今回、メールでの挨拶の基本について解説頂いたのは、『働き方のセブンマナー』(講談社)、『新しいビジネスマナーの基本』(高橋書店)などの著書を持ち、ライフスタイリストとして多方面で活躍されている北條久美子さんです。
「ビジネスメール」の基本マナーをおさらい
null今は当たり前のように使われているビジネスメールですが、ビジネスシーンでの使用頻度が爆発的に増えたのは2000年代初頭から。この20年間に様々なマナーが定着してきました。
比較的歴史が浅いのでルールが不確定な部分もあり、会社や業界によっても独自のルールが見受けられます。
ただし、どんな業界であっても、メールは文章的にも視覚的にも読みやすく、用件をできるだけ簡潔に伝えることを目指すのが基本です。
文字がぎっしりと詰め込まれたメールや、要領を得ない長々とした文章は避けるようにしましょう。基本的に1つのメールに1つの用件を心がけます。
電話・FAX・メール・社内チャット・手紙それぞれの特性は?
null続いて、職場のコミュニケーションツールの特性をチェックしていきましょう。
電話・・・伝えたいことを即時に伝えられる。ただし、忙しい相手の時間に割りこんでしまうことがある。
FAX・・・主に業務的な書類や案内状送付のために使用。個人間のメッセージのやりとりのために使われることはほとんどない。
メール・・・連絡事項のほかに、画像やデータも添付できる。複数の相手に送ることができる。
社内チャット・・・1人の相手、またはグループ内で会話をするような感覚でメッセージのやりとりができる。画像やデータも共有できる。
手紙・・・自分の字でしたためた直筆の手紙を送ることで、お礼、感謝、謝罪などを伝えることができる。今のビジネスシーンではよほどかしこまった場面を除き、あまり使われなくなっている。
メールの件名の付け方やNG例は?
nullメールの件名はまず最初に受信者の目に触れる部分。「できるだけ簡潔に」がポイントです。
「請求書送付の件」「打ち合わせのお願い」「納品日のご連絡」というふうに、パッと見て相手が内容をある程度予想できるような件名をつけます。
そうすることで、受信者は後から該当のメールを探しやすくなるというメリットもあります。
また、件名で注意したいのが、お客様向けと社内向けとの使い分けをするという点。
例えば、社内であれば件名に【重要】【至急】といった言葉を使うことがありますが、お客様に向けてはこのような強い印象を与える言葉は極力避けます。
【NG件名例】
・【至急】確認お願いします(【至急】【要確認】などの強い言葉は使わない)
・「例の件、その後いかがでしょうか?」(あいまいな件名は避ける)
・「はじめまして」「こんにちは」(内容が予想できる件名に)
・「無題」
「いつもお世話になっております」に続く一言挨拶
nullメールの一文目の定型句と言えば「いつもお世話になっております」という一文。
いつもやり取りしている相手に向けたメールでは、「お世話になっております」の後に簡単な一言を加えることとであたたかみが生まれます。
また、文末に“その人らしさ”がにじむ一言を付け加えると、円滑なコミュニケーションに役立つこともあります。
【文例】
・(冒頭)いつもお世話になっております。梅雨が明けてから猛暑が続いていますが、お元気にしてらっしゃいますでしょうか?
・(文末)追伸:先日、〇〇さんがおすすめされていたコーヒーを飲んでみたら、とてもおいしかったです。
メールでの挨拶の注意点
null続いて、メールを使った挨拶の注意点です。いくつかの場面に分けて解説します。
(1)担当着任挨拶
取引先の担当者として挨拶する場合、一緒に仕事することができることをうれしく思っていることを素直に伝えます。
【例文】
・御社の業務に携わることができて、心よりうれしく思っております。
(2)初めての取引先にメールを送る
最初のメールは、自社名、部署、自分がどんな仕事をしているのかについて簡単に紹介します。個人宛に送付する場合には、連絡先をどのように知ったのかも付け加えましょう。
【例文】
・はじめまして。○○商事で化学品を取り扱う営業2課に所属しております△△と申します。
(3)異動の挨拶
異動の際には、担当の相手との思い出のエピソードや、お世話になった思い出を記すと、相手も温かい気持ちで送りだしてくれると思います。また、新任の相手の紹介もお忘れなく。よいところを紹介しておくと、スムーズな引継ぎにもつながります。
【例文】
・○○様と出かけた工場視察はとても学びの多い体験で、私にとって忘れられない思い出です。
後任は△△という者です。彼は豊富な商品知識を持っているので、御社のお役にたてるのではないかと思います。
(4)退職の挨拶
異動時と同様に、新しい担当者の紹介をします。
退職後もつながりたい相手であれば、プライベートのメールアドレスを記してもいいでしょう。
【例文】
・今後はこれまでとは少し異なる業種に携わる予定ですが、ご縁があってまたご一緒させていただく機会がございましたら、その際には、ぜひよろしくお願い申し上げます。
連絡先:○○.△△@com
(5)お礼
お礼をするときには、何に対してのお礼なのか明記します。
【例文】
・昨日はお忙しい中、打ち合わせの時間をいただきありがとうございました。
(6)新年の挨拶
年賀状を廃止する企業は増加傾向にあり、メールで年末年始の挨拶を送信する会社も見られます。日本では新年への思いが強いので、新しい年の抱負や相手の会社の成長を願う言葉を一言入れるといいでしょう。
【例文】
・御社にとって本年が素晴らしい年となりますことをお祈り申し上げます。
多様化するメッセージ交換
null冒頭に、メールの歴史は浅いとお伝えしましたが、メールを始めとしてメッセージ交換の手段は多様化しています。
例えば、業界によっては「メールで新しい契約書を送付したので、ご確認ください」という旨をチャット機能で伝えるという場面も珍しくありません。
「ビジネスマナーは環境に合わせて少しずつ変化していく」ということも心のどこかに置いておいて頂きたいと思います。
今回は、北條久美子さんにメールでの挨拶の基本についてうかがいました。
「メールには人柄が表れる」と北條さんはおっしゃっていました。件名のつけ方、文字のレイアウトの仕方、文章の綴り方など、1つ1つのプロセスに気を配り、コミュニケーションの潤滑油となるようなメールを作成していきたいものですね。
【取材協力】
北條 久美子
東京外国語大学を卒業し、ウェディング司会・研修講師を経て、2007年エイベックスグループホールディングス株式会社人事部にて教育担当に。2010年にキャリアカウンセラー・研修講師として独立。全国の企業や大学などで年間 約2,500人へビジネスマナーやコミュニケーション、キャリアの研修・セミナ―を行い、顧問として企業の人材育成や教育体系の構築にも携わる。現在はライフスタイリストとしてワーク(仕事)寄りだった人生を、生きること=ライフにシフト。睡眠マネジメントやマインドフルネスなどをワークに取り入れ、自分らしく、かつ生き方(ライフスタイル)を美しくすることを自らも目指し、それを広める場作りに力を入れる。著書に『ビジネスマナーの解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『働き方のセブンマナー』(講談社)ほか。