1:実物の約100倍サイズも!大迫力の拡大模型
null会場入り口で迎えてくれるのは、実物のおよそ100倍のサイズに拡大されたイラガの幼虫。外敵から身を守るため、内部に毒液を含んだ棘を全身に張り巡らせた姿を、まじまじと観察することができます。
このような拡大模型は本展の目玉で、オオスズメバチは約40倍、ハブは約30倍、セイヨウイラクサは約70倍の大きさで登場。
そのほか、コモドオオトカゲやハブクラゲ、トラフグといった有毒動物のはく製や標本が多数展示され、毒の成分や作用などについて詳しく知ることができます。
カモノハシが、哺乳類のなかでは非常に珍しい有毒動物であることなど、ちょっと意外な事実に驚くかもしれません。
2:「毒キノコ」だけじゃない!自然界の多様な毒
null自然界に存在する毒は、動物だけでなく、植物、菌類、鉱物などじつに多様です。
本展のすごいところは、動物学、植物学、地学、人類学、理工学の各研究分野の9人のスペシャリストが監修し、各分野の毒を網羅した250点を超える総展示から、徹底的に掘り下げた“科博(カハク)”ならではの展示内容にあります。
「毒」と聞いて多くの人が連想する毒キノコも、ズラリ勢ぞろい。
様々な毒キノコと、それらが引き起こす痙攣、下痢、幻覚症状、細胞破壊などの中毒症状が一覧でき、身近な食用キノコとよく似た毒キノコの比較展示も。思わず身震いしてしまうかもしれません。
さらに、自然界には、人間がつくり出した毒も存在します。たとえば、ダイオキシンなどの残留性有機汚染物質(POPs)もそのひとつ。
自然界で分解されないマイクロプラスチックとして生物の体内に取り込まれ、結果、食物連鎖の上位に位置する人間を苦しめているという解説が、私たちに大きな問題を投げかけます。
3:攻める&守る役割で進化を促してきた毒の神秘
null生物が毒を持つおもな目的は、「攻めるため」と「身を守るため」。この役割を利用して、毒が進化の原動力にもなってきました。
たとえば、黄色と黒の縞、または斑点模様をまとうキオビヤドクガエルは、この「警告色」によって自分が有毒動物であることを周囲に伝え、“無用な争いを防いで”いるそうです。
また、自分では毒を作れない生物が、他の有毒生物を食べて体内に毒を蓄積する「盗用」の例もみられるそうです。
毒と結びついた生物の進化は、とても神秘的ですね。
4:私たち人間と切り離せない「毒」とどうつき合うか
null本展の終盤では、毒と私たち人間との関係がクローズアップされます。
古代には毒矢を用いて狩猟をし、毒ガスは処刑や暗殺に利用されてきました。また、しだいに進んでいった毒の研究により、薬を生み出すなど、私たち人間は毒を次々と利用してきたのです。
歴代の世界的な学者の功績や、日本人による毒の研究成果を展示するとともに、殺虫剤や忌避剤に利用される植物由来の毒性物質など、身近なところからも毒と人間のつき合い方をみることができます。
チョコレートやブドウ、タマネギなど、日ごろ、美味しく食べている食べ物も、特定の動物にとっては毒だと知っていましたか?
5:クイズに挑戦しながら会場をまわって楽しもう
null会場には、東大発の知識集団「QuizKnock(クイズノック)」によるクイズに答えながら展示が楽しめる仕掛けも用意されているので、全問正解を目指してみてはいかがでしょう?
この集団を率いる東大クイズ王・伊沢拓司さん(写真)は展覧会のオフィシャルサポーターも務め、内覧会ではオープニングトークに登壇。
「危ないのに惹かれてしまう“毒”のことを、楽しく、そして正しく知ることのできる展覧会です。毒を通して科学や生物の知識も深まるはず。ぜひ、その好奇心で学びへの扉を開いてください」とのメッセージが寄せられました。
そのほか、音声ガイドナビゲーターには声優の中村悠一さん、楽曲タイアップに「BiSH」、「秘密結社 鷹の爪」とのキャラクターコラボなど、多彩なクリエーターが本展とコラボしています。
展覧会グッズも見逃せない
null毒があってキュートな展覧会オリジナルグッズも見逃せません。
思わず抱き寄せたくなるフワフワの『ベニテングタケぬいぐるみ』(2,640円・税込/写真左)や、薄紫色の餡がちょっと毒々しい!? 『特別展「毒」焼印入まんじゅう』(6個入り/972円・税込/写真右)など、お土産にも喜ばれるグッズが。
有毒生物のイラストと解説文で“毒博士”になれる、「図鑑風下敷き」や「図鑑風クリアファイル」(各440円・税込)、何が出てくるかはお楽しみの有毒生物の特徴を細部まで再現した「カプセルトイ ピンバッチ(全7種)」(各500円・税込)などを手に取ってみてください。
“毒”という響きには、近寄りがたいものがありましたが、展示を観てみると、こんなにも自分の身の回りに毒が存在することに驚いてしまいました。
もはや私たちは、毒から逃げることはできず、“うまくつき合う”しか術がありません。そのヒントは、ぜひ会場で見つけてみてください。
毒を正しく知ることは自然界の神秘を知るとともに、現代社会に生きる私たちの生活の手助けにもなるはず。
そんなメッセージが込められた本展で、毒の世界にどっぷり浸ってみてはいかがでしょう?
【展覧会情報】
展覧会名:特別展「毒」
会期:開催中~2023年2月19日(日)
休館日:月曜日、12月28日(水)~1月1日(日・祝)、1月10日(火)
※ただし1月2日(月・休)、9日(月・祝)、2月13日(月)は開館
開館時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)
会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
入場料:一般・大学生2,000円、小・中・高校生600円、未就学児は無料
※ 日時指定予約が必要
※ 最新情報は公式HPでご確認ください
ライター、J.S.A.ワインエキスパート。札幌の編集プロダクションに勤務し、北海道の食・旅・人を取材。夫の転勤で上京後、フリーでライティングや書籍の編集補助に携わる。小学生のころから料理、生活、インテリアの本が好きで、少ない小遣いで「憧れに近づく」ために工夫し、大学では芸術学を専攻。等身大の衣食住をいかに美しく快適に楽しむか、ずっと大切にしてきたテーマを執筆に生かしたいです。小学生のひとり息子は鉄道と歴史の大ファン。