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土鍋で炊く「松茸ごはん」。だし不要で風味を味わう秋のごちそう【沼津りえの季節の手仕事#23】

季節の移ろいを感じながら、作る過程を楽しみたい「季節の手仕事」。旬の恵みを存分に味わう逸品を料理研究家・沼津りえさんが丁寧に解説します。

今回は、年に一度のお楽しみ! 「松茸ごはん」を土鍋で炊いてみませんか? 松茸の美味を存分に味わうべく、作り方はできるだけシンプルに仕上げました。いよいよ新米も出始めたので、秋の味覚をたっぷり堪能しましょう。

だしは使わず、松茸の風味と香りを最大限に引き出す

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松茸の旬は9〜10月。芳醇な香りが特徴で、秋の訪れと共に店頭に並び始めます。海外産は買いやすい一方、国産になると値は張りますが、味も香りも超一級。家庭で頻繁に調理するのは難しいですが、年に一度の贅沢だと思って、ぜひ挑戦を! なかでも、失敗なく作りやすい松茸ごはんはおすすめです。

「松茸って響きだけでテンションが上がりますよね。土瓶蒸しやそのまま焼いてもおいしいですが、今回は家族みんなで食べやすい松茸ごはんを作ります。私は松茸本来の風味を存分に活かしたいので、だしは一切入れません。かつおや昆布の風味は使わずに、松茸の旨味だけで炊き上げます。これが絶品なんですよ!」(以下「」内、沼津さん)

だしを入れない潔さは、素材の味を大切にする沼津さんならでは。シンプルゆえに、松茸のおいしさが際立ちます。早速、作り方を見てみましょう。

【おいしい松茸の選び方】

おいしく作るためには、松茸選びも重要なポイント。まず、選び方のコツを紹介します。

「うちの近所の八百屋さんでは、松茸には、“触るな! 嗅ぐな!”と書いてあるほど(笑)。そこで、見るだけでおいしい松茸を選抜する方法がこちら!」

⚫️かさが開ききっていない
かさが開いているものは収穫から時間が経ち、香りが抜けているものが多い。かさが閉じているものを選ぶと◎。

⚫️乾燥していない
収穫から時間が経っているものは、水分が抜けて、香りも落ちている(実際に持ってみると軽い!)。表面がパサパサしておらず、しっとりしたものを選んで。

【材料】(3〜4人分)

松茸・・・大2本(100g)

米・・・2合

水・・・400ml

塩・・・小さじ1/2

酒・・・大さじ1

みりん・・・大さじ1

しょうゆ・・・大さじ1

【作り方】

(1)松茸の汚れを落とす

「通常、きのこ類は水で洗いませんが、松茸に限っては土がついていることが多いので、私は最初に軽く水で洗います。濡れたペーパーで汚れを拭いてもよいのですが、表面の旨味まではがれてしまうので、さっと水洗いするのがおすすめです」

水を張ったボウルに松茸を入れ、表面の汚れだけを落とすイメージで優しく洗います。汚れが落ちたら、ペーパーで優しく包んで水気を拭いてください。

「水気が残っていると香りが逃げやすいのでしっかり水気を拭きましょう。ペーパーが茶色くなるのは松茸の色。汚れではないので、ペーパーが白くなるまで拭き続けなくて大丈夫ですよ」

(2)松茸を切る

石突きの硬い部分を、鉛筆を削るようなイメージで斜めに切り落とします。かさの一番上に軽く切り込みを入れ、手で半分に縦に裂いてください。さらに包丁で横半分に切り、下部分は手で裂きます。上部分は松茸の形を活かして、包丁で薄切りにします。

「手で裂くと味の染み込みが良くなり、香りも立ちやすくなるので、できるだけ手で裂いてみてください。松茸の形を活かしたいところは、包丁を使ってきれいに切ります」

(3)米を洗う

沼津さんの米の洗い方は、以下の4ステップ。さっと洗って、浸水せずにパパッと炊くのがポイントです。

(1)ボウルに米を入れ、水をたっぷり入れてさっと洗い、米が糠臭さを吸い込まないうちにすぐに水を流します。

(2)米が浸かるくらい水を入れ、20〜30回ほど手でぐるぐるとかき混ぜます。濁ってきたら水を足して、水を流します。

(3)水を入れ、2分ほど置いたら、ザルにあげます。

(4)ザルにあげて5分ほど置き、ポタポタと水滴が落ちなくなるまで、しっかり水気を切ります。

「米の粒が割れないよう、手早く優しく洗うのがおいしく炊き上げる秘訣。最近は精米技術がよくなったので、昔のようにゴシゴシ研ぐ必要はありません。さっと洗うだけでOKなんです。

洗い終わったら、炊く時の水分量に影響が出ないよう、ザルにあげてしっかり水気を切るのを忘れずに。ここで水気をしっかり切っておかないと、炊飯用の水を入れた際に水分が多くなり、ベチャッとした炊き上がりになってしまいます」

(4)土鍋で炊く

土鍋に洗った米と水を入れ、塩、酒、みりん、しょうゆを加えて混ぜ合わせます。その上に切った松茸をたっぷりのせて全体に広げ、ふたをして強火にかけます。

沸騰して、ふたの周りがふつふつしてきたら、弱火にして10分加熱します。10分経ったら火を止めて、10分蒸らしたら完成です。

「今回は松茸の風味や香りを活かすために、だしは使いません。かつおや昆布の香りを加えないほうが、シンプルに松茸本来の味を堪能できますよ。炊飯器でも同様に作れますが、塩分を入れてから長く置くと米が硬くなってしまうので、調味料を加えたらすぐに炊飯してくださいね」

(5)できあがり!

ふたを開けると、熱々の湯気と共に、松茸とごはんのいい香り! あ〜、幸せな瞬間。これぞ、日本の秋ですね。

口に運ぶと、松茸の香りがふわっと華やかに広がって至福のひととき……。確かにかつおや昆布の旨味を入れないことで、松茸特有のきのこの奥深い旨味がグッと引き立つのを感じます。さらに土鍋で炊いているので、ごはんの粒がふっくら立って、口の中でほろっとほどける。やっぱり土鍋で炊くごはんって絶品。これは新米の季節にぜひ試したい!

撮影で余った松茸を分けていただき(ありがたい!)、我が家は文化鍋で炊いてみたところ、まったく同じ方法で失敗なく上手に炊けました! 松茸を自分で調理することってあまりないのでドキドキしましたが、確かに土のような汚れがたくさんついていたので、さっと洗うことで手早く作業できるのを実感。

具材も調味料もシンプルだからこそ、作りやすいうえに、松茸の旨味をまとったごはんがしみじみとおいしく感じました。

季節の食材を旬の時季にいただくと、体も心も整う気がします。年に一度、今だけのお楽しみ。ぜひ松茸と新米がおいしい季節に、秋のごちそうをたっぷり満喫してください。

取材・文/岸綾香

沼津りえ
沼津りえ

料理研究家、管理栄養士、調理師。料理教室『cook会』主宰。バラエティー豊かなレッスン内容が好評で、東京・阿佐ヶ谷を中心に数多くの料理教室を開催。毎年、梅漬けの教室はリピーターが多く大人気に。手軽でシンプルなアイディア溢れるレシピに定評があり、雑誌などのメディアでも活躍。著書に『マンガでわかった! ラクしておいしい作りおき』(主婦の友社)、『からだとこころがととのう滋養菓子』(日東書院本社)など多数。HPはこちら。Instagram@rienumadu  YouTube  管理栄養士  沼津りえの「阿佐ヶ谷夫婦チャンネル」

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