投資や資産運用において)想定されるリスクを抑える」という意味で使われていました。しかし、現代では『日本大百科全書』にあるように広く“危険を避けること”を指して使われるようになっています。

昨今のビジネスシーンでは“あらかじめ想定されるリスクに対してそのダメージを防ぐ措置をとること”という意味で使われています。

「リスクヘッジ」と「リスクマネジメント」の違いは?

“リスクヘッジ”は今後発生する可能性があるリスクに備えるときの言葉です。対して“リスクマネジメント”は、企業活動で発生する各種リスクに対して、日常的に対策を打ち、実際にトラブルが発生しても適切な対応措置を迅速にとり、影響を最小限に抑えることを指します。

“リスクマネジメント”は、災害、為替取引、株式投資、新規事業、社内システムの保持など、幅広いリスクに対して使われています。

「リスクヘッジ」のNG使用例は?

“リスクヘッジ”と混同しやすい言葉が、“トラブル対応”や先に説明した“リスクマネジメント”です。

よくあるNG例は、以下の通り。

【NG例文(1)】「トラブル対応」と混同

・今日はA社で発生したリスクヘッジ対応に追われた。

実際に起こってしまったトラブルの対応のことは“リスクヘッジ”とは言わない。例文の場合は“トラブル対応”など。

【NG例文(2)】「リスクマネジメント」と混同

・昨今はリスクヘッジの専門部署を設ける中小企業が増加しています。

組織的な業務を指す場合には、より広義な“リスクマネジメント”を用いる。

ビジネスシーンでは「リスクヘッジ」はどんなときに使う?

ビジネスシーンにおいては、以下のような場面で“リスクヘッジ”が使われています。

【「リスクヘッジ」を使う場面の例】

・為替の変動リスクを避けるとき

・トラブルを避けるための措置をあらかじめとっておくとき

・失敗した場合の対処法を考えるとき

打ち合わせや議論の中で”リスクヘッジ”という言葉が登場します。

私生活ではどんなときに使う?

私生活でも株式や為替を扱う際の金融用語として“リスクヘッジ”という言葉を使うことがあります。また、近年では突然の失業や収入減少などの予期せぬ事態に備えて人生の選択肢や貯蓄額を増やしておくことを“リスクヘッジ”と呼ぶ専門家も見受けられます。

「リスクヘッジ」を使った例文は?

“リスクヘッジ”を使った文章を通じて使い方をイメージしてみましょう。

・為替の変動が大きいので、リスクヘッジのために為替予約をしておきましょう。

・万が一のためにリスクヘッジを行うべきだ。

リスクヘッジのために複数の案を用意しておいてください。

・スキルや人脈を磨いておくことも、失業に対してのリスクヘッジとなる。

リスクヘッジのために分散投資をおすすめしています。

「リスクヘッジ」の類語・関連語は?

続いて“リスクヘッジ”の関連語をご紹介します。“リスクヘッジ”との意味の違いに着目しながらチェックしてみましょう。

(1)「リスク回避」

リスクを避けること。この場合の“リスク”は市場リスク・価格変動リスク・為替リスクなどを指すほか、ビジネス用語では損害や信用喪失などにつながるリスクを指します。

【例文】

リスク回避を徹底するように気をつけましょう。

(2)「万一に備える」

万一は“めったにないことだが、ごくまれにあること”の意。好ましくない事態を予測して準備しておくことを意味します。

【例文】

万一に備えて、少し多めに発注しておきましょう。

(3)「保険をかける」

本来は災害・事故・病気などによる損害を補償するための制度を使うことを指します。日常会話では、比喩表現として好ましくない事態に備えて別の方法を用意しておくことを“保険をかける”などと言うことがあります。

【例文】

・(話し言葉の中で)A社の在庫を確保できなかった事態に備えて、B社にも保険をかけておきましょうか。

(4)「クライシスマネジメント」

“クライシス”は企業の存続に関わるような危機や決定的な難局のこと。経済上の危機や、国際的な緊急事態など、“リスク”と比べてより重大性の高い案件に用いられています。

【例文】

・新型コロナウイルスは、各国のクライシスマネジメントの問題点を浮き彫りにしている。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに“リスクヘッジ”の使い方を解説していただきました。

“リスクヘッジ”は日本のビジネス現場で少しずつ意味を変えながら広く使われている和製英語です。「相手がどのようなリスクを指して、どのような対策を意図しているのか」の判断が必要となる場面も想定しておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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